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新約聖書に由来があることわざ・慣用句……目からウロコなど!

今回は、新約聖書に由来があることわざ・慣用句をご紹介いたします。「目から鱗(ウロコ)が落ちる」と言いますが、この言葉の由来は実は新約聖書だったと知っていますか? 日頃何気なく使っている言葉の由来。意外な言葉の語源をいくつか紹介しましょう。

藤本 正史

執筆者:藤本 正史

漢字検定ガイド

新約聖書に由来があることわざ・慣用句

新約聖書に由来があることわざ・慣用句

言葉の語源を調べてみよう!

今までの常識を覆すような事実や真相を知った時、「目から鱗(ウロコ)が落ちる」と言いますが、現実的に鱗が落ちるはずはありません。ではどうしてこのような表現を使うのでしょう。

この言葉は実は新約聖書から来ています。神の光によって視力を失ったサウロにイエスの使いが手をかざしたところ、目から鱗のようなものが落ちてきて視力を取り戻したという事から、あることがきっかけで急に理解できるようになるような状況を「目から鱗が落ちる」と言うようになったのです。

日頃、何気なく使っている言葉の意外な由来を知って、まさに「目からウロコ」ですよね。
こういった知識を得ることで、言葉や漢字への興味もアップし、延いては漢字力も身に付いていくのではないかと思います。
では早速、意外な言葉の由来を他にもご紹介します!
 
<目次>
 

新約聖書「マタイ福音書」の言葉から

上記の「目からウロコ」の他にも新約聖書に由来があることわざや慣用句があります。

【豚に真珠】
「真珠を豚に投げてはならない。それを足で踏みにじり、向き直ってあなた方に噛みついて くるだろう」
人間にとっては貴重な真珠も豚にはその価値は分からず、与えても何の役にも立たないことから、どんなに貴重なものでもその値打ちを知らない者には無意味である、という意味になった。

【狭き門】
「破滅への道は広く門も大きいが、天国への道は狭く門も小さい。しかし神の救いを受けるためには、力を尽くしてその狭い門から入らなければならない」
目的や理想の実現のためには困難である道を選ぶべきという教えから、入学試験や就職試験で競争が激しく突破することが難しいことのたとえとなった。
 

日本文化、生活、動植物などから由来する言葉

【ミーハー】
昭和初期の女性のあだ名の「みいちゃん」と「はあちゃん」の略とされる。当時の女性の名は「み」や「は」で始まるものが多かったことから、世の中の流行にされやすいこと、また、そのような人のことを言うようになった。

【段取り】
もとは歌舞伎の言葉で、筋の運びや組み立てのことを言った。「段」は物語の構成単位や話の一コマを数える言葉で、何段かの話を組んで一つの物語が出来上がる。そこから、事がうまく運ぶように手はずを整えることを段取りと言うようになった。

【几帳面】
もとは建築の言葉で、柱などの角の部分を削って丸みをつけ、両側に刻み目を入れる技法を言った。「几帳」とは、昔の貴人の家で室内の仕切りに使った調度のこと。主に几帳の柱に用いられたことから、細部まで気を配る意味となった。

【メリハリ】
もとは邦楽の用語で、音の抑揚や強弱の変化のことを言った。「減り張り」と書いてゆるめることと張ることを表す。「乙張り」とも書き、この言葉が一般化して物事の調子を表す意味で使われるようになった。

【目白押し】
「目白」はスズメ目メジロ科の鳥。メジロは木に止まるとき押し合うように並んで止まることから、たくさんの人が一箇所に集まって混み合ってる様子や、多くの物事が集中することを言うようになった。

【葛藤】
「葛」はカズラ、「藤」はフジで、どちらもつる性の植物。葛や藤のつるがもつれからみ合うように、物事が複雑にからみ合ったり、いざこざや争い、あるいは心の中の相反する欲求や感情で選択に迷う状態のことを言うようになった。
 

西洋の文化、故事などから由来する言葉

意外な言葉の由来とは

意外な言葉の由来とは

日本の慣用句や食物の言葉には、西洋の言葉や書物、地名に由来するものも多くあります。

【飴(あめ)と鞭(むち)】
1870年代にドイツの政治家ビスマルクが社会主義勢力を支配するために行った政策から。ビスマルクは社会主義者への弾圧(鞭)と、社会保険制度の導入(飴)を行い、政策を巧みに使い分けて民衆の反発をやわらげた。このことから、おだてたり脅したりして上手に人を動かすことのたとえとなった。

【一石二鳥】
17世紀のイギリスのことわざ「kill two birds with one stone」の訳。一度の手間で多くの利益を得るという意味で、四字熟語として使われることが多い。

【ジャガイモ(馬鈴薯)】
オランダ語で「ジャガタラ(インドネシアのジャカルタ)」のこと。16世紀の終わり頃にジャガタラから伝わったことから「ジャガタライモ」と言われた。この植物に漢名の「馬鈴薯」を当てたが、中国産の馬鈴薯は実は全く別の植物である。

【カボチャ(南瓜)】
ポルトガル語で「カンボジア」のこと。16世紀ごろにカンボジアから伝わったことから、「南蛮渡来の瓜」の意味で「南瓜」と書くようになった。

【天婦羅】
ポルトガル語で調味料の意味の「テンペロ」からと言われているが、スペイン語からきたいう説もある。

【ピーマン】
フランス語で唐辛子の意味の「ピーマン・ドゥー」から。明治初期にアメリカから伝えられた。
ちなみにピーマンは漢字で「青椒」と書きますが、これは漢字検定では出題されません。
 

中国の文化、故事などから由来する言葉

漢字の源流である中国で使われた言葉が日本で定着したものは多数あります。

【蛇足】
昔の中国の楚の国で、召使い達が早く蛇の絵を描き上げた者が酒を飲めるという賭けをした。
最初に描いた者が蛇にない足まで描いてしまい、他の者から「蛇に足などない」と言われ、賭けに負けて酒を飲み損ねたという故事から。あっても意味のない余計なもの、無用なものの意味となった。

【要領】
中国の前漢の外交使節、張騫(チョウケン)が「月氏(ゲッシ=トルコ系の民族)の要領を得ること能(あた)わず」と言ったことから。
「要」は腰(こし)で、「領」は襟(えり)の意味。衣服を扱うときに必ず腰と襟の部分を持つことから、物事の要点の意味が生まれた。「要領を得ない」とは、要点がはっきりしないことで、「要領がいい」は処理や立ち回りがうまいことを言う。
ちなみに要領と同じ意味の「コツをつかむ」の「コツ」は、漢語の「骨」から。

【圧巻】
昔、中国の官吏(かんり:役人)の登用試験で、答案用紙のことを 「巻」と言った。
「圧」は上からおさえる意で、最も優秀な者の「巻」を一番上に載せていたことから、最もすぐれた部分や場面のことを「圧巻」と言うようになった。

【丁寧】
昔、中国の軍隊で使っていた金属製の打楽器のこと。注意や警戒の知らせのために使ったことから、礼儀正しい、注意深いの意味を持つようになった。

【紅一点】
中国の王安石の詩「万緑叢中(ばんりょくそうちゅう)紅一点」から。多くの緑の草木の中にただ一つだけ赤い花が咲いていることの意で、多くの男性の中にただ一人女性がいることに使われるようになった。


西洋、中国、日本の文化、建築、音楽、体の部位や動植物まで、言葉の語源は様々です。古人の叡智によって生み出された言葉、その大元を探って新しい発見をするのも漢字の面白さのひとつです。語源の知識を蘊蓄として蓄えれば、自ずと漢字力もアップするでしょう。

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