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なぜ今?市川海老蔵・長男のお披露目

今月の歌舞伎座で、市川海老蔵の長男がデビューしました。しかしまだわずかに2歳8ヶ月。なぜ今、お披露目の必要があったのでしょうか。その理由を解説します。

宗像 陽子

執筆者:宗像 陽子

歌舞伎ガイド

今月の歌舞伎界の大きな話題といえば、「顔見世大歌舞伎十一世市川團十郎五十年祭」での、市川海老蔵の長男・堀越勸玄君のデビューではないでしょうか。

勸玄くんは2013年3月22日生まれですから、11月でやっと満2歳8ヶ月。「なんでそんな小さな子に?」という疑問を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
十一世市川團十郎のデビューは、6歳。十二世市川團十郎のお披露目も7歳です。

そこで今回は、「なぜ今?海老蔵長男のお披露目」をお伝えしたいと思います。

歌舞伎座の一年は、11月から

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今月の歌舞伎座

11月の興業には演目の上に「吉例顔見世興行」と名称がつけられています。

江戸時代の歌舞伎というのは、各劇場ごとに出演する役者が決まっており、1年契約だったそうです。その契約は、11月に始まり翌年の10月まで。そのため、11月は「今年1年間は、この役者たちで興行していきますので、よろしく御贔屓のほどを!」というお披露目のご挨拶として「顔見世興行」と呼ばれるのです。

各劇場の出演俳優が顔を見せてご挨拶をするので「顔見世興行」と言われたのですね。

今では、1年契約というシステムではなくなりましたが「顔見世興行」という名は残り、豪華な俳優が揃います。

では、なぜ正月ではなく、11月から1年がスタートしたのでしょう。これには諸説あったようですが、今では「中国の周の時代には正月が11月1日だったため、江戸時代の歌舞伎界がそれにならい、陰暦11月を『芝居の正月』と決めた」というのが通説になっているようです。


五十年の節目の年

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十一世市川團十郎ゆかりの演目が並ぶ

さらに今年は、十一世市川團十郎が56歳でなくなってから、五十年という節目の年。「新しく開場した歌舞伎座で、十一世市川團十郎の五十年祭を執り行う」ことは、2013年に亡くなった十二世市川團十郎の悲願でもあったといいます。

「芝居のお正月」のめでたいご挨拶に加えて、十一世市川團十郎五十年祭にもあたる。そこで、十一世市川團十郎から見ればひ孫にあたる、堀越勸玄君のお披露目をしたいというのは、ごく自然な流れだったのかもしれません。

市川海老蔵もまた、会ったことのない祖父十一世市川團十郎には深い思いがあります。それは祖父と孫というだけではありません。

海老蔵は16歳のときに十一世市川團十郎の「切られ与三」の映像資料を見て、その素晴らしさに憧れ、本格的に歌舞伎の道に入ったそうです。

これでおわかりでしょうか。11月の顔見世興行で、五十年祭である今年に、もっとも大切な市川家の跡取りのお披露目を行う必要があったのですね。

しかし、わずか2歳。1ヶ月近い舞台を無事に終わらせることはできるのでしょうか。

>>次のページでは、いよいよデビュー。堀越勸玄君登場です!
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