アドバイス1 進路が確定するまでは現状のままで
悩める大羊さんの場合、日本、中国どちらが拠点になるか、またご家族だけ帰国するかで、マネープランの考え方は大きく変わってきます。ただし、貯蓄も潤沢にあり、また年間786万円もの貯蓄と相当なペースですから、慌てる必要はありません。教育資金や老後資金で悩まれていますが、具体的にどう準備するかは悩める大羊さんの進路(仕事)、方向性がしっかり決まってからでも十分間に合います。とは言え、何もしないのも不安かと思います。それでも、まずは焦らず、今の家計管理のまま、貯蓄に励むことが大切でしょう。また、帰国して国内企業に就職した場合、収入が確実に半減するとのことですから、そのときの家計に慣れておくのはいいと思います。
具体的には、収入の半減によって落ちる貯蓄ペースを少しでも抑えるために、今のうちから家計支出を見直すということです。支出費目を拝見して、削れる余地がありそうなものは趣味娯楽費、こづかい、雑費。この合計が15万8000円ですから、10万円程度に抑える工夫をしてみてください。収入や貯蓄ペースだけを見れば、現在でも十分なのですが、帰国後には、そういった事前の見直しが必ず役に立ってくるはずです。
アドバイス2 教育資金用としてしっかり確保しておく
次に、進路が確定してからについて考えます。まず教育費ですが、家族全員が中国に居住されているということで、学資保険に加入できなかったとのこと。だからと言って、それに代わる保険に入る必要はありません。確かに教育資金づくりには有効な面もありますが、現在の予定利率は決して高いとは言えません。
それに、すでに貯蓄だけで6000万円もあります。教育資金は、高校まで公立であれば、事前に用意すべきは大学費用(入学金、4年間の授業料)となりますが、その平均額は私大文系で390万円、私大理系で520万円ほど。金額だけで見れば、すでにお子さん2人分は準備できているということです。3人目のお子さんについて迷っているようですが、教育資金という点では問題ありません。
ここで大事なのは、漠然と貯蓄するのではなく、教育資金用としてしっかり確保し、それ以外の用途では手を付けないことです。これから貯める場合でも、教育資金用として積み立ててください。
また、大学入学までには時間がありますから、定期預金を利用し、少しでも増やす工夫も必要です。ただし、必要な時期、必要な金額がほぼ決まっていますから、リスクは取れません。元本保証の貯蓄商品を活用しましょう。
アドバイス3 公的年金が少ない分は貯蓄や運用でカバー
次に老後資金ですが、国民年金のため、支給額が少ないことへの不安は確かにあるかと思います。しかし、中国企業に今後も勤務し続けるのであれば、そこは仕方のないこと。一方、1年以内に帰国するとしたら、転職先では厚生年金に加入できるはず。年齢は40代半ばということになりますが、決して遅くはありません。少しでも加入の実績を作ることが老後対策につながります。
また、もし単身赴任という形で、奥様とお子さんだけが帰国した場合、奥様が今後働くということがあれば、その勤務先で厚生年金に加入するという方法もあります。
では、具体的にどのくらい老後資金が必要でしょうか。それについては不確定な部分が多く、その額も流動的ですが、貯蓄等でそれなりの備えはできると考えています。
その根拠は、すでに住宅を日本で購入し、しかも一括支払いのためローンも残っていないという点。発生する主な住宅コストは、管理費と固定資産税ですから、現在の家賃(2万円)に1~2万円加算する程度に抑えられるはず。さらに、9年後には養育費も終了。毎月7万8000円の支出減は家計にとってかなりのプラスとなります。
仮に、国内に転職し、年収が手取りでちょうど今の半分の600万円になったとしても、養育費の支払いが終われば、年間200万円は貯蓄できるのではないでしょうか。老後資金については、投資で増やすという発想もあっていいと思います。リスクをあまり取りたくないのであれば、貯蓄の一部から、債券や株価指数に連動するインデックス型のファンドを積み立てで買っていくのがいいと思います。将来、確定拠出年金を利用できるようになれば、同時に節税対策を行うという方法も取れることでしょう。さらに、できるだけ長く働く。65歳までは少なくとも働きたいところ。これも有効な老後対策なのです。
「悩める大羊さん」から寄せられた感想
深野先生、アドバイス有難うございます。投資や保険などの主に増やす方法ばかりに目がいっており、「支出」を考えることはなかったので目からウロコでした。不安ばかりが先に立ち、漠然とお金を貯める・お金を使うことばかり考えていましたが目的意識をしっかり持って今後お金と接していきたいと思います。参考になりました。有難う御座いました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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