カンパニーの創設者であるジョン・クランコの作品をシュツットガルト・バレエ団で踊る意義をどう考えますか?
フォーゲル>クランコの『ロミオとジュリエット』を他のバレエ団で踊ることもあるけれど、やはりシュツットガルト・バレエ団で踊るのは特別なものがあります。シュツットガルト・バレエ団を観て、学んで育ってきたダンサーが多いので、やはりクランコのバレエに関しては他のカンパニーとは思い入れが違う。シュツットガルト・バレエ団はコール・ド・バレエがとても素晴らしく、またコール・ドがしっかりしているからこそプリンシパルが映えるし、魅力的な踊りができる。またそういうステージだからこそ、観ているみなさんも現実を忘れて作品の中に入っていけるのだと思います。今の時代はマルチメディアが発達していろいろな手段で作品を観ることができますが、やはりその場に来て自分の目で観て体感することが大事だと思う。特に『オネーギン』の第二幕などは、メインで踊っているひとたち以外の場面でもいろいろなことがステージの上で起こっていて、生で観なければ気づけないものが沢山ある。またそれがクランコのすごいところでもあると思います。舞台の上で同時にいろいろなことが起こっていて、だから何度も何度も繰り返し観ないと全てを把握することはできない。そこまで考えてつくられているところがすごく魅力的であり、そういう世界に入っていくことで現実を忘れられる。
やっぱりマスターと呼ばれるひとは細部まですごくこだわっていますよね。例えば絵も同じで、一見すると真っ黒に見えても、よく目を凝らすと小さい点が微妙に描かれていたりすることがある。その細部に渡るひとつひとつのこだわりが集約されて、素晴らしい作品をつくり上げているのを感じます。そしてそのストーリーの細部まできちんと対応していけるのが、シュツットガルト・バレエ団だと思っています。
『オネーギン』 (C)Bernd Weissbrod
最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
フォーゲル>日本ではじめてオネーギン役を踊ることができるのをすごく楽しみにしています。日本のファンのサポートはとても温かく、いつも感謝しています。日本にまた行くことができて嬉しいし、みなさんにお会いできるのを心待ちにしています。『ロミオとジュリエット』 (C)Stuttgart Ballet