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ゲームの暴力シーンは子供たちにどう影響?少年犯罪増加に繋がるのか
ゲームは親の管理が必要、でもその前にさらにやっておくべきことがある
ここ10年ほどのそれらの研究結果を総括した分析によると、
暴力的なゲームをすると、
- 攻撃的な行動、思考、感情が増える傾向がある
- 向社会的な行動、共感、暴力への抵抗感が減る傾向がある
これらを踏まえると、子供たちが好き勝手にゲームをしてしまうのはよくないことが分かります。親は「いつまでもゲームばかりしていないの!」「宿題を終わらせてからにしなさい」とゲームの”時間管理”に気が行ってしまうことが多いのですが、”内容の管理”も非常に重要です。
今のゲームには、A・B・C・D・Zという5段階の年齢制限が設けられていますが、年齢制限Z以外は保護者の同伴なしで購入することができますし、そもそも親がゲームに疎く、対象年齢や内容を知らずに購入しているケースも多いと聞きます。小さい子ほど影響を受けやすいですから、せめてどんなシーンが出てくるのかは事前にチェックしておきたいものです。
ゲームは、テレビや映画とここが違う
ゲーム、テレビ、映画など、暴力シーンを含む媒体は数多く存在します。その影響力を考えるとき、「いかに残酷か」という部分に目が行きがちですが、もう1つ考慮すべき大事なことがあります。それは、”方向性”です。テレビや映画を見るとき、私たちは”受け身”です。たとえ主人公が暴力をふるっていても、私たちは、それを客観的に観ている立場です。
一方のゲームはというと、自らが主人公となって”主導的”に攻撃をしていきます。その点でテレビや映画とは大きく違うのです。だからと言って、テレビの暴力シーンならOKと言っているわけではありません。以前、この記事『テレビの暴力シーンが子どもに与える影響』にも書いたように、テレビもシーンによっては子供に悪影響を及ぼします。テレビはもちろんのこと、ゲームはさらに慎重に気を配っていかないといけないということです。
暴力ゲームは犯罪行為へのリスクファクターなのか?
では、ゲームの普及と最近の少年犯罪の増加との関連はあるのでしょうか? 先に述べた研究では、残虐なゲームは犯罪行為へのリスクファクターの1つであると示唆しています。しかし、そのつながりはもっと複雑であるとも言っています。たしかに、普通で考えれば、ゲームはゲーム。実際、ほとんどの人は、ゲームの世界と日常生活を割り切っています。たとえ物事を暴力的に解決しようという発想が芽生えたとしても、罪を犯すようなことをしないよう理性が働く、それが普通です。だから、カッとなって喧嘩をしたり、友達と激しく口論したりすることはあっても、それ以上にはならず、抑制できることが大半なのです。
少年犯罪に至るケースとそうでないケースの違い
しかし、中には、止められない子がいます。それはなぜなのか? 大きな要因の1つは、止める人がいないからです。この”止める人”とは、その場で腕を引っ張って引き留めてくれる人という意味ではありません。その子の心の中で、壁となって強く厳しく、しかも愛を持って立ちはだかってくれる存在を指します。
これを、心理学では「情緒的対象の恒常性」といいます。その子が心の中で、「僕は愛されている」「絶対的に守られている」と感じられる存在のことで、基本的には母親、父親がそこに入ります。この存在がしっかりと確立されていると、「愛されているから、守られているから、親を悲しませるようなことは絶対にしたくない」という強い抑制力になるのです。
暴力ゲームをしたからといって、犯罪に直結するわけではありません。逆に、ゲームを禁止したからといって、犯罪がゼロになるわけではありません。そのもっと手前にある大事な「情緒的対象の恒常性」が育っているか否かが別れ道であって、そこをしっかりやらないと、いくらゲームを管理しても、いつか別の形で問題が発生してくる可能性が高いと言えます。
これまでにも、これらの記事:
『ヘリコプターペアレント!親の過保護が仇になる』
『過保護はどうしていけないの?』
などで取り上げましたが、親がよかれと思っている愛の形が間違っていることもあります。親は「こんなに愛しているのに」と思っていても、それが子供にいい形で伝わっていなければ、とっさの抑制力にはなってくれません。
ゲームを管理することはもちろん大事ですが、まずはその根底から築き上げないとせっかくの管理が意味をなしません。子供に”正しく”愛される親は、子供を犯罪の道とは無縁の方向へと導いてあげられるのです。
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