大切なパート練習
将棋は、指せば指すほど強くなる。経験値が上がるからだ。しかし、対局ばかりでは棋力アップにやがて限界がきてしまう。これ、将棋だけではない。どんな競技においても共通だろう。例えば、サッカー。試合だけでは上達はおぼつかない。だからこそパスの練習があり、ヘディングを繰り返したり、シュートを反復するのである。野球だったら、キャッチボールにフリーバッティング、ノック、走塁練習。すなわち、パート練習である。将棋にもパート練習が必要なのだ。
終盤で涙しないために
湯の町別府で将棋教室「将星会」を主催するガイドは、これまでにもオリジナル・パート練習法を紹介してきた。主に序盤の腕を上げる「成り駒将棋」。中盤の練習としての「陣組み将棋」。そして今回は残りの一つ、そう、終盤の練習法をガイドしたい。終盤……。もちろん敵の王将を追い詰めていく最後の過程である。勝敗に直結する場面である。優勢な勝負だったはずなのに、終盤で大逆転負け。こんな経験を、きっと皆さんお持ちだろう。子ども達ならずとも泣きたくなる経験である。
終盤には、詰め将棋
終盤の腕を磨くには、やはり詰め将棋の練習が最適であろう。ゆえに書店の将棋コーナーには様々な詰め将棋問題集が並んでいる。愛棋家なら、きっと1冊は持っているだろう。一人でコツコツと積み上げていける最適の教本となる。画像のように縁側で茶でもすすりながらの詰め将棋。ああ、最高だ。だが、である。もし、そこに相手がいたなら、どうであろう。もちろん、一人一人別々に詰め将棋問題を解くのもいいだろう。でも、せっかく、二人なのである。それじゃあ、もったいないではないか。そこで、おすすめなのが「詰めスタ将棋」である。「詰めスタ」とは「詰め将棋からスタート」を意味する名前である。詰め将棋の本1冊と相手さえいれば、やり方は簡単だ。
「詰めスタ」を始めよう
(1)まず二人で盤に向かい合い、先手後手を決める。振り駒でもジャンケンでも良い。(2)詰め将棋の本を開き、問題通りに駒を配置する。棋力にもよるが、だいたい7手詰め以上が良いだろう。
(3)先手が攻める方である。もちろん詰め将棋なので王手をかけねばならない。1手に許された時間は30秒。もし、対局時計がなければ、後手が腕時計などで時間を計る。(もちろん、砂時計でもよい)
(4)先手が指したら、後手が受ける。先手同様、30秒以内に指さねばならない。
(5)王手がとぎれたら、先手の負け。何手かかろうとも、駒が余ろうとも詰まれてしまえば後手の負けである。
(6)詰まなかった場合は、同じ問題を、今度は後手だった方が先手となって対戦する。
(7)詰んだ場合は、先手後手を入れ替えて、新たな問題に進む。
二人そろえば「詰めスタ」
いかがであろうか。当たり前だが、詰め将棋の問題には答えがある。ただし、詰むまでの手数は決まっているし、持ち駒が余ってもいけない。また後手の受け方も決まっている。しかし、実戦ではこんなことはない。何手かかろうとも詰めばよい。持ち駒など、どれだけ余ろうとも詰みは詰み。後手はどんな間違いをしでかすかもしれない。
「詰めスタ将棋」は、そんな実戦さながらの終盤練習が可能になるのだ。しかも、うまく指しさえすれば、必ず詰むことができる局面なのである。だから、何度か繰り返す内に「詰みのコツ」がつかめてくるし、何より、二人で勝敗を楽しめる。楽しめることはパート練習の大切な要素だ。
一人の時は「詰め将棋」、二人そろえば「詰めスタ」。これで、あなたの終盤力はグンとアップだ。間違いない。ぜひ、ぜひ、お試しいただきたい。そして、この「詰めスタ」に「もっと、こうしたらいいぞ」など改良のアイデアがあれば、教えていただきたい。
最後に、ある子ども棋士の声を。
はい、いつの日かやりましょう。「詰めスタ」選手権をしてほしいです。