世界遺産/アジアの世界遺産

開平の望楼群と村落/中国(3ページ目)

中国と欧米の伝統が融合して生まれた世にも珍しい歴史的高層建築、開平望楼。開平の村落には3000以上の望楼が建設され、1833棟が現存しているが、昔ながらの生活を守り伝える三門里、自力村、馬降龍、錦江里の4村落と20棟の望楼が2007年に世界遺産登録された。今回は竹林や田畑とのコントラストが美しい中国の世界遺産「開平の望楼群と村落」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

開平望楼群の構成資産 2. 自力村

葉生居虞の屋上から眺めた自力村

葉生居虞の屋上から眺めた自力村。左から養閑別荘、龍勝楼、雲幻楼、安虞。手前の蓮池には合鴨や魚が泳いでおり、周囲ではウシたちがのんびりとくつろいでいる。とてもやさしい景観だ

「開平の望楼群と村落」のハイライトで、銘石楼や葉生居虞の屋上から眺めた景色は開平のランドマークとなっている。

銘石楼の1階部分

銘石楼の1階部分。この望楼を建てた方潤文氏をはじめ、アメリカに渡った一族の写真が並べられている

村は1837年に建設され、安和里、合安里、永安里の3村92棟の建物から成る。見所は1930年までに建てられた銘石楼、振安楼、雲幻楼、龍勝楼、居安楼、葉生居虞、保養別荘といった9棟の望楼と6棟の廬(望楼の元となった非高層の洋風建築)で、望楼群と田畑の調和が見事だ。

いくつかの望楼や廬は開放されていて内部が見学できるが、いずれの望楼が開放されるかは日時によって異なるようだ。また、村史館では当時の生活の様子が再現されており、開平や自力村の歴史を学ぶことができる。

 

開平望楼群の構成資産 3. 馬降龍

竹林から突き出した望楼や廬が美しい馬降龍

竹林から突き出した望楼や廬が美しい馬降龍の神秘的な景観。もともとこの集落は毎年の豊作を祈念して「豊歳萌」と呼ばれていたが、1949年に馬降龍に改称した

馬降龍、南安村の培英書室

馬降龍、南安村の培英書室。オーストラリアに渡った黄林徳氏によって1926年に建てられた望楼で、一族の子供たちが書に親しみ、世界に羽ばたいてほしいという願いが込められている

18世紀、清の乾隆帝の時代に建設がはじまった地域で、龍江、慶臨、河東、南安、永安の5つの村から成っている。盗賊対策として家を密集させて建て、前方に池や運河を配置し、周囲を竹林で囲い、東西に見張り台となる更楼を築いた。

村と村は竹林で接続されており、竹林の上に顔を出す望楼群の景観は自力村とはまた違う趣を持っている。天禄楼、保安楼、河東楼、駿廬、昌廬、苑廬、林廬など、20世紀はじめに建設された7棟の望楼と8棟の廬が残されている。

開平では自力村とこの馬降龍がイチオシで、両者を景区観光バスが結んでいる。これらに加えて、景区観光バスが通過する立圓と赤坎を訪ねれば、十分楽しめるだろう。

 

開平望楼群の構成資産 4. 錦江里

錦江里の瑞石楼

錦江里の瑞石楼。最上階が少し出っ張っているのがわかる。これにより、壁や床に空いた銃眼から真下への攻撃が可能となる。最上階四隅の特徴的な小塔はインドのチャトリを彷彿させる

錦江里、錦江楼の銃眼

錦江楼の屋上。壁や床に空いた穴は銃眼で、ここから矢を放ったり銃撃を行った

清朝の時代に潭江と山の間に建設された村で、村の周囲を竹林が囲っているのは馬降龍と同様だ。山と竹林・望楼・青の家並みの調和が美しいだけでなく、周囲でたわむれる水牛やガチョウの姿がまた風流だ。

望楼は瑞石楼、錦江楼、昇峰楼の3棟しかないが、それぞれがきわめて特徴的だ。

1923年に建てられた9階建ての瑞石楼は開平でもっとも美しく、もっとも高い望楼として知られている。1919年竣工の昇峰楼は7階建てで、フランス人建築家によって設計され、バロック様式の荘厳な造りとなっている。このふたつの望楼に挟まれているのがもっとも長い歴史を誇る錦江楼で、村が襲撃された際、人々はこの衆楼に逃げ込んで盗賊と戦った。

 
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