マンション物件選びのポイント/エコマンション

機械に頼らず自然の風や光を取り込むエコマンション

都内にありながら豊かな自然環境に恵まれた立地にあり、その環境を活かすパッシブデザインを多用した最新エコマンションができると聞き、見学してきました。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

東京都内でありながら週末には多くの登山客でにぎわう八王子市・JR高尾駅のすぐそばに、総戸数416戸の大規模マンション「プレミスト高尾サクラシティ」の建設が進んでいます。こちらのマンションは最新のエコ設備を備えつつ、その立地特性を生かしてパッシブデザインを取り入れているということで、詳しいお話を聞きにモデルルームに行ってきました。

マンション模型を南側から見る。マンション手前には商業施設ができる予定

マンション模型を南側から見る。マンション手前には商業施設ができる予定



パッシブデザインとは

典型的な田の字プランの例

典型的な田の字プランの例

パッシブデザインとは、機械装置に頼らずに建物の構造や間取り、材料等の工夫によって、自然通風や太陽光など周辺環境の恵みを積極的に取り込んで、快適な室内環境を得ようという考え方です。

一般的に、多くのマンション住戸には「窓」の位置に制約があります。例えば最もポピュラーな外廊下型の田の字プランでは、角住戸以外はバルコニー側と外廊下側にしか窓を設けることができません。しかも住戸の内部は田の字型に室が区切られており、バルコニー側から外廊下側へと風が抜けるための障害がたくさんあるのが現状です。

それらを解消するためにこのマンションが採用したパッシブデザインをご紹介しましょう。

小窓で風の出口をつくる

【写真1】玄関扉の脇に設けられた通風のための小窓

【写真1】玄関扉の脇に設けられた通風のための小窓

こちらマンションでは、内廊下の突き当り、玄関扉の脇に「風の出口」となる小窓を設けたプランを多く採用しています【写真1】。

この小窓を開けることで、バルコニー側から外廊下側まで風の道ができ、住戸内を風が通り抜けやすくなります。

しかし、せっかく窓をつけても開放しておかなければ意味がありません。そこで長時間開け放しにできるように、外廊下側には面格子を設け、防犯に配慮しています。暑い夜にこの小窓を開けておけば、涼しい風が入ってきて寝苦しさを解消してくれそうです。


 

 

ウォークスルークロゼットの採用

ウオークスルークロゼットとは2方向以上に出入りができる大きなクロゼットのことで、両方の扉を開けることで風の通りがよくなったり、生活動線が短くなるなどのメリットがあります【写真2】。

写真2】手前の洋室部分からウォークスルークロゼットを通して向こう側の洋室を臨む。

【写真2】手前の洋室部分からウォークスルークロゼットを通して向こう側の洋室を臨む。


そのようなことから最近ではセレクトプランとしてウォークスルークロゼットのある間取りを提案するマンションも見かけるようになりました。プレミスト高尾サクラシティでも一部の住戸に標準で採用。このようなウォークスルークロゼットの採用は、間取りのくふうで空気の流れを作るひとつの手法と言えます。

 

好きなところを開けられるフレキシブルワイドサッシ

間口いっぱいをリビング・ダイニングにした横長リビングの間取りでは、太陽光を取り込むために間口いっぱいのワイドサッシを採用するケースがほとんどです。しかし、そのワイドサッシの多くは中央がFIXで固定され、両脇が開閉可能など開口できる場所が決められています。

しかし、本当は食事をするときはダイニング側を、ソファーに座っているときはリビング側の窓を開けて風を感じたいですよね。そこでこちらの物件では、そんな希望も叶えられるようにと、どの部分でも開口できるフレキシブルワイドサッシを採用しています【写真3】。

写真3】フレキシブルワイドサッシの中央部分を開放した状態を見る

【写真3】フレキシブルワイドサッシの中央部分を開放した状態を見る



通風ガラリのあるリビングドア

【写真4】風を通せる可動ルーバー付きリビングドアを採用

【写真4】風を通せる可動ルーバー付きリビングドアを採用

外廊下側からバルコニー側に抜ける風の道を作っても、その間にあるリビングドアを閉めてしまうとそこで風が遮断されてしまう恐れがあります。

そこで、扉を閉めた時でも風は通るように、全住戸のリビング扉には可動ルーバー付きのドアを採用しています【写真4】。

可動ルーバーなので、空気を通したいとき、閉め切りたいときそれぞれに対応可能です。マンションのリビングドアでは今まであまり見たことのないアイデアだと思います。

 

通風と採光に配慮したバルコニー手すり

バルコニーの手すりは、通風に配慮した「ルーバー手すり」と採光を取り入れるための「ガラス手すり」を間口の半分づつ採用しました【写真5】。

【写真5】採光と通風を配慮したバルコニーの手すり

【写真5】採光と通風の両方に配慮したバルコニーの手すり


通風を得られるルーバー手すりの内側には洗濯物が干せるようになっており、一方、光を通し明るいガラス手すりは主にリビングに面して設けられます。

バルコニーの奥行きは広く、ガーデニングが楽しめるように全てのバルコニーにはスロップシンクが設置されています。このマンションのひとつのテーマでもある自然との共生を身近に感じることができるでしょう。

次のページでパッシブだけじゃない!それ以外の省エネ設備を見てみましょう。

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