マンションデベロッパーが高校で教える防災プログラム
マンションデベが学校で防災ノウハウを提供すると聞き、取材に行ってきた。「防災の日」の翌々日(9月3日)、西武池袋線「ひばりが丘」駅最寄りの学校法人「自由学園」女子部高等科である。理科室の実験作業台を取り囲むように、5名程度の女子高校生が8つのグループに分かれて座っている。講師は、三菱地所レジデンス商品企画部グループ長岡崎氏である。冒頭の挨拶では、関東大震災(1923年)のとき三菱地所の男子社員は帰宅せず丸の内に残って救助活動を行うよう指示が出されたこと、以来毎年大規模な防災訓練を繰り返し、東日本大震災時では「体制発令」が出されずとも各ビル担当者はブルーシートを敷くなど同地区で被災した人たちの避難所を設営したなど「無意識のうちに対応力が養われている」(岡崎氏)とした体験談を話した。
こうした三菱地所の避難訓練やマニュアルをはじめとする防災ノウハウは、三菱地所レジデンスの管理組合(入居者)に共有され、また「そなえるカルタ」など専用ツールを通じたワークショップはモデルルームなどでも展開されはじめている。その拡大版として、今回の高校でのワークショップに発展したというわけである。
「そなえるカルタ」を使って1時間40分
防災学習のタイムスケジュールは、途中5分休憩をはさんで1時間40分もの高校生にしては長時間のプログラムである。とはいえ、詰込み型ではなく、話し合いや発表の時間を盛り込んだ内容だ。同社がコミュニティクロッシングジャパンや復興応援団と協力して考案した「そな えるカルタ」(下の画像参照)を活用し、実際震災でおこったことなどを聞きながら、前半はワークシート(上の画像参照)を埋めていく作業である。当日のテーマは「トイレ」編を全チームで、「導入・食糧+ゴミ・水・情報」を各2チームずつに分けて行った。最後に話し合った内容を発表。一番気になったカルタを各々選んで終了。
企業ノウハウが学校で活用されるに至った経緯
学校法人「自由学園」は1921年、現在の豊島区西池袋にて創立。その後東京都東久留米市に10万坪の土地を取得。うち7万坪を分譲し、3万坪を学校用地にあてた。武蔵野の原野を思わせる自然豊かな敷地には、世界の著名建築家フランクロイドライト氏に師事した遠藤新、遠藤楽父子による名建築が点在。さながら建築史料館のようである。今回、三菱地所グループの防災ノウハウを、なぜ高校のカリキュラムに取り入れようと思ったのか。自由学園危機管理本部長蓑田氏曰く、「一方的な講義型の形式では、内容の2割程度しか生徒の記憶に残らないだろう。もっと実践的で有効な方法はないかと考えていたところ、三菱地所レジデンスの取り組みを知った」。聞けば両者は、お互い某防災セミナーに参加したことから面識が生まれ、それがこの度のきっかけになったそう。生徒たちの真剣で明るく、積極的に発言する姿が印象的だった。
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