マンションの窓からの転落・落下を防止するために

新型コロナウイルス感染拡大への対策として、室内の換気が有効とされています。そのため今後は季節を問わず、窓を開けて換気を行う機会が増えると考えられます。マンションではベランダからの幼児の転落事故が増えていますが、窓からの転落事故にも十分気を付けるべきです。今回は過去に「窓」から落下した事故を振り返り、転落防止対策を確認していきたいと思います。
 

窓からの転落事故の例

マンション上階の窓や出窓から転落する事故も多い。転落防止対策が必要だ

マンション上階の窓や出窓から転落する事故も多い。転落防止対策が必要だ

●事故ケース1
2016年5月25日午前11時頃、京都府のマンションの6階に住む1歳男児が、転落して死亡する事故が発生。当時、男児は母親と出窓脇にあるベッドで添い寝中だった。出窓が半分開いた状態だったため、ここから転落したものと見られている。

●事故ケース2
2014年11月16日午後8時頃、大阪の15階建てマンションの11階から4歳男児が転落し死亡する事故が発生。母親が「ドスン」をいう大きな音に気がついて通報。寝室の床から高さ約95cmある窓が開いており、窓の近くに台が置いてあった。

●事故ケース3
2007年6月30日午前9時頃、宇都宮市で1歳男児が団地の窓から転落する事故が発生。窓は団地の3階部分で地上7mの高さ。病院に運ばれたが幸いにも命は助かった。母親は台所にいて、転落した時は気がつかなかった。転落した窓ぎわには子ども用ベットがあり、ベットより20~30cm高い位置に窓があった(【図1】参照)。
【図1】団地の3階、約7メートルの高さから転落。ベットから窓まで20~30センチしかなかった

【図1】団地の3階、約7メートルの高さから転落。ベットから窓まで20~30cmしかなかった

 

3つの窓からの転落事故の共通点

この3つのケースで共通していることは、窓の近くに足がかりとなるものがあったことです。事故ケース1と3では「ベッド」が、事故ケース2では「台」が、それぞれ足がかりの役割を果たし、それによじ登って窓から落下したと考えられます。

事故ケース3の場合、子ども用ベットから窓までの高さが20~30cmしかなかったとのことで、その高低差なら1歳の子どもが転落する可能性は十分あります。もっと月齢の低い、歩けない子どもの場合でも、この高さでは寝返りを打つだけでも十分危険です。
 

転落事故の原因は?

推測ではありますが、いずれの場合も「窓を閉めていること」を前提に、室内に台を置いたり窓際に子ども用ベッドを置いていたのではないでしょうか。

もし窓を閉め、鍵をかけておけば子どもは開けられないはず、と考えていたとすれば、実はとても危険なのです。子どもは親の動作をよく見て学んでいますし、何かのはずみで鍵が開くことも考えらます。小さなお子さんのいる家庭では、常に「万が一の危険性」を視野に入れて安全対策を取っておくことが必要です。
 

大切なのは足がかりをつくらないこと

事故を起こさないために大切なことは、窓際に足がかりをつくらないこと、部屋に足がかりとなるものを放置しないことです。
窓の近くのソファーも危険。子どもが落ちるほか、子どもが窓からものを落とす危険性もあります。

窓の近くのソファーも危険。子どもが落ちるほか、子どもが窓からものを落とす危険性もあります。

もしリビングであれば、ソファー、テーブルなど、窓ぎわにあるものはなんでも足がかりになります。子どもは頭が大きく重心が高い位置にあるため、足がかりによじ登りバランスを崩し、転落事故につながることが懸念されます。

最近のほとんどのマンションでは、そのような落下の危険性のある窓には落下防止手すりを付けています。それでも窓ぎわに足がかりになるものがあると、手すりを乗り越える危険性が発生してしまいます。すなわちハード面の対応だけでは不十分で、住まい方でも十分な注意が必要だということになります。
 

もし落下防止手すりが付いていなかったら

先ほど述べたように、転落事故を防止するために、最近のマンションでは最初から窓に落下防止手すりを設けているケースが多くなっています。しかし、残念ながら、建築基準法では窓への手すり設置が規定されているわけではありません。
窓には転落防止のために手すりや柵を取り付けよう

窓には転落防止のために手すりや柵をを取り付けよう

法的な規制がないため、築年数の古いもの、戸建住宅などでは窓からの転落防止対策をしていないものも多く見られます。もし小さなお子さんがいて、危険を感じたら自分たちで対策を取るようにしてください。落下防止手すりをつける基準は次の通りです。
 

窓の落下防止手すりの基準

幼児を対象とした落下防止の観点でみると、床から窓までの高さを80cm以上確保することがひとつの目安になります。足元に幼児がよじ登れる足がかりのある場合は、その足がかりから80cm以上の高さまで落下防止手すりを設けましょう。
落下防止手摺の高さの基準。床から窓の下枠まで最低80センチは必要。足がかりがある場合は、足がかりから80センチの高さまで手すりを設ける

落下防止手摺の高さの基準。床から窓の下枠まで最低80センチは必要。足がかりがある場合は、足がかりから80センチの高さまで手すりを設ける

それでは次に、後から窓に手すりをつける方法と費用の目安を見ていきましょう。窓からの転落防止手すりを取り付ける方法を、横浜のリフォーム会社「グッドホームカネコ」の金子智子さんにお聞きしました。
 

DIYで自分で取り付ける(室内側への取り付け)

まずDIYで自分たちで取り付ける方法をご紹介します。一般に窓の内側には木製の窓枠が付いています。この窓枠に、手すり用の受け金具をビスで強固に取り付け、そこに手すり棒を渡します。

手すり棒の材質は、窓の幅が1m以内なら木製でも可能です。幅が1m以上2m未満の場合は、強度面から金属製、または芯に金属を使った手すり棒を使ってください。受け金具や手すり棒は、ホームセンターなどで購入することができます。手すり棒の径は35Φ前後のものが多く出回っています。一戸建て、マンションともに有効な対策です。
【参考取付け位置】手すりは床から80センチ以上 かつ 窓枠から11センチ以内に取り付けましょう。転落防止手すりはDIYでも取り付け可能です。

【参考取付け位置】手すりは床から80センチ以上 かつ 窓枠から11センチ以内に取り付けましょう。転落防止手すりはDIYでも取り付け可能です。

費用の目安:
  • 手すり受け金具 1個数百円~
  • 手すり棒(木製・金属製・芯に金属を使ったもの 35Φ)長さ2m程度 1本数千円~
比較的お手軽にできることや、窓幅によっては木製の手すりを採用できるところがポイントです。手すりとして機能するよう、木枠にしっかりとめることが大切です。
 

外付けの既製品手すりを付ける(戸建住宅の場合)

窓の内側ではなく、外側に既製品の手すりを取りつける方法もあります。材質はアルミやステンレスが良いでしょう。下の写真はアルミ製、先付け・後付け可能、木造住宅用の窓手すり既製品です。手すりの高さは50cm、90cm、1.2mがあります。こちらは専門の業者さんに頼んで取り付けてもらう仕様になっています。
後付けできるアルミ製の窓手すりイメージ。専門の業者さんにしっかりとりつけてもらおう。画像提供三協立山アルミ

後付けできるアルミ製の窓手すりイメージ。専門の業者さんにしっかりとりつけてもらおう。画像提供三協立山株式会社

費用の目安:
  • 1カ所 5万円前後から(幅1.8m、材料費、取付け費込)

部屋の内側に手すりがないため圧迫感がなくすっきりします。強度、寸法が適している既製品を選ぶことがポイントです。一戸建てのみ可能。
※マンションでは外壁は「共用部」となり、後から手すりをつけることは基本的にできません。

 

さっそく家の中の転落危険箇所をチェック!

それでは、家の中の窓の状況を今一度確認してみましょう。
  • 転落の恐れのある窓はないか
  • 窓のそばに足がかりになるものはないか
特に、赤ちゃんや目の離せない小さいお子さんがいるご家庭では、上記のような転落防止策をさっそくとるようにしてください。

【取材協力】
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