マンションのベランダからの転落事故が絶えない

高層マンションが建ち並び、居住者数も増えるに従い、マンションのベランダから子どもが転落する事故が報告されるようになりました。2020年6月には1カ月の間に4件もの転落事故が発生しています。新型コロナウイルス感染拡大を受け、自宅で過ごす時間が長くなっていた影響も考えられます。
高層マンション高層階から幼児の転落が後を絶えない

高層マンション高層階から幼児の転落が後を絶えない

 

新型コロナウイルス感染拡大の子どもたちの生活への影響

新型コロナウイルス感染拡大を受け、ゴールデンウイークを目前とした2020年4月7日、東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪府、兵庫、福岡の7都道府県に緊急事態宣言が発出されました。4月16日には対象区域が全国へと拡大し、住民に対して外出自粛の要請や、学校や福祉施設などの施設の使用制限、音楽やスポーツなどのイベントの開催制限等が行われました。幼稚園や保育園がお休みになり、公園の遊具が使えなくなるなど、子どもの遊び場・行き場がなくなりました。
緊急事態宣言下、多くの公園が使用禁止になりました

緊急事態宣言下、多くの公園が使用禁止になりました


緊急事態宣言は段階的に解除され、5月14日に北海道・東京・埼玉・千葉・神奈川・大阪・京都・兵庫の8つの都道府県を除く39県が、5月21日には、大阪・京都・兵庫の3府県が解除されました。5月25日に残る東京・神奈川・埼玉・千葉・北海道の5都道県の緊急事態宣言が解除され、およそ1カ月半ぶりに全国で解除されることになりました。解除されてもしばらくは自粛ムードが続き、公園の遊具に規制線が貼られたままの状態が続きました。
 

コロナ渦中のベランダからの転落事故の例

ベランダからの転落事故-1
6月27日午後8時50分頃、神奈川県山北町の6階建てマンションの6階から4歳女児が転落。両親と弟の4人暮らし。落下時に両親が通報。

ベランダからの転落事故-2
6月16日午後6時半過ぎ、横浜市中区の12階建てマンションの8階から5歳女児が転落。両親と弟、祖母の5人暮らしで当時母親と弟は別の部屋にいた。ベランダの手すりの高さは女児の身長と同じ1mくらいの高さで、近くに台のようなものが置いてあった。

ベランダからの転落事故-3
6月15日午後7時頃、札幌市の7階建てマンションの7階から5歳男児が転落。両親は外出中で男児1人が自宅にいた。高さ1.3m程度のベランダの手すりを乗り越えたと見られている。

ベランダからの転落事故-4
6月8日午後8時45分頃、福岡県久留米市の19階建てマンションの18階から4女児が転落。両親が短時間留守にしている間にベランダの手すりを乗り越えたと見られている。

このコロナ渦中の転落事故の共通事項は、
  • 4歳または5歳の幼児
  • いずれも夕方~夜の時間帯
  • 親が留守の間に発生した事故が2件、親が一緒にいて発生した事故が2件
  • 4件中3件が緊急事態宣言が最後まで解除されなかった(長引いた)地域で発生
就寝時刻頃の夜にも事故が発生していることから、昼間外で遊ぶ機会をなくし、体力が残っていたのではないかとも推測できます。
 

新型コロナウイルス感染拡大以前に起こったベランダからの転落事故例

ベランダからの転落事故-5
2014年5月2日午前8時頃、東京都葛飾区の11階建てマンションの10階のベランダから4歳男児が転落。母親は兄の忘れ物を届けるためにマンションの1階に降りていて、室内にいたのは男児と1歳の妹だけだった。ベランダの近くに踏み台があり、手すりには男児の手の跡があり、自ら手摺を乗り越えた可能性がある。

ベランダからの転落事故例-6
2010年3月26日午後4時45分頃、東京都八王子市の14階建てマンションの14階ベランダから3歳男児が転落。男児は両親との3人暮らしで、当時は母親は仕事で不在、父親は買い物に出ていた。1人で室内にいた男児がベランダに置かれた荷物に乗っているうちに誤って手すり(高さ1.2m)を超え、約42m下に転落した。

ベランダからの転落事故例-7
2010年4月20日午後3時55分頃、千葉県印西市の14階建てマンションの12階ベランダから4歳男児が転落。男児はこの日風邪で幼稚園をお休みしたが、母親が近くのコンビニエンスストアに5分ほど外出したすきに事故は起きた。ベランダには居間にあった子ども用のイス(高さ約50cm)が置かれていたという。身長100cmの男児がイスにのり、誤って手すりを乗り越えたとみられている。

新型コロナウイルス感染拡大以前に起こったこれらの転落事故の共通事項は、
  • 3~4歳の幼児
  • 朝、または夕方の時間帯
  • 親が子どもを残して外出中に起きた事故
  • マンションの高層部(10F、12F、14F)のベランダから落下
  • ベランダに置いた「もの」に乗って転落
  • 死亡事故
ベランダに置いてあるもの、植木鉢の台も足がかりになる可能性がある

ベランダに置いてあるもの、植木鉢の台も足がかりになる可能性がある


朝や夕方の時間帯に、いずれも親が留守にしている間に発生しています。たった5分の留守中にもこのような悲惨な事故が起きてしまうことを、肝に銘じなければなりません。
 

マンションの高層部に住まうときの留意点

マンションの高層部からの転落では、残念ながら死亡事故につながる可能性が高くなります。

マンションの窓から子どもが転落!原因と対策は?」の記事では、幼児が団地の3階の窓から転落した事故を取り上げましたが、転落した男児(1歳)は、一命を取りとめました。

命を取り留めるのか、失ってしまうのか。それは「高さ」によるところが大きいと言えます。高層マンションの高層階に住むということは、そういったリスクもあると理解し、十分な対処を行った上で住むことが大前提となっています。
 

ベランダの手すりの基準

建築基準法施行令第126条では「屋上広場または2階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さ1.1m以上の手すり壁、さくまたは金網を設けなければならない」と定められています(※マンションと3階建て以上の戸建住宅などに適用。2階建以下の一般的な住宅には適用されません)。
マンションのバルコニーの手すりには基準がある

マンションのバルコニーの手すりには基準がある


つまりマンションの2階以上の部分のバルコニーには、高さ1.1m以上の手すりまたはさくを付けなければならないことになっているのです。しかし、材質や強度などの指定は何もなく、マンション販売業者側で自主的に安全策を取っているのが現状です。ですから、購入者側でしっかり安全性をチェックしておかなければなりません。

■ベランダの手すりチェック項目
  • 高さが十分に取れているか(1.1m以上)
  • 手すりがアルミなどの金属製の竪格子の場合、竪格子どうしの間隔が空きすぎていないか(子どもの頭が抜けない目安は11cmです)
  • 手すりが横格子の場合、子どもが足を掛けて登る恐れがある
  • 揺すってみてしっかり固定されているか
  • ガラスの手すりの場合は強度や割れた時の安全性
  • 足がかりはないか
 

ベランダの足がかりとは?

今回取り上げた事故例の中には、ベランダに置かれた踏み台や荷物、子ども用のいす(高さ50cm)に乗り、手すりを超えて子どもが落下したケースが見られます。この場合の「踏み台」「荷物」「子ども用のイス」が足がかりとなります。

また、これ以外にも、手すりの内側に折りたたんである洗濯物干し竿、ベランダガーデニングに用いる鉢置きの台、手すりの内側に設けた斜め格子のラティスなども、子どもが足を掛けてよじ登る危険性があります。幼児の足がかかるもの、幼児が楽にのぼれる高さのものは全て足がかり(=危険)になると考えてください。
 

ベランダの転落防止対策は、足がかりを置かないこと

マンションベランダの手すりが1.1m以上あっても、足がかりとなるものがあれば、子どもがそれによじ登って手すりを超えて落下する危険性は十分にあります。ベランダからの転落防止で取るべき対策はシンプルです。ベランダから足がかりとなるものを全て取り除くことです。

荷物、イス、テーブル、おもちゃ、植木鉢、プランター、エアコンの室外機、足を掛けられるラティス……足がかりとなる可能性のあるものは全て撤去するか、ベランダの手すりから一定の距離をおいて置き、固定させて子どもが動かせないようにしてください。
ベランダに放置すると足がかりになってしまうものの例

ベランダに放置すると足がかりになってしまうものの例

 

幼児が登ってしまうベランダの足がかりの高さ目安は65cmまで

幼児が登ってしまう可能性のある足がかりの高さの目安は65cmまでとなります。65cm以上となると反対に幼児は登りにくくなります。気をつけたいのは【図1】に示したような、バルコニーの手すりの下部に逆梁(ぎゃくばり)が出ている物件です。
【図1】マンションのベランダ部分の断面図。手すりの下部に梁があり、そこに上って落下する可能性がある

【図1】マンションのベランダ部分の断面図。手すりの下部に梁があり、そこに上って落下する可能性がある

このような構造の場合、逆梁部分が足がかりになるため、足がかりとなる部分から手すりの高さが十分取れていることを確認してください。逆梁の上に子どもが乗っても落下しないための手摺の高さは最低でも80cm必要と言われていますが、あくまで目安です。ベランダに足がかりとなるものがあること自体が好ましくないため、小さなお子さんのいるご家庭では、このような構造のマンションは避けることをお勧めします。
 

ベランダの手すりの高さは物件ごとにまちまち

建築基準法で定められている「手すりの高さ1.1m」という基準は、大人が寄りかかっても安心できる高さの基準です。たいていの高層マンションではさらに安全性を高めるために1.2m~1.3mの高さを設置している物件も見かけます。「もっと高くすれば良いのに」と思うかもしれませんが、安全性では優れますが、その分眺望が削られて圧迫感が出るため、高さの設定は難しいところです。
 

ベランダの転落防止対策「子どもの成長を過信しない」

高層マンションで幼児の落下事故が相次ぐ背景には、実は手すり形状の不備といったハード面よりも、危険管理が徹底されていないこと(ソフト面)が原因のケースが多く見られます。

子どもは日々成長しています。昨日は寝返りを打てなかったけど今日は出来た、昨日開けられなかった鍵を今日は開けることができた、高い手すりも腕の力を使ってあっという間に乗り越えられるようになります。「まだ動けないから」「鍵を掛けているから」と安心してしまうのではなく、しっかり安全対策をとるようにしましょう。
子どもが小さいうちは一人でベランダに出れないようにしておくことも事故防止になる

子どもが小さいうちは一人でベランダに出れないようにしておくことも事故防止になる
 

ベランダの転落防止対策の心得

繰り返しになりますが、高層住宅に住まう時は、かわいい子どもの安全のために、ベランダに足がかりを作らない、なるべくモノを置かない、なるべく子どもを一人にしない目を離さないこと、ベランダにでる掃き出し窓には子どもの手が届かない位置に補助錠を設ける、といった対策も有効です。
 
ベランダに通じる窓には高い位置に補助錠を設けておくとよい

ベランダに通じる窓には高い位置に補助錠を設けておくとよい


子どもがおもちゃなどを下に投げ落として他人にケガをさせる事故も報告されています。そういった事故を予防するためにも、ベランダまわりは常に整理整頓を心がけ、足がかりや投げやすものがないか確認するようにしてください。

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