50代、「持ち家」ありはメリットか?

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62歳のシングル女性から仕事と貯蓄についての相談を受けた。女性は、40代に購入したマンションで一人暮らし。充実した日々を送っている。65歳までと考えていた定年が延長されそうだと、キャリアとマネープランの整理にいらっしゃったのだ。
 
「日々、充実している」との言葉とともに、「寂しくなる時が増えた」とも。おそらく職場では出せない言葉と表情だろう。そして面談終了時、出張相談が可能であれば、「次回は自宅で」と言う。「自宅は、もっとも安心でき、もっとも自分らしく振舞えて、最高のおもてなしができる空間」と彼女は言う。住まいを持つことのメリットは、年を重ねることでわかる。「持ち家でよかった」と思える機会が増えるのだ。
 
50代シングルのあなたへ、「住宅購入のすゝめ」
  • 50代の今、安心安全な住まいで生活の質を最適化する
  • 人生100年時代の50代。自分の寿命と住まいの寿命のベストバランス
  • 高額支出は資金計画の選択肢が多い現役世代・50代のうちに
 

シングルミドルをとりまく環境

上野千鶴子さんの「おひとりさまの老後」が刊行されたのが、2007年7月。あれから、14年弱。50代シングルのあなたは今、将来の備えが整っているだろうか。
 
当時、少数派だったおひとり様は、すっかり市民権を得た。2015年の国勢調査によれば、単身世帯は、夫婦のみ世帯や夫婦と子の世帯よりも多く、全体の34.5%を占める。介護保険制度など、おひとり様の老後をサポートするインフラも整いつつある。
 
同調査によれば、50歳時の未婚割合(生涯未婚率)は、男性が23.37%と4.2人に一人の割合。女性は14.06%だ。生涯未婚率は、1990年に男女の値が逆転して以降、男性の生涯未婚率が急上昇していく。おひとり様は決して一人ではない、ということだ(参考:国立社会保障・人口問題研究所・人口統計資料集2019年版)。

 

「住宅購入のすゝめ」理由その1:生活の質の最適化

 「豊かな暮らしの3要素」をご存じだろうか。3要素とは、「生きがい(働きがい・暮らしがい)」「健康」「お金」。そして、この3要素を支える土台が「住空間の充実」であると私は考えている。「住空間」は、持ち家でも賃貸でもよいが、50代はとくに、働きがいについて考えたい。
 
50代の転職や起業が増えているという。たしかに、定年退職後に仕事を求めると、選択肢が狭まり、自分の能力を発揮できないかもしれない。が、会社で働くことだけがキャリアではない。働くことを通じての自己実現や社会貢献は、年齢を区切る必要はない。人生そのものだ。だとすれば、人生を支える住空間は、今のままで良いのだろうか。
 
総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、住宅総数に占める持ち家の割合は61.2%。借家の割合は35.6%だ。65歳以上の高齢単身世帯では、持ち家の割合が66.2%と高い。高齢者にとっての持ち家は、「何はともあれ、住むところはある」という安心感につながっているに違いない。
 
転職、起業、現状維持、いずれリタイアする時期が来る。すると、活動範囲や交友関係、ライフスタイルが変化する。50代シングルは、親の介護も大きなテーマとなるだろう。人生100年時代だ。住空間は、あなたの一生涯を支え、生活の質を高めるものであって欲しい。50代は、将来を見通せる位置にいる。30代にはできなかったことだ。

 

「住宅購入のすゝめ」理由その2:自分の寿命と住まいの寿命のベストバランス

令和元年簡易生命表によれば、50歳の平均余命は、男性が32.89年、女性が38.49年。単純に考えれば半分以上の50歳がそれ以上の余命があることになる。社会人になってから今までの年月と同等以上の時間が待ち構えている。
 
「30代に終の棲家として購入したが……」と定年前後の住替え相談は少なくない。人生100年時代における「終の棲家」とは、50代以降の住宅購入にこそあてはまるのではなかろうか。「50代だから」と住宅購入を躊躇することはない。これまでと同じだけの年月があるのだ。一度きりの人生を自分らしく豊かに過ごすため、住空間の不具合を解消し、最適化しよう。
 
では、「住まいの寿命」はどうだろう。
 
国交省の資料を見ると、木造住宅の躯体では、「フラット35」基準程度で50~60年。長期優良住宅となると100年以上。集合住宅では、鉄筋コンクリート造の建物の物理的寿命は100年を超える。一方、給排水・給湯設備、建具や仕上げ材といったものは、15~25年くらいで交換、改修の時期がやってくる。

さらに、住まいの寿命は、構造だけではない。使い方、メンテナンス、立地条件等によっても異なってくるため、中古住宅を購入する場合は注意したい。機能や性能が旧式であるがゆえに、省エネや脱炭素といった課題もある。
 
50代は、「終の棲家」として購入を検討できるからこそ、住宅選別の判断軸を明確にできるのだ。

 

「住宅購入のすゝめ」理由その3:高額支出は資金計画の選択肢が多い現役50代のうちに

50代の住まい選びは、「現役で働きながら」を最大限に活かしたい。その最たるものは、住宅ローンだろう。退職し、収入が無くなれば、借入れは厳しい。購入する住宅を担保に購入資金を借入れるリバースモーゲージ型住宅ローンもあるが、満50歳以上満60歳未満対象の「リバース50」だと、借入可能額は担保評価の30%。60歳以上の「リバース60」で、50~60%(一般住宅の場合)。いずれも自己資金が必要となる。
 
だが、現役であれば、低利の住宅ローンを利用できる。もちろん、キャッシュで購入する方法もあるが、多くの所得税を納めているシングルは、住宅ローン減税の利用も検討したい。
 
50代の住宅購入は、「老後資金の試算無くして購入予算計画無し」。予算計画が重要だ。筆者が提唱している「自分予算プランニング」(詳細は下記)は、生涯収支による試算だが、簡単なので、ぜひやってみて欲しい。計算式は下記のとおり。考え方は、生涯収入と貯蓄の合計から、生涯支出(住居費除く)を引き算し、住宅取得と維持に充当できる金額を試算するというもの。簡単な計算で、おおよその予算を把握できる。
 
「自分予算プランニング」

(A)生涯収入=手取り年収×退職までの年数+退職金+貯蓄額+年金額

※年金額は、公的年金+企業年金+私的年金。それぞれに予定受給年数を乗じて求める。なお、公的年金は、50歳以上のねんきん定期便を参照のこと。

(B)生涯支出=基礎生活費(寿命まで)+趣味等必要費+医療費(見込み)+その他
(C)住居費充当可能額=(A)生涯収入-(B)生涯支出
(D)住宅購入予算=(C)-(購入諸経費+住宅ローン利息+固定資産税等税金+保険料+維持・修繕費)  

上記「自分予算プランニング」の結果、(C)が5000万円であっても、5000万円の住宅は購入できない。(D)にある通り、諸経費等の支払が必要だ。また、希望住宅が6000万円にもかかわらず、予算が3000万円しかなければ、家計を見直すか、資産を増やすか、予算内で妥協するか。マネープランニングの出番だ。
 
50代は、大事な資産形成期。将来の資金不足を早期に把握することで、対応策がとれる。50代での住宅購入やその検討は、自分の人生やお金と真摯に向き合う貴重な機会となるだろう。

 

50代の自分らしい住まい選び「3つのP」

最後に住まい選びの「3つのP」について、紹介する。3つのPとは、Place(立地)、Plan(建物・プラン・仕様)、Price(価格)。住空間に対する希望条件をすべて書き出し、3つのPで分類。さらに、希望の優先順位を決めていく。
 
3つのPごとに希望条件を書き出しておけば、住宅検索サイトやモデルルーム・モデルハウス見学時に、余計な情報に惑わされずに済む。希望条件を3つのPで見える化しよう。
 
(Place)
キャリアチェンジやリタイア後のライフスタイルの変化や行動範囲の変化を意識して、希望の立地条件をピックアップ。

(Plan)
シングルは、自分に最適な空間を優先できることがメリット。将来の起業や趣味、暮らし方を意識したプランの条件をピックアップ。

(Price)
予算は生涯収支から試算すること。住宅ローンの利用の有無、頭金や返済額、返済期間の上限など、お金に関する希望条件をピックアップ。


買うか買わないか、いつ住替えるか、など、判断結果はすべて自己責任。選択肢は様々ある。50代の今こそ、住宅取得の検討を機に、自分のキャリアやお金、ライフプランに向き合って、豊かな人生をおくっていこう。
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