平成25年の改正で「介護は施設から在宅へ」
介護することが最近増えると、自分の病院に行く時間がなくなるかも……
しかし平成25年の改正では「介護は施設から在宅へ」と180度の方向転換をし、高収入の高齢者には応分の負担を求める厳しい内容になりました。要介護者だけでなく介護者のダメージは深いと思われます。
平成27年4月末現在の第1号被保険者(65歳以上の人)は3308万人、その約18%に当たる608万人(うち男性は188万人)が要支援・要介護認定を受けています。
認定者のうち施設に入居しているのは90万人(特別養護老人ホーム49万人、老健35万人、介護療養型医療施設6万人)で認定者の約15%に過ぎません。施設入居者の割合が低いのは必要性が低いわけではなく施設が少ないから! 特別養護老人ホームの入居待機者は52万人(平成25年度厚生労働省)もいるのです。
在宅介護では「老々介護」「単身高齢者」「介護離職」などの問題がすでに顕在化しています。にもかかわらず介護は「施設」から「在宅」へ変わっていくのです。
8割以上が介護に不安感をもっている
生命保険文化センターが平成25年に行った「生活保障に関する調査」によると、親などを介護する立場になった場合「不安感あり」と答えたのは82%(うち「非常に不安を感じる」29%)に上ります。不安の具体的な内容のトップは「自分の肉体的・精神的負担」(65%)です。以下「自分の時間が拘束される」(52%)、「公的介護保険だけでは不十分」(51%)、「自分の経済的負担」(50%)と続きます。介護する人を見聞きする機会や介護に関する情報が増えたからでしょうか、平成22年より不安感は減少しています。
要介護3の介護時間「ほとんど終日」が36%
では、同居している介護者の1日の介護時間はどのくらいなのでしょう。介護というと自分の時間は無いと思いがちですが、最も軽い要支援1の場合は70%が「必要な時に手を貸す程度」で済んでいます。介護度が上がり要介護3になると30%、要介護5では6%、手を貸す程度では済まない、ということです。
「ほとんど終日介護」はどうでしょうか。要支援1では5%にすぎませんが、要介護3では36%、要介護5になると56%にまでアップします。介護度が上がるにつれて介護に要する時間は増えています(以上、厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査の概況」より)。
その結果でしょうか、日本労働組合総連合会(連合)の「要介護者を介護する人の意識と実態に関する調査」(2014年)では、介護者の80%が「ストレス(非常に強いストレス26%)」を感じ、36%が「憎しみ」を感じています。また12%が「虐待がある」としています。
要介護3程度なら在宅介護は可能?
介護とまではいかなくても、身体が思うように動かない家族の家事を手伝うなど、生活のサポートが必要なケースも多い
掃除、洗濯、洗顔、着替え、食事の準備と後始末、食事の介助、買い物、服薬の手助け、散歩などが多く、これらは介護保険制度の介護予防サービスや居宅サービスの「生活援助」や「身体介護」で提供されています。さらにデイサービスやショートステイなどを組み合わせると、介護状況によっては要介護3程度ならば在宅介護は可能、と言われています。
ただ、認定度が低いと利用できるサービスや利用回数に制限があります。また利用限度額も低いので、家族以外にも友人や近隣の人などからのサポートを受ける人が少なくありません。また限度額を超える介護サービスを利用し、その分を全額自己負担する人もいます。
平日の介護は有給休暇を使わざるをえない場合も
サポートには、前述の他にゴミ出しや布団干し、入退院や通院の手助け、季節に合わせた寝具・衣類・電気製品等の入れ替え、介護保険や年金や金融機関の手続、金銭の管理などもあります。週末や仕事の行き帰りに立ち寄って対応できることも多いのでしょうが、平日に対応せざるを得ないことも少なくありません。リハビリや通院の付き添い、ケアプランの調整、認定度の変更・更新の手続き、金融機関や公的機関の手続きなどには有給休暇や半日休などで対応する人が多いようです。休暇がなくなると遅刻・早退・欠勤などで対応し、次第に転職や退職へと追い詰められていきます。
介護保険をはじめ、使えるサービスはとことん使う
在宅介護を続けるには介護保険サービスの利用が不可欠です。まずは介護保険サービスをフルに利用しましょう。不足する分は地方自治体や社会福祉協議会、シルバー人材センターの高齢者福祉サービス、ボランティアやNPOの福祉サービスなどで埋めていきます。さらに民間企業の買い物代行や配達、配食、家事・調理支援などのサービスを利用するのもいいでしょう。お金で時間とサービスを買うのです。
仕事と介護を両立できる制度・勤務形態の導入が欠かせない
それにより、肉体的・精神的ストレスや時間の拘束から少しは解放されます。長きにわたる介護では必要なことです。そのためには経済力が必要! 職場で「介護中」であることをカミングアウトし休暇やフレックスタイム、在宅勤務などを利用することへの理解を得ておくと、突然の入院などにも対応しやすくなるでしょう。介護休業制度は育児休業制度のようには普及しておらず、利用者も少ないのが現実です。しかし女性や60歳代の労働力を社会が必要としている以上、介護休業制度の充実だけでなく有給休暇積立制度、時間単位有給休暇制度など仕事と介護が両立できる制度の整備は不可欠です。多様な勤務形態の導入も待ったなしです。それまでは介護の先駆者として利用できるサービスをフルに利用して、しなやかに介護に対応していきましょう、