戦後70年に思う(2)
ここで、2012年に亡くなった「伝説のおかま」(あえてこう書きます。東郷さんをおかまと呼ばずしてなんと呼ぶのか? これはリスペクトです)東郷健さんを召喚したいと思います。東郷さんは1971年以来参院選に何度となく出馬し、政見放送で同性愛者や様々なマイノリティの社会的地位向上を訴えてきました。ゲイの間でも必ずしも歓迎されたわけではありませんでしたが(逆に政見放送がトラウマになった方も多数)、少なくともゴトウは尊敬しています。1972年に東郷健さん(と仲間たち)と寺山修司さん(と天井桟敷のみなさん)が作った『薔薇門』という伝説のアルバム(レコード)があります。ゴトウは1997年に(日本で最も古くからドラァグクイーンとして活躍してきた偉人である)シモーヌ深雪さんが『薔薇門』全曲ライブを「曼荼羅」で開催したのを聴きに行ったのが初体験でした。冒頭を飾る、東郷さんの面目躍如たる「おかまの政治演説」は、今でも音源として聴くことができるわけですが、実は、今こそこの演説に耳を傾けるべき時であり、今ほどこの演説が説得力をもって胸を打つ時はないのではないか、と思う次第です。
(前略)
大方の道徳的な保守大衆は 自分でも知らずうちに
独占主義に奉仕してしもうとんのや
自分の墓を掘っとんのとちがうやろか…
考えてもみよ… 明治百年来 二十年ごとに戦争をし
我々大衆を 大量殺してきたんは いったい誰やと思う
それは 今の天皇制を上手く利用して
私欲と 物欲を肥やしてきやがった 資本家どもと違うやろか…
あいつらが 己の財産を守らんがために
国家権力をがちっとかためやがって
名もない 若いもんを 戦争に送り出して
殺してしもうたんや… もったいない話や…
(中略)
毛沢東も言うとんのやで 「銃口が革命を招く…」
みなさんの銃口はあっとりまっか?
磨いとってか? 突撃用意やで!
この握り心地のいい銃が 資本家たちの
錆びついて立(勃)たなくなった銃に代わる時が
やってきたんや
おかまの私が先頭に立ったる!
低賃金の 無名の 過重労働の 仲間外れのみなさん!
ズボンを下ろして 銃を構えておくれ!
GAY REVOLUTION(ゲイ・レボリューション)です!
さあ 続いておくれ…
なんて破廉恥な!とか、下ネタじゃん!と思う方もいらっしゃるかもしれませんね…(すみません)。東郷さんはこういう名言も残しています。「人と人が愛し合う行為のどこが、ワイセツなんや」「おかまのどこが悪い。おかまのどこが恥ずかしい。男が男を愛してなぜ悪い。女が女を愛してなぜ悪い。恥ずかしいのは自分に嘘をついて生きることや。恥ずかしいのは人を愛されへんということや」「せめて、自らに恥じなく眠りたい」
ゴトウは2000年からG.O.Revolutionという男装と女装の中間みたいなパフォーマーをやっていたのですが、東郷さんの「ゲイ・レボリューションです!」に影響を受けていたことは否めません。イラク戦争が始まった頃は、二丁目で「武装より女装! 兵器より性器! ボーイジョージも歌っていたよ、戦争ヘンタイ!」などとラップで訴えるパフォーマンスをしていました(今はそういうノリを許してくれる懐の深いイベントがなくなってしまったので、私の出番はありません…)
それはさておき、今の日本のゲイシーン、あるいは、世界のゲイシーンを見渡してみても、歴史的に見ても、やっぱりゲイピープルって「LOVE&PEACE」の象徴だよねって思います。これはもう、確信です。戦争を起こす人々が悪魔だとすれば、ゲイって天使とか妖精みたいなものじゃないでしょうか(だからこそ、権力者に憎まれてきたのです)
朝方のShangri-Laとか、ぜひ体験していただきたいのですが、プールサイドで海風に吹かれながら、超ハッピーな音楽がかかってて、ちょっとメイクが崩れかけたドラァグクイーンとかがステージで踊ってて、みんなキラキラの笑顔で楽しんでる様は(あるいは友達どうしハグしたり、恋人とキスしたりしている様は)本当に素敵です。これが平和というものです。戦争から最も遠い光景です。
二丁目でも、暴力沙汰って全くと言っていいほどありません。歌とかダンスとかアイドルとかが大好きで、友達どうしで集まってピーチクパーチクしゃべったり、ゲイバーでカラオケ歌って盛り上がったり、プールでキャーキャーはしゃいだり…書いてて、なんだか涙が出てきましたが、誰一人傷つけず、何も強制したり奪ったり犯したりせず、たとえ自分がつらい時でも、友達と笑顔で楽しく過ごし、愛を交わし合っているのです。戦争から最も遠い精神です。
この8月15日、二丁目のとあるお店(とってもセクシーで、ある意味、ゲイの楽園のようなお店)では、平和を祈願し、「みんなで愛し合おうぜ」という趣旨のパーティが、入場無料で開かれます。素晴らしいですよね? ゴトウはそんな二丁目を愛しています。そして、今の二丁目を盛り上げている(あるいはこれから二丁目に来る)平成生まれのかわい子ちゃんたちが戦場に駆り出される日が来ないことを、心から祈っています。