ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

Star Talk Vol.27 彩吹真央、虚構の中の真実を求めて(3ページ目)

『ロコへのバラード』の自立心に富んだ女性の役から『道化の瞳』の愛情深い母親役まで、様々な役柄を魅力的に演じる彩吹真央さん。和やかなオーラが素敵な彼女ですが、最新作の『End of the Rainbow』では薬物依存に苦しんだ映画スター、ジュディ・ガーランドを演じます。彩吹さん史上最も壮絶なこの役、手ごたえはいかがでしょうか?*観劇レポートを掲載しました!*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

“大好きな宝塚”で
培った「忍耐力」

『サンセット大通り』撮影:渡部孝弘

『サンセット大通り』撮影:渡部孝弘

――彩吹さんは小学6年の頃から宝塚を目指していたそうですね。

「目指したのはもっと小さいころからだと思います。母がファンだったのでお腹の中に居た頃にも観ていたそうですし、3歳ぐらいから母のお膝の上で見ていました。4人きょうだいの末っ子で、姉二人も母は連れていったけれど、私だけが興味を持ったそうです。最初はおそらく娘役さんのきれいなドレスや大階段といったきらびやかな要素と、歌うのが好きだったのがうまく合致したのではないでしょうか。自然に自分も舞台に立ちたいと思うようになって、小学6年の時から宝塚子供アテネというところに通って、歌とバレエと日本舞踊を週に1回習っていました」

――3回目の受験で合格されたのですね。

「最大4回受けられるんです。中学卒業から高1終了、高2終了、高校卒業まで。私は中学卒業から高校1年終了まで2回受けてダメだったので、自分から背を向けないとこの夢はずっと追い続けてしまうな、と思って1年間宝塚も観ず、敬遠していました。でもそれは無理やりの敬遠だったし、宝塚受験を一緒に頑張って合格した友達の初舞台を観て、やっぱり最後のチャンスは受けようと決意したら、その一年の間、「宝塚グラフ」などを私の目に触れないようにして読んでいた母が喜んでくれまして。そして合格した時の母の喜ぶ顔は、一生忘れられないですね。親孝行、ですか?どうでしょう。そう言ってくれてますけれどね」

――みごと合格された宝塚音楽学校。入ってみて予想と同じ世界でしたか?

「はい、全然かけ離れてなかったです。苦手な授業はありましたけどね。関西人なので標準語を喋ったことがなかったのが、音楽学校の演劇の授業で初めて標準語を喋ったんですよ。標準語が照れくさくて、演劇の授業が大っ嫌いで(笑)。初めての試験では赤点をとった記憶があります。でも、どんなに大変なことあってもそれが宝塚だと覚悟していましたし、舞台に立つのが目標だったから嫌じゃなかったですね。40人をまとめる委員とかになると、自分のことよりいろいろな揉めごとに対処したり、本科生になったら予科生の面倒を見たりなどありましたけど、その経験があるから今の自分があると思います」
『DRAMATICA/ROMANTICA』写真提供:東宝演劇部

『DRAMATICA/ROMANTICA』写真提供:東宝演劇部

――歌劇団に入ってからは組替えを2回経験されていますね。組が替わるというのはどんな感覚なのでしょうか?

「いいことばかりですね。友達が増えます! 嬉しかったのは、雪組から花組に行ったときに仲間も、目標にしたい上級生も増えましたし、もう一つ周りが見えるようになったんです。もといた組の人たちが私の舞台を観に来てくれましたし。

上級生になってゆくと下級生も増えるので、面倒を見るというか、こここうしたほうがいいんじゃない?という機会も増えました。やっぱり慕ってくれる子にはよくなってもらいたいと思うからアドバイスしたり。上級生の方からもアドバイスをいただけましたし、いいことばかりでしたね」

――宝塚で得たもので、一番大きかったのは?

「忍耐力。確固たるもののためなら他のものは犠牲にしてでも頑張れる、という忍耐力を学んだかな。もとをただせば、何のために宝塚に入ったの?ということかもしれません。宝塚の生徒たちは揺れ動く少女時代なので(笑)、気持ちがダウンしたりすることもあります。そういう下級生を見ると、私は「やりたくなかったらやめちゃえば。なんのために入ったの?宝塚の舞台に立ちたいから入ったんでしょ。だったらやろうよ」と声をかけるようにしていましたが、お客様のために舞台を作れるのであれば、そのためには忍耐、鍛錬していこう、そういう、舞台に向かうための原動力みたいなのを培えたかなと思います」
『DRAMATICA/ROMANTICA』写真提供:東宝演劇部

『DRAMATICA/ROMANTICA』写真提供:東宝演劇部

――お話をうかがっていると、彩吹さん、お姉さん気質なのかも…。

「私は末っ子なので生来は違うと思うんですが、そうなってきてますね。私は、宝塚の良さというのは、家族のような集合体が一致団結して夢と感動をお伝えすることだと思うのですが、組がそうなっていないと、おのずとまとまっていない舞台をお見せすることになってしまう。宝塚に限らず、舞台って裸の自分が立ってるくらい、観ている人にはわかってしまう恐ろしい場所です。宝塚の良さは生徒たちが一致団結して一糸乱れぬ踊りをして、それが感動に繋がり、最後の大階段のフィナーレに繋がってゆくものなので、私は組のことをずっと考えてました。だから退団してからふと、“あ、ここは“組”じゃない…”って。(笑) 自分のことだけ考えてても良かったのかもしれないけれど、自分は宝塚の家族のような“組”というシステムが好きだったし、花組と雪組のファンだったのでそこに配属されたのも嬉しかったし、ファンのような心理も持っていたので、お客様に何をお伝えしたいか、に重きを置いて行動していたかもしれません」

*次頁では宝塚退団後の諸役や、今後のビジョンをうかがいました!

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