関節は“玉乗り”?
「骨の絵を描いてください」と言われたら、イメージするのはどんな形ですか?おそらく多くの方が細長い棒の両端がお尻のようになっている形を描くのではないでしょうか。関節は骨と骨の接合部ですから、実際は片方が丸型でもう一方は丸を包むようなお椀型をしています。つまり、サーカスの玉乗りのように、私たちは常にボールの上に乗っかっている状態にあるいうことです。
骨盤と大腿骨(股関節)
関節はたくさん動ける自由度と安定する一点を両方獲得するために、丸型とお椀型の形状になったのでしょう。こうすることで小さな力でも安定し、動くこともできます。ちなみに軟骨の摩擦係数は限りなくゼロに近いのです。
多くの関節は実は動くというよりは滑って転がっているのです。安定しているときはバランスよく玉乗りをしている状態で、動くときは転がっています。その時筋肉は転がりすぎないように制動する働きをします。特に脚の場合、地面に脚がついているときはほとんどがこの制動の働き(遠心性収縮)です。
このように関節は玉乗り状態だと思うと、関節のイメージが変わりませんか?関節を動かすのではなく滑らす。また、関節の安定する場所は玉乗りのように重心が玉の正中に来てバランスをとっている状態です。
きちんと“玉乗り”出来ないと、特定の部位に負担がかかる
骨盤が後傾した姿勢
中年の方の下っ腹が出るという悩みもほとんどがこの骨盤の後傾つまりは骨盤の滑り落ちです。的確な位置は、玉乗りですから骨盤が骨頭の真上に位置するところです。
良い姿勢を取ると、重力に負けない
関節は丸とお椀であるといってきましたが、このことが実は体を重力に対して起こす時の鍵なのです。玉乗りはバランスをとっている状態ですが、別の視点では、重力の方向と玉と地面が一直線上にある状態といえます。ということは重力の力に対してしっかりと反作用が起こせます。これが、姿勢がいい直立状態なのです。伸びた若々しい姿勢
正しい姿勢とは、関節が玉乗りでバランスが取れて重力に抗して伸びることができている姿勢なのです。
手の関節のポイントは「パンチ」
腕の関節も見てみましょう。手の関節のポイントはパンチです。パンチする時には身体の中心(体幹)から肩甲骨、肩関節、肘関節、手関節が一直線で玉乗りのバランスが取れている必要があります。これがずれると力が伝わりません。小さな子供は手の骨がほとんど軟骨なので、この位置が探しづらくうまくパンチができないのです。試しに、パンチのように手を伸ばして、近くの人に手を押してもらって下さい。その状態から手首の位置を安定する位置から少しだけずらしてみて下さい。すると途端に押す力が抜けてしまうのが分かるでしょう。力の伝達が途切れてしまうのです。ちなみに、武道の関節技はこのメカニズムを上手に使っています。
このように、丸い形状からなる関節はある一点のみでバランスをとっているのです。この絶妙なバランスを制御しているのが、単関節筋という関節に一番近いところ(深層)にある筋で、多くはインナーマッスルとも言われているものです。
背骨はモーター
ここまで多くの関節は丸とお椀の形をしていると説明してきました。では、丸の形状ではない関節とはどの部位でしょうか?代表的なのは脊柱です。脊柱は椎間関節という左右二対の関節で接続し動いています。この関節は丸型ではなく平面型です。合掌した手を滑らせるのと同じような感じで動きます。ですから脊柱は丸型のようにバランスを取る必要はありません。つまり玉乗りではありません。なぜなら、脚や腕が玉乗りで力を伝える役割とすると、主に脊柱は力を生み出すところだからです。
脊柱の力の伝達と抗重力はS字弯曲を使っています。真っ直ぐではなく、四肢とは違う戦略を取っています。
魚も両生類も、爬虫類もさらには哺乳類も多くは背骨を使って移動(ロコモーション)します。魚は横に(側屈)脊柱を揺らしていますね。哺乳類は前後(屈伸)です。ちなみに人間は捻り(回旋)です。
以下に、全身の関節の役割をまとめます。
「体幹の関節は力を生み出し、四肢の丸い関節はその中枢の力を繋げて末梢に伝える」
最近は体幹トレーニングがブームですが、関節の役割から見てもやはり体幹は大切なのです。ただし、体幹と言っても筋力だけではなく関節の柔軟性を伴った動きが大切なのは言うまでもありません。
関節の役割から見た、体の動作時のポイントを下記にまとめておきます。
- 関節の中心に乗るようにする(姿勢)
- 関節は滑らして使う
- 身体の中心(体幹)から動く
- 腕や脚(四肢)は力を伝えるように中心を探す