ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

良知真次、七色の表現者【気になる新星vol.13】(2ページ目)

日中合作『陰陽師』や『ライムライト』等、多彩な作品で存在感を放つ良知真次さん。近く『宝塚BOYS』『ドリアン・グレイの肖像』に出演、着実にキャリアを築いている彼の原動力、そして目標とは? 2018年&2015年のインタビューをお届けします!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


【2015年初夏・良知真次さんインタビュー】
良知真次 83年東京都出身。15歳からジャニーズJr.として活躍した後、04年から劇団四季に所属。『コーラスライン』マーク役などを務めた後、東宝芸能に所属。『屋根の上のヴァイオリン弾き』『ALTAR BOYZ』『ロミオ&ジュリエット』『スリル・ミー』等に出演する傍ら、ライブ活動、振付でも活躍している。(C)Marino Matsushima

良知真次 83年東京都出身。15歳からジャニーズJr.として活躍した後、04年から劇団四季に所属。『コーラスライン』マーク役などを務めた後、東宝芸能に所属。『屋根の上のヴァイオリン弾き』『ALTAR BOYZ』『ロミオ&ジュリエット』『スリル・ミー』等に出演する傍ら、ライブ活動、振付でも活躍している。(C)Marino Matsushima


落ちぶれた老芸人が、自殺を図ったバレリーナの命を救う。人生を儚んだ彼女を励まし続けるうち、二人の間には強い絆が育まれるが、老いを自覚する芸人は彼女の愛を拒絶。大スターとなっても変わらぬ彼女の思いにようやく彼が応えようとするとき、残酷な運命が待っていた…。

石丸幹二さんがこよなく愛する、チャップリン晩年の代表作『ライムライト』。映画のストーリーに、チャップリンが残した本作の前日談ともいえる小説『フットライト』のエピソードを加え、今回世界初の舞台化が実現します。

この物語で、ヒロインのテリーがバレリーナになる以前、文房具店で働いていたころに思いを寄せていた貧しい作曲家ネヴィルを演じるのが、良知真次さん。最近では『シャーロックホームズ2~ブラッディ・ゲーム』『ちぬの誓い』『ブラック メリー・ポピンズ』等での情熱的な演技が印象的な彼ですが、今回は打って変わり、優しく淡い風合いの作品世界、役柄に難しさを感じているのだとか。どんな舞台、またどんなネヴィルが観られそうでしょうか。
 

名曲「エターナリー」のメロディにのせて描かれる
優しく、淡い風合いの愛の物語で
純粋な作曲家役に挑戦

『ライムライト』

『ライムライト』

――原作映画や台本をご覧になっての第一印象からお聞かせください。

「原作の映画はオーソドックスな名作ですよね。今まで舞台化されていなかったのが不思議なくらいですが、チャップリンという方が主演していたことで、彼の存在感が大きすぎて舞台化しづらかったのかもしれないですね。

今回の舞台の台本は、初めて読んだ時に映画とはまったく違った印象を受けました。映画の世界をぐっと濃縮した感じではあるのですが、独特の優しい世界観があって、これをどう作るのだろう、と。実際、稽古に入ってみて、“映画と同じようにしよう”という話は全くでてきませんし、オリジナル作品を創るような感覚で皆さん作っていらっしゃると感じます。感情の周波数の波形があまり大きくないというか、起伏が穏やかな中でストーリーがどんどん膨らんでいくようなイメージです」

――そのなかでネヴィルという役をどう作っていらっしゃるのですか?

「老齢の芸人カルヴェロとの対比ということもあって今回は僕の実年齢よりずっと若い青年役ですが、難しいなあと思いながら作っています。というのは、原作の映画では、テリーが昔の淡い恋を思い出すシーンで、文房具店に通ってくるネヴィルが登場するのですが、今回の舞台ではその場面がないんですね。2幕に登場した時、テリーの記憶の中に居たネヴィルとしてうまくイメージ付けができるか、というのが一つの課題です。

また、老芸人のカルヴェロは芸のこと、テリーはバレエのことで葛藤していますが、ネヴィルの葛藤は描かれていません。そんな彼が最終的にカルヴェロとテリーの愛を応援していくような形に、作品の抽象的な空気を活かしながら演じていかなければなりません。ネヴィルはもともとすべての面で優しい人だと思いますが、それがテリーを思うことでさらに優しさの方向性が増えていく、ということなのかなと想像しながら役を作っています」

――お話をうかがっていて、力強いタッチの油絵ではなく、点描であったり、淡い日本画のような世界が想像できます。

「その通りかと思います。“淡い憧れ”という歌詞もあって、まさしくそういう世界です。僕はわりと感情をあらわしたりするタイプですが、そうじゃなくて一歩引いたところで、優しく言葉をかけるんですね。もしかしたら、(物語の舞台である)20世紀初頭のロンドンでは、そういう人が多かったのかもしれないですね」

*『ライムライト』のお話、次頁でまだまだ続きます!
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