定評あるダンスと柔軟な歌唱力を武器に、史上初・日中合作ミュージカル『陰陽師』からダークな異色作『ブラック メリーポピンズ』まで、様々な作品で活躍する良知真次さん。今年は夏から初秋にかけて、終戦後の知られざる青春模様を描く『宝塚BOYS』、耽美的な『ドリアン・グレイの肖像』と、タイプの異なる二作品に出演、注目を集めています。この記事では2018年初夏に行った最新インタビュー、そして2015年、『ライムライト』稽古中のインタビューを掲載。一歩一歩、着実にキャリアを築いていらっしゃる良知さんの率直な言葉の数々、お楽しみください!

《目次》
・2018年初夏 良知真次さんインタビュー(本頁)
良知真次 83年東京都出身。15歳からジャニーズJr.として活躍した後、04年から劇団四季に所属。『コーラスライン』マーク役などを務めた後、東宝芸能に所属。『屋根の上のヴァイオリン弾き』『ALTAR BOYZ』『ロミオ&ジュリエット』『スリル・ミー』等に出演する傍ら、ライブ活動、振付でも活躍している。(C)Marino Matsushima

良知真次 83年東京都出身。15歳からジャニーズJr.として活躍した後、04年から劇団四季に所属。『コーラスライン』マーク役などを務めた後、東宝芸能に所属。『屋根の上のヴァイオリン弾き』『ALTAR BOYZ』『ロミオ&あジュリエット』『スリル・ミー』等に出演する傍ら、ライブ活動、振付でも活躍している。(C)Marino Matsushima

 

2018年初夏・良知真次さん最新インタビュー】
先人たちの夢や情熱が
今の日本演劇界の活況に繋がっている、と
意識しながら『宝塚BOYS』を演じたい

 

――まずは8月に出演される『宝塚BOYS』についてうかがいます。本作は良知さんにとって、どんな作品でしょうか?

 

「ひとことで語るのはすごく難しいですね。日本で知らない人はいない、100年以上の歴史を持つ宝塚歌劇団を舞台に、(宝塚の)歴史からは見る事が出来ない事実をベースにした作品で、ハッピーエンドではない。おそらく人生で二度とやらないような気がして、前回、すべてを出し切ったので、その時の記憶はないんです。今回は新たにやるという感じなので、むしろ初めて出演するメンバーより新鮮な感覚かもしれないですね。この前、(前回公演で共演した)藤岡(正明)君と会ったら、彼は(この作品のことを)全部覚えていて、驚いたほどです。

 
『宝塚BOYS』

『宝塚BOYS』

 

この作品の特徴として、稽古に入る段階では、まだ役は決まっていません。最終的に(演出の鈴木)裕美さんが決められるのですが、そういう作品ということもあって、本読みでは全員の気持ちになって読まないといけないと思っています。いろいろ試していきたいですね」

 

――記憶が残らないくらい出し切るというのは、良知さんにとってはよくあることですか?

 
『宝塚BOYS』過去の公演より。写真提供:東宝演劇部

『宝塚BOYS』過去の公演より。写真提供:東宝演劇部

 

「僕はだいたい、いつもそうです。特技と言うくらい、ぱっと忘れますね(笑)。すべてをその一つの公演にぶつけないといけないと思っています。しっかり終えてこそ再演があるし、やるとしても、例えば1年のインターバルがあるとしたら、その間の経験を通して、自分の成長を反映させ、新たに臨むものだと思うんです。前回と同じ役になるかどうかはわからないし、共演者が変われば芝居全体も変わってくる、いい意味で輸入ミュージカルとは違う、型にはまっていない作品なので、前回とは全く異なる作品になる予感の中で、新鮮な気持ちで取り組みたいです」

 

――前回、ご出演の後、良知さんは宝塚歌劇団で振付のお仕事をされたそうですね。“宝塚”観は変わりましたか?

 

「宝塚観が変わったというより、“これは皆さん、憧れるはずだ”と感じました。近くで見ても、男役さんはかっこいいし、娘役さんは美しい。でも、一つお客様に自慢させていただくなら、僕は生徒さんたちが日々、ものすごく努力しているところを目の当たりにしたんですね。お客様は努力の結果を御覧になるわけだけど、その過程では、朝から夜10時までの、全力投球の稽古があるわけです。そこには、彼女たちに“スターになりたい、作品を良くしたい”という夢があって、それを実現することにまい進されている。それが“清く正しく美しく”という宝塚の姿勢に繋がって行くのだろうと思います。まだまだ自分の稽古姿勢は甘い、と反省したほどです(笑)」

 

――(宝塚で)驚いたことなどありましたか?

 
『宝塚BOYS』

『宝塚BOYS』

 

「やっぱり、“らしさ”の追求はすごいですね。例えば、男役さんなら、男を演じるうえでのカッコよさというものを、本物の男より追求していて、座り方、ジャケットを着た時の手の角度といったものを、一つ一つ研究されている。娘役さんだったら、スカートをどうひらひらさせて可憐さを表現するか。その後、2.5次元ミュージカルに出演する時など、宝塚で見たことを参考にさせていただいています」

 

――2.5次元や、例えばジャニーズのアイドルの方々もそれぞれにカッコよさは追求されていると思いますが。

 

「でも、女性目線ではないから、見ていて“なるほどな”と思うものがあるんですよね。最近演じた(2.5次元ミュージカルの)『陰陽師』でも、安倍晴明を演じるにあたって、原作の晴明が美しいだけに、その美しさを着物のさばき方などで表現しました」

 

――実際に男子部に在籍された方にもお会いになったのですよね。

 

「責任感が増しました。本当にその時を生きた人たちの話を、芝居という形で現代に伝えないといけない。彼らほど熱く生きてる人って、現代にはなかなかいないけれど、こういう夢をもった人たちがいたからこそ、僕らが今当たり前のように生きている、そのことを伝える事が出来たらと思います」

 

――本作では宝塚に憧れて育った上原はじめ、電気店の竹内、オーケストラメンバーだった太田川ら、個性豊かな面々が、新設された男子部で慣れないレッスンに励む日々が描かれます。当初から劇団内・観客からの風当たりが強かったにもかかわらず、皆があそこまで頑張れたのはなぜなのでしょう。

 
『宝塚BOYS』過去の公演より。写真提供:東宝演劇部

『宝塚BOYS』過去の公演より。写真提供:東宝演劇部

 

「(創始者の)小林一三先生含め、男たちの夢だったのでしょうね」

 

――冒頭、戦争の爪痕が爆音で示唆されていますが、もしかしたら彼らが戦争の傷を癒すのに、宝塚と言う“夢の世界”にすがらずにはいられなかったということもあったでしょうか。

 

「それもあるとは思います。舞台のお仕事って娯楽であって、娯楽は世の中で最も“いらない”仕事と思われているかもしれません。例えば農業は絶対的に必要だけれど、娯楽はなくても生きていけます。でも、もしここに明日死のうとしている人たちがいたとして、彼らに“もう一度生きてみよう、夢を観よう”ということが言えるのが、娯楽というもの。それは僕自身、いつも思っていて、実際に舞台とうお仕事によって救われたこともあります。

男子部のメンバーも(戦争による心の傷を)舞台によって癒されたからこそ、自分も舞台をやりたいと思ったのでしょうね。終戦後の混乱のなかで、誰もそんなことをやろうと思わないなかで敢えてやろうというのだから、ひとことで言えば変わり者の集団です。上原さんなんて、その中でも小林先生に男子部創設を提案する手紙を書いたのだから、一番の変わり者(笑)。でも彼らのような夢や希望が、今の日本の演劇界に繋がっていて、2.5次元ミュージカルが海を越えていくような活況が生まれているんだと思います。そのことは忘れたくないですよね」

 

――でも男子部の結末を考えると、切ないですね。

 

「ハッピーエンドではないので、普通なら敢えて何度も観たいような話ではないかもしれません。それにも関わらず多くの方が“もう一度観たい”と思ってくださり、上演が重ねられてきました。それはやはり、彼らがそれでも“次へ”と進んでゆくからだと思います。命をかけて取り組めば、夢はかなわなくても、その次の夢に進める。人には、その力がある。そしてそこには成長がある。“青春”と言う言葉がぴったりの作品だと思います」

 

――勇気をもらえる舞台ですね。

 
『宝塚BOYS』

『宝塚BOYS』

 

「そう思います。僕らとしては、今、各地の劇場で当たり前のように幕があいて、千穐楽を迎えている。でも、その当たり前を経験することなく、夢に砕けた人々が実際にいたことを、現代のお客様にきちんとお伝えしなければ。特に今回は2チームでの上演で、僕は“経験者”のほうのチームなので、自分たちの経験をどう生かせるかということを考えて、稽古していきたいですね」

 

そのナンバーで何が求められているか、
常に考えながら表現しています


――『宝塚BOYS』の後には、ミュージカル『ドリアン・グレイの肖像』に出演されるのですね。

 

「何年も前から構想されてきた舞台で、宝塚出身の方が何人も出演されます。内容的には『宝塚BOYS』とは全く違う作品になりそうで、お客様に“違う良知真次”を見せないといけません。2.5次元とも違う、全く違う引き出しをお見せ出来ると思います。台本はまだいただいてないので、アート寄り、もしくはエンタテインメント寄りの舞台になるかはわからないけれど、演出の荻田浩一さんとは『アルジャーノンに花束を』でもご一緒していて、すごい世界観をお見せできるんじゃないかと楽しみにしています」

 
『ドリアン・グレイの肖像』

ミュージカル『ドリアン・グレイの肖像』

 

――オスカー・ワイルドのドリアン・グレイといえば、自らの美しさに人生を狂わされてゆく究極の美青年ですが、こういった耽美的な世界は、ご自身としてはいかがですか?

 

「美しいものが嫌いな人って、なかなかいないんじゃないですか?(笑) 人であったり、心であったり、モノであったり、世の中に“美しいもの”がいろいろあるなか、ドリアンは究極の“美”だと思います。この役に取り組むまでに、いろいろな美を追求して自分の中に入れておきたいですね。稽古が始まったとき、それが表現として出てくると思うんです」

 

――良知さんと言えば振付家としても活動されているほどのダンスの名手ですが、歌い手としても魅力的です。ロングトーンの終盤でパワーがぐっと増すような歌唱をされることがありますが、これが出来る方、なかなかいらっしゃいません。

 

「僕としては他の方々がどうトレーニングしてるかお聞きしたいくらいですが(笑)、作品の中で何がその歌に求められているか、についてはよく考えます。強くぶつけることが必要なのか、切なく歌うべきかとか。

たとえば以前、『NARUTO』で強い役を演じていて、ずっとバーンと歌っているのだけど、最後に死んで、囁くように歌ったんです。そうしたらプロデューサーから“歌詞を(お客様に)届けたいから、もう少しはっきり歌ってください”と言われたんですね。僕はプロデューサーと作曲家、演出家に集まっていただいて、“こちらが切なく歌う時、お客様はそれを聞きたいと思ってくだされば前のめりになる。この人に耳を傾けたいと思うから真実って伝わるわけで、僕はそういう歌い方をしたいけれど駄目でしょうか”と話したら、演出家が“それで行こう!”と言ってくださった、ということがありましたね。そういうふうに、柔軟に歌い方を変えられるのは日本のオリジナル・ミュージカルならでは。(海外の“お手本”に倣うことなく、歌を)自分のものとして歌えるのは魅力だと感じています」

 

――さきほど、エンタテインメントというお仕事の話題が出ましたが、良知さんがその意義を意識し始めたのはいつ頃だったのでしょう?

 

「最初からそうだったのかもしれません。15歳でこの世界に入った時から、これだけたくさん人たちが集まって泣いたり笑ったりする、この仕事には何かがあると感じていました。最近はそれに加えて、この仕事は国境を簡単に超えていけるんだな、とも思います。最近出演した『陰陽師』は、日本の物語が中国でオンラインゲーム化され、それを日中合作で舞台化したものでした。日本・中国双方で上演され、大きな歴史が動いたと思うし、政治的な関係はどうあれ、文化は受け入れられていくのだな、と。おかげさまで中国でも日本でも評判が良かったし、舞台も続きがあるような終わり方だったので、また手を取り合って(続編が)作られていくといいなと思っています」

 

――その『陰陽師』を含め、良知さんは最近、2.5次元ミュージカルでも活躍されています。2.5次元世界はいかがですか?

 

「楽しさもあるけれど、一言で言うと“大変”です(笑)。むしろ海外ミュージカルのほうが楽かもしれません。というのは、日本を代表するコンテンツを舞台化するにあたっては、普通の作品より求められることが多くて、映像を含め、最新技術を取り入れてゆくと、一か月の稽古期間ではとても足りないんです。時間的なハードさもありますし、役者としては、2.5次元ミュージカルでは殺陣もやればダンスもやる。海外ミュージカルとは比べものにならないくらいやることが多いけど、だからこそ多くの方が観たくなるものが出来るのかもしれません」

 

――3年前のインタビューで、良知さんはご自身のヴィジョンとして“いろいろな色を出していきたい”とおっしゃっていましたが、その後のご活動の中で、手ごたえはいかがでしょうか?

 

「目標はいい意味で、変わっていないと思います。ということは、きっと僕は一つの色に染まっていないということだと思うんですね。すごくクールな役もやれば、気が狂ったような役も、おちゃらけた役も、病気の役もやってきている。いろいろな役をやるということ、“七色であること”が、自分のカラーになってきているのかもしれません。実際、もし自分はこう、と色を決めていたら、2.5次元出身でない僕が2.5次元ミュージカルに出ることはなかったと思うんですね。これからも、この目標は変えずにやっていきたいです」

 

*公演情報*

宝塚BOYS8419日=東京芸術劇場プレイハウス、その後名古屋、久留米、大阪で上演。

ミュージカル『ドリアン・グレイの肖像92130日=博品館劇場、その後大阪で上演


*次頁で、2015年に行った良知さんへのインタビュー、最終頁で『ライムライト』観劇レポートを掲載しています!