演歌・歌謡曲/昭和の名曲コラム

ザ・ワイルドワンズ『想い出の渚』

2015年4月20日に亡くなったミュージシャン、プロデューサーの加瀬邦彦さん。彼がワイルドワンズ時代に手がけた名曲『想い出の渚』を振り返る"昭和の名曲コラム"第四弾。

中将 タカノリ

執筆者:中将 タカノリ

演歌・歌謡曲ガイド


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突然の訃報だった。
2015年4月20日、自宅で亡くなった加瀬邦彦さん。

グループサウンズの雄、ザ・ワイルドワンズのリーダーで、1970年代以降も沢田研二さんらのプロデューサーとして日本の音楽シーンに大きな影響を与えた人物だ。

昨年から体調を崩して活動休止されていたことは知っていたが、まさか自ら死を決断するほど重い症状だとは思ってもみなかった。

加瀬さんと言えばワイルドワンズ期のヒット曲『想い出の渚』を思い浮かべる人が多いだろう。

十二弦ギターの美しい響き、重厚なコーラスワーク……加山雄三のスタイルを踏襲して進化させたほがらかな湘南サウンドは多くの人の心をとらえ50万枚の大ヒット。グループサウンズブームの先鞭をつけた。

僕がこの曲を生で聴くことができたのは一度。2011年、ワイルドワンズと沢田研二さんのユニット、ジュリーwithザ・ワイルドワンズの全国ツアーでのことだ。

躍動的でパワフルなパフォーマンス、古臭さのない清潔感のあるコスチューム、各メンバーの個性の引き出し方。全員が60歳オーバー、加瀬さんに至っては70歳近いということを忘れるほどの

「さすが加瀬邦彦プロデュース」

と思えるクオリティーの高い素晴らしいコンサートだった。
『想い出の渚』が披露されたのは演目の後半にさしかかったあたりだったと記憶しているが、あの特徴的なリードギターのイントロは、すでに盛り上がりきったように見えた観客をさらに湧き立たせ、一気に60年代の湘南ワールドに引き込んだ。

本人曰く

”『君といつまでも』(加山雄三)にビートルズのリズムを入れて、若さと南っぽいものを入れた”

ということだが、こういう発想は安直そうでなかなか凡百のミュージシャンにできることではない。『想い出の渚』は当時グループサウンズに興味のなかった人でも知っていて口ずさめる普遍的な名曲となり現在に受け継がれている。そう言えば僕がお手伝いした2013年のザ・リンド&リンダース再結成ライブでも”グループサウンズヒットメドレー”の一曲として『想い出の渚』をセレクトしてたっけ。

僕は加瀬さんとは直接の面識は無かったが、オフィシャルブログで垣間見えるお人柄には好感を持っていたし、なにより音楽業界の偉人として尊敬していたので、いつかお話をうかがいに行けたらなと漠然と思っていた。その思いはついにかなわなかったが、せめてこの場を借りて追悼の意を表したいと思う。

「加瀬さん、素晴らしい音楽をありがとうございました」

7月から始まる沢田研二さんのツアーでは加瀬ナンバーをじっくり堪能させていただきたい。
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