睡眠時無呼吸症候群と交通事故
安全に自動車を運転するためには、眠気のコントロールが大切です
これまでの飲酒や薬物使用に加えて病気の影響でも、正常な運転ができなくなる恐れがある状態で、自動車を運転して人を死傷させると、最高で15年の懲役が科されることになりました。
この「病気」には睡眠時無呼吸症候群など、重度の眠気を呈する睡眠障害も含まれます。
アメリカでは1980年代から、睡眠時無呼吸症候群の患者さんが自動車を運転したとき、交通事故を起こすリスクが高いことが、問題視されてきました。アメリカは肥満した人が多く、都市部を離れると自動車なしでは生活できない国です。そのため、睡眠時無呼吸症候群と運転事故に関して、多くの研究が行われています。
日本でも最近、睡眠時無呼吸症候群の患者さんが増えています。疫学調査によると、日本には300万人以上もの患者さんがいるといわれ、睡眠時無呼吸症候群と交通事故の問題がクローズアップされてきました。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんが起こす事故は、事故直前のハンドルやブレーキの操作がないため、重症度が高くなる傾向があります。
どんな人が事故を起こしやすいのか?
日中の眠気が強い人は、早めに睡眠専門の医療機関を受診しましょう
睡眠時無呼吸症候群の重症度は、睡眠専門の医療機関で「終夜睡眠ポリグラフ検査」を行い、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)で判断されます。AHIが40回/時以上の人は、事故を起こすリスクが高くなっています。
日中の眠気の強さは、エップワース眠気尺度テスト(ESS)で判定されます。ESSが16点以上の人も、運転事故を起こしやすい状態にあります。
重度の睡眠時無呼吸症候群の患者さんの中には、日中の眠気を感じにくくなっている人がいます。このような人が自動車を運転すると、自分では気づかないうちに眠ってしまい、大きな事故を起こす危険性があるので、注意が必要です。
医療機関で睡眠時無呼吸症候群の診断を受けていない人の中にも、リスクが高い人たちがいます。一般ドライバーを対象としたある研究によると、毎晩イビキをかいている人や、家人により睡眠中の呼吸停止を指摘されている人は、そうでない人に比べて過去5年間の事故の経験が明らかに多い、という結果が出ています。
次のページで、居眠りによる交通事故を防ぐための対策法を見ていきましょう。