ピアノの鍵盤の色は白黒、という規格はない
あまりに当たり前すぎて、気にも留めていないことが世の中にはたくさんありますね。たとえばピアノの鍵盤の色。ピアノを弾かない人でも白黒だということは知っていると思いますが、「なぜ白黒なのか?」と質問されて答えられる人は少ないのではないでしょうか。実は、ピアノの鍵盤の色に関して世界的に統一された規格はありません。それにもかかわらず白黒で統一されているのには、鍵盤の『材質』が大きく関わっていると思われます。
ピアノの鍵盤に最も適した材質は「象牙」と「黒檀(こくたん)」
ピアノの前身であるチェンバロやクラヴィコードが作り出されたバロック時代には、鍵盤の白い部分には象牙、黒い部分には黒檀(こくたん)が使われるのが主流でした。その理由は、材質が鍵盤にもっとも適していたから。象牙は高級感があるだけでなく、汗を吸収し指がすべらない、またどのような温度や湿度にも適応して肌触りがいいという特徴があります。また黒檀は、緻密で堅く耐久性に優れています。
ピアノの鍵盤の白黒が逆転した理由とは?
鍵盤に適した材質のものがたまたま白と黒だったため、それが定着しそのままピアノの鍵盤にも使われるようになったようです。しかしながら、白と黒の位置関係はモーツァルトの時代まで現在のものとは逆のものも多く存在していました。その理由は、高価で手に入りにくい象牙を面積の狭い方に使うほうが合理的だったため。また、面積の広い部分が黒い方が貴婦人の指が白く浮かび上がりきれいに見えるからなど諸説あります。 18世紀後半になると、ピアノは富裕層の富の証し、また美術品としての価値も兼ね備えるようになり、高価な象牙を面積の広い方、つまり現在のピアノの白鍵の部分に使うようになり、そのままそのスタイルがピアノの鍵盤の配色として定着したのです。
ちなみに、現在でも象牙と黒檀の鍵盤はありますが、どちらも希少資源であり、特に象牙はワシントン条約により使用が難しくなっているので、一般的にはプラスチック系の素材が使われています。
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