ハノン教則本とは

ピアノ学習者なら一度は弾いたり聞いたりしたことがある「ハノン教則本」。19世紀前半にフランスの作曲家ハノンが書いたフィンガートレーニングの本で、同じ音型をひたすら繰り返す内容については「ピアノで一番退屈な練習」と否定的な意見もありますが、単調な練習だからこそ気がつくことや問題点を直しやすいというメリットもあるのです。

肝心なのは、ハノンが意図した練習のポイントを正しく理解し、効果的な練習方法で取り組むこと!今回はハノンの活用法をご紹介します。
 

ハノン教則本の長所と短所を理解して活用する

『5本の指をみな平均して訓練すれば、ピアノのために書かれた曲は何でも弾くことが可能になるはず』これはハノン自身が教本の最初に記した言葉です。出版された当時は、各国で大反響を呼び賞賛を受け、1878年の世界博覧会では銀メダルを受賞されたハノンの教本。日本でもひと昔前まではピアノのレッスンといえばハノンは欠かせない教材でしたが、その内容と効果については大きく意見が分かれるところ。ハノン教本の長所と短所をまとめてみました。

■ハノン教本の長所
  1. まんべんなく10本の指を独立して動かす練習になる
  2. 鍵盤の感覚(間隔)が身に付く
  3. パターンに慣れて余裕が出てくると脱力することを意識して練習できる
  4. 一定のテンポで常に指を動かすことで持久力がつく
  5. リズム、音量、テンポなど変化を付け加えることによって多様な練習ができる

■ハノン教本の短所
  1. 音階の練習以外は白鍵しか使わない
  2. 同じパターンの繰り返しなので単調で機械的
  3. 間違った方法で練習し続けると、手や腕を痛める危険がある

■ハノンの短所は考え方次第で長所になる!
ハノンの練習曲には確かに短所もありますが、たとえば「白鍵しか使わない」というネガな部分は、ハ長調から転調させれば黒鍵も使う練習にかえられます。また「単調で機械的な練習」は、もともとハノンは音楽の表現の練習を目的としたわけではなく、あくまで指を鍛えることを目的とした教本を作ったと割り切れば納得できるでしょう。

十分脱力出来ていなかったり、ただスピードを上げて弾き飛ばすという練習を続けていれば手を痛めるのも、ハノンに限ったことではないと考えれば、短所より長所のほうが勝り、上手に活用することで長所に挙げた効果が十分期待できる教材といえます。
ハノン1番の楽譜抜粋

「ハノン教本」1番より

 

ハノンの効果的な練習方法

どの出版社のハノン教本にも、練習の際に役立つリズムやイントネーションの変奏パターンが載っていますが、ここではガイド一押しの練習方法を3つご紹介します。

■アクセントをつける箇所を移動させていく
ハノンを弾いていて、動かしにくい指があったり、音の粒がそろっていない、また時々タイミングがずれてしまう場合は、10本の指が独立してコントロールできていないことが原因だと考えられます。

どの指に問題があるのか見つけるために、アクセントを下記のように1音ずつ移動させて弾いてみましょう。アクセントがつけられなかったり弾きづらく感じたら、アクセントをつけようとしている指の打鍵がうまくコントロールできていないということ。違和感を感じず指の動きや音の強さをコントロールして弾けるようになるまで、片手ずつゆっくり練習しましょう。
 
練習パターンの例

アクセントをつける箇所を移動させることによって、5本の指に独立性をもたせる


■右手と左手の音量を変える
通常、ハノンを弾く時には比較的はっきりした大きな音量で練習すると思いますが、右手をフォルテ(大きく)、左手はピアノ(小さく)で、またはその逆に右手はピアノ、左手はフォルテで弾くというように、右手と左手の音量に極端な差をつけて弾くと、片手ずつ独立して音量をコントロールする良い練習になります。この時、小さい音がかすれたり抜けてしまわないこと、そして弾いているうちに音量の差が小さくなってこないように気をつけましょう。

■目を閉じて弾く
同じパターンを繰り返すことが特徴のハノンの練習。その大きなメリットは、鍵盤の感覚(間隔)が身に付くということ。慣れてきて手と楽譜を見なくても弾けるようになったら、思い切って目を閉じて弾いてみましょう。手が鍵盤の感覚(間隔)を覚えていれば、そこそこ間違えずに弾けるはず。もし、頻繁に間違えてしまうようなら、もう一度鍵盤を見ながら指を広げる間隔を確認し、反復練習を重ねることで鍵盤の距離感を覚えていきましょう。
 

ハノンを練習する時に気をつけたいこと

前述したように、同じパターンを繰り返して弾くスタイルが特徴のハノンの教本は、正しく使えば効果的ですが、誤った方法で繰り返し弾き続けると、悪い癖がついたり体を痛めたりするこわい面もあります。練習する時には以下の点に気をつけて弾くようにしましょう。
 
  1. 脱力はできているか?手首はかたまっていないか?肩は上がっていないか?
  2. ひとつひとつの音の大きさはそろっているか?
  3. 小さい音量でも全部の音が安定して鳴っているか?
  4. 速く弾ければいいというものではない!テンポを上げることを第一目標にしない
  5. 楽譜に書かれた指使いを守る
  6. 疲れたらやめる(根性弾きしない!)

「ピアノで一番退屈な練習」も、このようにポイントをおさえて取り組むことによって、効率よくピアノ演奏に必要な独立した指の動きを身に着けていくことができます。練習をする時のウォーミングアップに取り入れてみてはいかがでしょうか?
 
ハノンの活用法をご紹介してきましたが、ハノンのような単調な練習は得手、不得手がはっきり分かれるところ。誰にとっても効果的というわけではありません。大切なのは、同じことの繰り返しを苦痛に感じずそれなりに楽しめるかどうかです。苦手意識が高い場合は、無理にハノンを使わず、自分が楽しめる教材で指を動かす練習をしていきましょう。

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