年金/共済年金の仕組み

公務員の年金一元化で得する人、損する人

平成27年10月から、共済年金と厚生年金が一本化されます。この「年金一元化」で得する人と損する人が発生します。具体的には、在職老齢年金制度や加給年金でお得になる人や損をする人が出ます。ただ、本質的には損得ではなく「不公平」が「公平」になるということです。

和田 雅彦

執筆者:和田 雅彦

年金ガイド

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年金一元化で厚生年金と共済年金の「格差」は解消する?

平成27年10月から2階部分の年金(被用者年金)が厚生年金に一元化されます。一元化によって、自分の受け取る年金に影響を受ける方もいるでしょう。「得する人と損する人」はどんな人?

「年金一元化」に関する記事第1弾はこちら→「公務員の年金優遇がなくなる!? 年金一元化とは

得する人、損する人が分かれる「在職老齢年金制度」

年金をもらいながら働く際に、年金額と給与額の合計により年金の全部または一部がカットされる「在職老齢年金制度」。この制度も一元化で影響が出ます。具体的にみてみましょう。

●ケース1

Aさん:老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金に加入→在職老齢年金が適用(年金のカットあり
Bさん:老齢厚生年金を受け取りながら共済年金に加入→在職老齢年金は適用されず(年金のカットなし

これまで、老齢厚生年金を受け取っている人が共済年金に加入しても、年金カットがないため「お得」でした。しかし厚生年金に統合されることにより、Bさんは厚生年金に加入することになります。そのため、在職老齢年金が適用されてしまいます。このケースで、Bさんは残念ながら「損する人」になります。

●ケース2


Cさん:退職共済年金を受け取りながら共済年金に加入→「低」在老(※1)が適用される
Dさん:退職共済年金を受け取りながら厚生年金(私学共済)に加入→「高」在老(※2)が適用される

(※1)低在老 年金月額と給与(年収の12分の1)の合計が28万円を超えると年金が全部または一部停止。
(※2)高在老 年金月額と給与(年収の12分の1)の合計が47万円(平成27年度)を超えると年金が全部または一部停止。

47万円までカットされないDさんは、低在老が適用されるCさんよりも「お得」だったわけです。しかし厚生年金に統合されることにより、CさんもDさんも65歳未満は「低在老」が、65歳以上は「高在老」が適用されることになります。

統合によりCさんは「お得」になり、Dさんは「損」になることになります。

※なお、現在の厚生年金加入者(私学共済から支給される退職共済年金を受けながら私学共済に加入する人も含む)については、65歳未満は「低」在老、65歳以上は「高」在老が適用されています。また、「損」となるケースについては、激変緩和措置が設けられています。

加給年金についても「得する人」がいる  

働きながら年金を受け取る際に全部または一部がカットになるのは、厚生年金は老齢年金だけだが、共済年金は障害年金(障害共済年金)も対象だった。一元化により障害年金(障害共済年金)の支給停止はなくなる

働きながら年金を受け取る際に全部または一部がカットになるのは、厚生年金は老齢年金だけだが、共済年金は障害年金(障害共済年金)も対象だった。一元化により障害年金(障害共済年金)の支給停止はなくなる

さて、在職老齢年金以外でも「お得になる人」と「損をする人」がいます。

加給年金とは、65歳未満の配偶者や18歳未満の子(一定の障害のある子は20歳)がいる場合に加算される年金。その要件の一つに「加入期間が原則20年以上」というものがあります。この20年のカウント方法は「1つの制度で」原則20年以上となっています。

例えば、今まで共済年金に10年、厚生年金に10年加入していた場合、合計は20年ありますが、1つの制度としては20年以上ないため、加給年金の対象となりませんでした。

しかし、統合後は1つの制度となるため、全て厚生年金の加入期間とみなされて加給年金が支給されることになります(他の要件を満たす必要あり)。これは、「お得になる」と言えますね。

逆に損するケースとは?

先ほどの加給年金ですが、加算の対象となる配偶者の要件に「配偶者が20年以上の老齢厚生年金(退職共済年金)を受けていないこと」というものがあります。配偶者自身が20年以上の老齢厚生年金(退職共済年金)を受けているなら、加算はいらないでしょう! ということですね。

しかし、配偶者が共済年金に10年、厚生年金に10年加入してそれぞれの年金を受けているケースは、合計では20年となるものの、一つの制度では20年以上にならないため、加給年金が出ていました。

一元化後は合算して20年あるということで「20年以上の年金を受けていること」となり、加給年金の支給が停止されてしまいます。これは「損」になります。

加給年金でも「得する人」と「損する人」が出るということです。

「得する、損する」というより、「不公平」が「公平」になるということ!

先ほど取り上げた「得する人、損する人」ですが、厚生年金と共済年金の間の制度の差によって生じていた不公平が、厚生年金に統合させることで「公平」になったとも言えます。

つまり、
得をする人:損をしていたのが元通りになった
損をする人:得をしていたのが元通りになった
……と言い換えることもできます。

一元化の目的は「不公平の是正」ですから、こういった一部での得や損はやむを得ないと言えそうです。

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