絵本

『すてきな三にんぐみ』の作者ウンゲラーの愉快な絵本(2ページ目)

音楽界には、アーティストの才能を見出し開花させる敏腕プロデューサーがいますが、絵本の世界にも、登場人物の魅力を引き出す名プロデューサーのような作家がいます。そんな作家の1人、トミー・ウンゲラーをご紹介します。

執筆者:大橋 悦子

少女のありえない決断が幸せを運ぶ?『ゼラルダと人喰い鬼』

絵本『ゼラルダと人喰い鬼』の表紙画像

ウンゲラー以外には考え出せない(?)少女ゼラルダの意外な一面とは?

子どもが大好物な人喰い鬼が出会ったのは、ゼラルダという名の料理上手な女の子でした。その料理の腕前で、ゼラルダは出会った人喰い鬼だけでなく、他のたくさんの人喰い鬼たちにも美味しい料理をふるまったので、鬼たちはもう子どもを食べたいとは思わなくなっていきました。

我が子が人喰い鬼に食べられるのを恐れ、子どもたちを隠していた町の人たちも、もう人喰い鬼を恐れることはありません。やがて長い年月が過ぎ、ゼラルダは自分の将来について読者が想像もできない決断を下します。その決断とは……。

あろうことか、ゼラルダは人喰い鬼の花嫁になってしまうんですよ! ウンゲラーが考え出した、ゼラルダのこの思いがけない一面に驚かずにはいられませんね。いやはや、料理上手な良妻賢母型と思われた少女がこんな思い切ったことをするとは! ウンゲラー以外に誰がこんな設定を考えることができたでしょう?

「でも、ゼラルダが幸せなら文句はないでしょ?」と思った方に申し上げます。その考えは甘いです。作品全体をプロデュースしているウンゲラーを見くびってはいけません。なぜなら、ほら最後のページをご覧ください。彼らの子どもが、ゼラルダに抱かれた赤ちゃんを見つめながら、ナイフとフォークを隠し持って……。


【書籍データ】
書籍名:ゼラルダと人喰い鬼
作:トミー・ウンゲラー 訳:たむらりゅういち/あそうくみ
価格:1404円
出版社:評論社
推奨年齢:5歳くらいから
購入はこちらから


>>嫌われ者のあの動物さえ人気者に? ウンゲラーのもう1つの代表作をご紹介


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