パートナー同士で話し合ったり、アドバイスをすることはありますか?
柄本>上野さんは『ラ・バヤデール』をもう何度も踊られていますから、“ここはもうちょっとこうだったよ”とか、彼女がこれまで経験したことを教えていただくことはよくあります。基本的には、上野さんに引っぱってもらっていますね。上野>『ラ・バヤデール』は一度目は高岸直樹さんと、二度目はマシュー・ゴールディング(オランダ国立バレエ団)さんとパートナーを組んできましたが、弾くんはこれまでの方とは全く違う個性を持っています。とても若いし、その新鮮な力というのをいつも感じながら踊っています。アドバイスというよりは、私の方が経験を重ねているので、“ここはこう言われたよ”とか“こういうものだよ”と伝えることはあります。あとはやっぱりお互いにつくり上げていくものなので、ピルエットやリフトなどテクニックの面はもっともっとクリアにしていく必要がありますね。ただこれまでいろいろな作品で組ませていただいているので、だんだん息が合ってきているのではと感じています。
photo : Shinji Hosono
『ラ・バヤデール』で好きな場面、特に注目して観てほしい場面は?
上野>もちろん影の王国はとても大切にしたい場面です。あと今回こだわりたいと思っているのが、ニキヤとソロルがふたりで踊る第一幕の場面、そしてソロルとガムザッティの婚約式でニキヤが悲しみをこらえながら踊るソロです。ストーリーを語る上で一番大切なシーンであり、内なるものを打ち出せたらと考えています。柄本>僕は課題が多すぎて……。一幕のパ・ド・ドゥはリフトがすごく難しくて、そこがまだまだだし、こうした方がいいと指導してもらっているところです。ただやっぱり最初のパ・ド・ドゥなので、ふたりでいいものにできればと思っています。
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マカロワ版の特徴でもあるラストシーンについてどう思われますか?
上野>私自身最初に観たのがマカロワ版だったので、それが意外性があるとか特徴だとは感じたことがなくて。その後パリ・オペラ座バレエ団の『ラ・バヤデール』を観て、逆に“こういうのもあるんだ”と思ったり……。あのラストがないとお話が成り立たないんじゃないかというくらいとても自然だし、しっかりした物語になっていると思います。柄本>他のバレエ団の版を観たこともありますが、マカロワ版は終わり方がキレイだなと思います。あと最後の色合いも好きですね。美しい結末だなというのはすごく感じるところです。
オルガ>ここ最近あちこちでいろいろなバージョンが出てきています。ウイーンでもコペンハーゲンでも、どこのバージョンも最後にちょっとしたエンディングを付け加えている。ブロンズアイドルが出てきたり、クッションが出てきたり、音楽もミンクスではなかったり……。良い悪いではなく、エンディングコンセプトがどれもよく似ているんですね。最近のバージョンはマカロワ版が基本になっているのを感じます。いわゆるオリジナルではなく、マカロワ版をもとにいろいろなバージョンがつくられている。ということは、このマカロワ版がいかに力強く、きちんと完結しているかという証拠でもあると思っています。
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