2009年のバレエ団初演時は東京バレエ団のダンサーによるトリプルキャスト(斎藤友佳里×後藤晴雄、吉岡美佳×木村和夫、上野水香×高岸直樹)で上演しました。当時の舞台をマカロワさんはどうお感じになったのでしょう。
オルガ>彼女はとても感心していましたね。完璧なコール・ド・バレエを含めての印象です。おそらくプリンシパルはもちろんソロのパートがあるダンサーに対してはかなり厳しい特訓をしたと思いますが、不可能と思われるものを追いかけ続けるのがマカロワです。常に一番高いところ、それよりさらに高いところを狙っていく。自分の作品なのでできるだけ最良の形でやって欲しいという想いがあるのでしょう。スターを集めてくる舞台も素晴らしいとは思いますが、当初は東京バレエ団だけで上演して欲しいということだったので、きっと東京バレエ団を気に入っているんだと思います。photo : Shinji Hosono
世界各地で『ラ・バヤデール』の振付指導をされていますが、なかでも東京バレエ団の優れていると感じる点は?
オルガ>コール・ド・バレエです。パーフェクトです。女性ダンサーたちが本当に素晴らしい。私がちょっと注意をするとみなさん休憩時間に話し合い、自分たちで自主的に練習をし、必ず注意されたことを次回言われないように修正してきてくれる。これほど勤勉なダンサーというのは他の国ではみられません。もちろんプリンシパルも重要で、ダンサーのキャリアの全てを費やさなければいけない作品です。ただもともとコール・ド・バレエの多い作品であり、ここまで優れたコール・ド・バレエはなかなか他では見ることができないと思います。photo : Shinji Hosono
上野さん、柄本さんのお二人についてお聞かせください。
オルガ>いろいろなニキヤを見てきたけれど、水香さんは身体の動きがとても素晴らしいですね。最初はもちろん手探りの状態でしたが、踊り込んでいく内に自分の中にニキヤを象っていく、役所を自分の中に上手く表現しつつあるのを感じます。ご本人が一番苦労したのがドラマティックな部分であり、一番チャレンジしなければならない部分でもあります。ただ2009年の初演時と比べるとかなり成長されていますし、それは水香さん自身も感じていると思います。弾さんはたまに顔が無表情になってしまう瞬間があって、“ダニー、どこに行っちゃったの?”なんて言ってはよくからかっています(笑)。ただ彼も一生懸命チャレンジしていますね。テクニックだけでなくパートナーとの息の合った踊りも大切で、上手く仕上がってきているのを感じるし、ドラマティックな部分も含めて日々進化しているので教え甲斐があります。あとこれは男性ダンサー全員に言えることですが、女性を絶対に転ばせない、落とさない、そしてジャンプができる、といった要素も重要で、実際練習を重ねてより磨かれてきていると思います。ここからまたもっともっと高いところを狙って欲しいですね。