一般の方々はもちろん、ミュージカル業界の人たちにも観てほしい
『蝶~ラスト・レッスン~』
上口「自分が映像で演技しているのを観て改めて、自分はこういう表情してるんだなとか、こんな声してるんだと発見して、やりたいことが増えましたね」
染谷「自分を客観視できるようになったと思います」
――本作をどんな人に、どうご覧いただきたいと思いますか?
角川「目標は(ミュージカルが苦手と公言している)タモリさんにご覧いただいて“ミュージカル、面白いじゃない”と思ってもらいたいです」
染谷「僕自身、この世界に入るまではミュージカルって敷居が高い、全然違う世界だと思っていました。サッカーをやっていた頃の友人たちもミュージカルをやっていると言うとびっくりするくらい、今の日本でミュージカルは非日常的な存在です。でも今後NYみたいに、“ごはんのあとミュージカル観に行こう”みたいなことが一般の人の間で普通に話題になるよう、かけはしになっていけたらいいなと思います」
上口「僕は一般の人はもちろんだけど、ミュージカルをやっている方々にも見てもらって『こういうのもありなんだ、それなら自分も』と思ってもらえたら。それによって日本のミュージカルがさらによくなっていくんじゃないかと思います」
角川「最終的な目標としては、ミュージカル映画祭を主催したいし、ミュージカルの学校も作りたいし、バーチャルブロードウェイin日本も作って、日本のミュージカル文化を活性化したいんです。でも、ミュージカル映画祭をと思っても自分一人だけではできません。まずは自分がパイオニア的に継続していくことで、それを見て“じゃあ僕もやってみよう”と思う人が増えてくれればと思っています。
時間やお金の部分で足踏みする人もいるかもしれないけど、今回、この作品はまる4日間という、あり得ない日数で撮影しています。機材も、いいものを使えばよりいいものが撮れるのはもちろんですが、お金が貯まるまで待っていてもしょうがないし、フィルムの時代と違って、今はデジタルカメラ1台でも撮れてしまうんです。『ユメのおと』は実際にデジタル一眼レフ1台で撮りました。
本作ではクラウドファンディングで製作を支援していただいたのですが、今回の映画に限らず、僕が今後やっていきたいことに対してお金を送ってくださった方もいらっしゃると思うので、その思いは裏切れません。もし今後“僕もやってみたい”と思った人たちがいたら、何か協力できるよう、地道に続けていくことが僕の使命だと思っています」
――この機会なので、皆さんの今後のご予定も教えてお話いただけますか?
角川「僕は現在『エリザベート』の稽古中です」
『エリザベート』
角川「新生『エリザベート』ということでいろいろ変わりますので、楽しみにしていてください。僕は(前回は岸祐二さんが演じた)エルマー役。一味違うエルマーになったらいいなと思っています。そのあと、秋に『CHESS』に出演します」
染谷「明日、兵庫で『シャーロックホームズ2』、そのあとライブと二人芝居の『BEFORE AFTER』、夏の『ひめゆり』では杉原という足を切断する負傷兵役、そして秋に『リトルウィメン』に出演します」
『BEFORE AFTER』前回公演より
染谷「僕はけっこう詰め込むタイプですが、今年は再演も多いので、これでも楽なほうなんです(笑)」
上口「僕は海宝直人君のライブにゲストで出るのと、真琴つばささんの30周年トークイベントに30人のゲストの一人として出演することが決まっています。あと秋には『ダンス オブ ヴァンパイア』で、やはり事務所の先輩の吉野圭吾さんが演じていたヘルベルトという役を演じます」
『ダンス オブ ヴァンパイア』
上口「あの演出は吉野さんのオリジナルだったんですよね。今回どうなるかは……まだわかりません(笑)」
僕たちがこだわっていきたいこと
――今後の活動について、どんなビジョンをお持ちですか?上口「やっぱり、僕は“創る”ことをやって行きたいです。いろんな演目に出演して吸収しながら、創りたい。ミュージカルなのか、歌なのかなど、形式にはこだわらないけど、絶対共通する要素として“笑い”を大切にしたいですね。面白いショーを創りたいです。そのためには経験も必要だし、“人”も必要です。10年ぐらい前にこの思いに目覚めてから、舞台の現場にいても誰かに会う機会があっても、こういう人素敵だなとか一緒だなとか、感性が響いてくる人たちを常に求めています。今後もそういう意識はずっと持ち続けると思います」
染谷「僕はこの業界に歌から入ったので、声優にしてもミュージカルにしても歌を幅広くやっていければいいなあ。それと、いろんなジャンルの芝居が見えてきたことによって、自分だったらどういう演出をするかなと、演出にも興味を持つようになってきました。歌をやりながら、今後もいろいろな方面にアンテナをはっていきたいです」
角川「やっぱりみんな、モノを作りたいと思うんですね。上口君もここまで思いが強いのだと、今聞いていて初めて知りました。僕らの仕事って、あくまで台本に書かれていることを演じるわけだけど、どこかで自分が表現したいことというのを持っておかないとみんな似てきて、個性がなくなってしまう。例えば染谷君だったら染谷君だからできることというのが絶対あるはずだし、いろんなものが合わさることでみんなも、芝居自体も良くなるんですよね。
ただ、モノを創るには相当な覚悟とタイミングと、エネルギーとが必要なのも事実。例えば誰かが”僕もミュージカル映画を創ってみたい“と思ったときに場を用意してあげられるよう、続けるのは大変だけど、食らいついてでもやっていこうと僕は思っています」
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ちなみに今回の上映、視聴料はストリーミングが700 円、ダウンロードが1500円とお手頃。劇場に足を運ぶ必要がない点でも、“ミュージカルの敷居”をぐっと下げた試みと言えましょう。最終的には日本のミュージカルをさらに活性化させようという高い志を持って始まったこのプロジェクト、まずは“一度観てみる”ことが、応援の第一歩です!
*映画『蝶~ラスト・レッスン~』6月1日より映画配信サービスサイト『LOAD SHOW』にてダウンロード上映開始