赤ちゃんを前に無意識にしてしまうベビートークの特徴
「ベビートーク」を楽しむ
「そうでちゅかー、今日はご機嫌ちゃんなのねえー、あらあらあー、あなたもおちゃべりちたいのお、いない、いない、ばあー」
普段クールなパパや凛としたママが、目じりを下げ表情豊かに赤ちゃんに向き合う様子は、微笑ましくもありますね。赤ちゃんを前にすると、大人も子供もこうした「ある決まった話し方」をすると世界中で報告されています。その話し方とは「ベビートーク」や「乳児中心の話し方(Infant-Directed Speech)」と呼ばれ、具体的にはこんな特徴があります
・普段より高めの声音
ちょっと人が変わったような印象
・抑揚が激しい
「今日はご機嫌ちゃんなのねー」のワンセンテンスにさえ抑揚が
・誇大な母音の発音
ねえ~、らあ~、のお~と伸ばしてみたり
・誇大な感情表現
多分普段は「あらあらあー」と目を丸くしたりはしないでしょう
・身振り手振りがつく
「あらあらあー」と言いながら、両手を広げているかもしれません
・短くシンプル
こまごまとした説明など挟みません
・繰り返し
「いないいないばー」も、横から「もういいよ」と言いたくなるほど続けるかもしれません
・ゆっくり
全体的にちょっとスローモーションがかかったよう
どうでしょう。
自身を振り返り、そして周りを見ても、確かにと頷いてしまいませんか。
「ベビートーク」は赤ちゃんの発達を促すために効果的
こうした「ベビートーク」とは、実は赤ちゃんの発達にとって、とても効果的な話し方であるということが分かっています。まずは、「ベビートーク」により、赤ちゃんの注意がより惹きつけられます。わずか生後2日の赤ちゃんでさえ、「ベビートーク」と普通の話し方を聞かせたところ、「ベビートーク」の方へと顔を向けると言います。また何と睡眠中でさえ、普通の話し方よりも「ベビートーク」で話しかけた方が、赤ちゃんの脳がより活性化すると分かっています。また「ベビートーク」をたくさん聞いた赤ちゃんは、そうでない赤ちゃんよりも、言語力やコミュニケーション力がより発達すると示す研究がいくつか報告されています。それは、「ベビートーク」により、赤ちゃんは以下のような力を培うためと説明されています。
- 音を区別する力
- 単語と単語の境界を見出す力
- 節を認識する力
- 話し手の感情や意図を読み取る力
「ベビートーク」でたくさん話しかけましょう
「ベビートーク」がこれほど赤ちゃんの発達にとって理に適っているとはいえ、忙しい日常生活では、ついついテレビやコンピューターのスクリーンを眺めながら黙々と無表情に赤ちゃんのオムツを替え授乳をしと過ごしてしまうこともあるかもしれません。そんな時は、頭にいっぱいの「やるべきこと」を少し横におき、赤ちゃんの表情や小さな体の温もりを感じてみましょう。すると、自然に「ベビートーク」が口から溢れる自分に気がつくかもしれません。また赤ちゃんに接することにそれほど慣れていない場合は、大人や子供のようには反応のない赤ちゃんに、どう話しかけたらいいものかと首を傾げてしまうこともあるかもしれません。そんな時は、上にあげた「ベビートークの特徴」を思い出してみましょう。高らかな声でハイテンションに大げさに。初めは分かりにくかった赤ちゃんの反応も、笑顔を返してくれたり、声を発するようになったりと、成長と共に少しずつはっきりしてきます。すると、ますます「ベビートーク」も楽しめるようになっていくでしょう。
赤ちゃんへの話しかけは、芽の見えない土に向かって、水をやり太陽の光を当て土の具合を調整するといったことに、似ているかもしれません。何も見えなかった地面に、ある日、目を合わせる、笑顔、発声、手を差し出す、指を差す、発語といった「コミュニケーションの芽」がひょっこりと現れます。「ベビートーク」を大いに楽しみ、赤ちゃんの成長の萌芽を見守っていきたいですね。
(*)出典:
Fernald A. 1992. Human maternal vocalizations to infants as biologically relevant signals: An evolutionary perspective. In: JH Barkow, L Cosmides and J Tooby (eds), The Adapted Mind: Evolutionary psychology and the generation of culture (pp. 391-428). New York: Oxford University Press
Monnot M. 1998. Function of infant-directed speech. Human Nature 10(4): 1045-6767
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