マネジメント/マネジメント事例

家電大手3社の成功と失敗、リストラの本当の意味とは(2ページ目)

家電大手のシャープが、15年3月期に2223億円という巨額の赤字を計上し、金融団の協力を前提に抜本的な経営再建が求められることになりました。シャープと言えば、国内家電冬の時代入りとも言われた2、3年前から、他の大手家電メーカーと時を同じくしてリストラを進めてきました。しかし結果的には、唯一リストラ効果が見えないのはなぜなのでしょう。あるべきリストラへの取り組みついて、家電業界を例に考えてみましょう。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

 

道半ば、ここが正念場のソニー

これに対して同時期に赤字に苦しみリストラに着手しつつも、依然道半ばに位置づけられるのがソニーです。

同社は、業績悪化の責任をとったストリンガー氏の後を受けた12年の平井CEO着任後に、約1万人の人員削減と生産拠点の縮小などをメインとしたリストラ策に着手します。しかし、テレビ、PC、スマホ事業の再構築に関する見通しおよび対応策が甘く、識者からは「目先の業績のお化粧」と揶揄されもしました。そしてそのツケは昨年9月、15年3月期における業績見通し2300億円の赤字計上、上場来初となる中間、期末無配当決定に至り、リストラ策の抜本的見直しを迫られたのです。

これを受け同社は、10月に全事業の分社化と聖域なき構造改革を宣言した中期計画をスタートさせます。これが遅ればせながら功を奏し、この3月決算では最終損益は引き続き赤字ながら営業利益ベースで200億円の黒字を確保できる見通しに漕ぎつけました。ようやく魂の入ったリストラがスタートし、その前半戦とも言える削減の効果が表れたと言えそうです。

しかし、リストラの本番はここからです。事業再編による再構築等により、どの事業を新たな収益源としていくのか。まさしく正念場。画像センサー技術など、世界シェアナンバーワンの好調事業をいかに活用しながら、テレビ、スマホに代表されるエレキ部門の再構築をはかるのか。そこにこそ、本来的な意味でのリストラの評価が委ねられると見ています。
 

いまだリストラの入口でもがくシャープ

一方リストラの入口で、前に進みあぐねて今だにもがいているという印象なのが、シャープです。
 
解説

液リストラ入口で立ち往生し苦境に陥ったシャープ

シャープもまた、パナソニック、ソニーと同じく12、13年3月期に大幅な赤字を計上し、早期退職制度による人員削減、サムスンからの出資による液晶分野の業務提携などに軸としたリストラ策を打ち出します。14年3月期には、折からの急激な円安傾向もあって業績は黒字に転じ、事なきを得たかのように見えました。

しかし、為替効果での収益環境改善により液晶部門を中心とした事業の見通しに甘さが生じ事業形態再構築に緩みが出て、遅々として進まない再構築の中で15年3月期には再び2000億円を超す巨額の赤字を計上するに至ったのです。同社は競争環境的に苦しい液晶部門にこだわり続けたことで、リストラが入口でストップし再構築に程遠い段階で足踏みをした事が、今回の苦境を招いたと言えるでしょう。

パナソニック、ソニー、シャープそれぞれのリストラ進展の差はどこで生まれたのか。それぞれの置かれた環境の違いや組織の事情はあるかと思いますが、決断と行動の早さ、すなわち削減にとどまらない再構築をどれだけスピーディに着手できるかにかかっているのが分かると思います。早い着手は、業績不振の傷をいたずらに深くすることなく、また中途での方向修正の可能性も組織に残してくれるのです。

リストラクチャリングとは、削減ではなく再構築であると理解すること、決断と行動の早さがその雌雄を決するということを、家電業界大手3社のリストラは教えてくれるのです。
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