マネジメント/マネジメント事例

家電大手3社の成功と失敗、リストラの本当の意味とは

家電大手のシャープが、15年3月期に2223億円という巨額の赤字を計上し、金融団の協力を前提に抜本的な経営再建が求められることになりました。シャープと言えば、国内家電冬の時代入りとも言われた2、3年前から、他の大手家電メーカーと時を同じくしてリストラを進めてきました。しかし結果的には、唯一リストラ効果が見えないのはなぜなのでしょう。あるべきリストラへの取り組みついて、家電業界を例に考えてみましょう。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

リストラとは整理・削減ではなく再構築

「父が会社をリストラされました」「あいつは今回のリストラ要員だ」などと言う表現で使用されるリストラという言葉は、「整理・縮小」「人員削減」「無駄排除」「コストダウン」などの用語で置き換えることが可能です。こう言う使われ方をすることが多いからでしょうか、どうも日本語で「リストラ」と聞くと後ろ向きな用語という印象が色濃く漂っています。

しかしリストラの正式な英語はrestructuring。和訳は「再構築」です。本来の意味からすれば、捨てるとか、カットとかダウンのイメージは全くない「再び構築する」という至って前向きな用語なのです。しかしどうも我が国のリストラの印象は、思い切った人員削減策の断行による利益の積み増しや、生産拠点縮小による黒字転換などばかりにスポットが当てられ、本当の意味でのリストラに着目されていないように感じます。

では本来的な意味でのリストラを考える時、リストラとは何か、またあるべきリストラの姿はどのようなものなのか、日本の電業界を例にとって考えてみたいと思います。
 

迅速かつ適切な再構築を実践したパナソニック

解説

迅速かつ適切なリストラを敢行し、V字回復を果たしたパナソニック

まずはじめに本来的なリストラとして評価するにふさわしい例として、パナソニックが挙げられそうです。同社は、薄型パネル開発などテレビ関連事業での失敗により、12、13年と2年連続で7500億円以上の損失を計上しました。そこで、迷うことなく起死回生の抜本的リストラに着手します。

リストラ着手時の柱は、テレビ事業の大幅縮小でした。プラズマディスプレイ開発からの撤退、生産拠点面からは中国、メキシコといった主力工場を閉鎖するという大手術を敢行します。また並行して半導体工場の売却なども積極的に進められました。ここまでが削減です。

そして新たな収益源づくりとしてBtoCをメインとしたこれまでの事業スタイルを改め、BtoBをメインとした自動車関連事業や住宅関連事業への主力事業のシフトを見事に成功させます。これぞまさしく事業の再構築なのです。

この両分野におけるリチウムイオン電池やディスプレイ販売などは絶好調に推移し、現在では2部門の収益が全体収益の半分以上を稼ぎ出すまでに成長しました。同時に大幅なコストカットを実施したテレビ部門やエアコン部門も黒字に転じるなどして、15年3月期には企業全体として大幅な黒字計上できる見通しです。

同社の迅速かつ適切な「大リストラ=事業再構築」は、津賀社長をして「構造改革は完遂した」と言わしめるに至り、見事な収束をみたと言っていいでしょう。
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