はじめはみんな絵を描くことが好き
子供が絵を嫌いになってしまう親のNG行動は?
誰もが経験した楽しいお絵かき。ほとんどの人は、絵を描くことに夢中になった時期があったのではないでしょうか。それなのに、いつ頃からかあまり描かなくなってしまい、あるいは描くことが嫌いになってしまう人も出てきます。その要因にはいろいろありますが、こどもの頃に経験したことが大きく影響するといえます。そこで、今回はこどもの絵画発達を妨げる5大NGについてお話しましょう。
<目次>
NG1:作品を誉めるとき「上手」と言う
こどもの絵をほめるとき、何と言ってほめますか? 「上手だね」「上手いね」などよく使われる言葉ですが、実はこの言葉には注意を払う必要があるのです。「上手」を裏返すと「下手」になります。保育園や幼稚園、学校で、先生はあの子には「上手」とほめていたけど、自分には言ってくれなかった。だから自分の絵は下手なのでは……。など、直接「下手」と言われてなくとも、こどもはそう感じ取ってしまいます。芸術家であり臨床美術の先駆けとなった金子健二氏は、「上手」「下手」という言い方は一切せず、具体的に良いところを見つけてほめることが大切だと言っています(※)。
「上手」「下手」の評価ではなく、こどもの絵から抱いた感情や制作の過程、またこどもの目線になって認めほめましょう。
※【参考文献】
『金子健二の言葉から学ぶ臨床美術のポイント 触れる、聞く、ほめる』芸術造形研究所[編] 日本地域社会研究所 2008年
NG2:ほかの子供と比べる
せっかく楽しく描いた絵をけなしたり、他の子と比べられてしまったら、どう感じるでしょうか? これはこどもばかりに言えたことではありません。おとなでも同じ感情を抱くことは間違いないでしょう。比べる相手は友だちばかりではありません。兄弟でも言えることです。「お兄ちゃんは、こんな素晴らしい絵を描くのに、あなたの絵は何だかねぇ」など、親から比べられてけなされてしまった下の子は、絵を描くことがまず嫌になり自信を失います。逆に上の子は自分の絵に誇りを持ち優越感を味わうのですが、親が気軽にけなした言葉を聞き、こどもも同じく真似るようになります。親は、上の子下の子それぞれ配慮していく必要があります。
NG3:絵を描くことを無理強いしてしまう
こどもが途中で集中力がなくなったり気分がのらず早く制作を終了させても、無理強いはしないようにしましょう。「こどもが描いた絵を祖父母にプレゼントしたいから、もっと描いて欲しいのに……。」「家のリビングに飾りたいのに、こんな途中の絵では……。」など思うことがあるかもしれません。しかし描くことをさらに強制してしまうと、こども自身が持っている本来の作品にならなかったり、また「嫌だ」「つらい」「疲れる」という感情を残してしまいます。こどもが描きたいときこそが、楽しく充実した時間となるのですから、それが短くとも関係ありません。
NG4:技術ばかりを要求してしまう
こどもが絵を描いている横から絵の描き方ばかりを要求してしまうと、こども本来の絵ではなくなってしまいます。おとなの感覚を押し付けてしまうことも良くありません。まずは、こどもの絵画発達段階をよく理解しましょう。ただ、いろんな技法を体験していくことはおもしろいことです。新たな発見に目を輝かせ、絵画の活動範囲が広くなってきます。
NG5:失敗を叱ってしまう
「失敗は成功のもと」。これは絵画活動だけに言えたことではありません。どんな失敗に対しても寛容であることが大切です。失敗したことを指摘したり叱ったりすると、こどもは挑戦することを怖がります。失敗をするとその分学習したことになるのですから、かえって「失敗おめでとう!」なのです。また、手や洋服が汚れてしまうことに対しても叱らないことです。「洋服を汚すとママに叱られるから絵の具は嫌だ」とか「手が汚れるから描きたくない」などというこどもも中にはいます。元々こだわりの強いこどももいますが、多くは母親がこどもが小さいときから、汚れることに敏感になっていたためです。これではせっかくの絵画活動を思う存分楽しむことができません。手は洗えばいいし、絵の具を使うときは汚れてもいい服を着るか、スモックなどを使用する工夫をすればいいだけなのです。
絵を描くことは楽しい!
以上のことを踏まえ、絵を描くことが嫌いにならないためにはおとなのちょっとした配慮が必要です。楽しく絵を描いているこどもは、情緒が安定しています。そんなまっすぐなこどもの絵に魅了され刺激を受けた画家は数多くいます。『ようやく子どものような絵が描けるようになった。ここまで来るのにずいぶん時間がかかったものだ』と名言を残したパブロ・ピカソ(Pablo Picasso 1881- 1973)もそのうちのひとりです。そのときそのときにしか描けないこどもの絵、そしてこどもが絵を描く取り組む姿勢を、あたたかく見守っていきましょう。
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