パレルモの栄光と衰退の物語
さて、貴族たちが社交生活を楽しむ当時のパレルモには、流行していたバロック芸術も持ち込まれました。パラダイスのような気候、耽美な貴族文化とバロック芸術に彩られた街。各国セレブリティもそりゃくるわ!な国際都市となり、まさに黄金時代が築かれましたが、山もあれば谷もある。19世紀半ば、イタリア統一によって、長く続いた貴族社会にも衰退の影が落とされます。当時の貴族社会と貴族の不安感。かの有名なヴィスコンティの映画「山猫」にも、まざまざと描かれています。
観た方はすぐにピンとくるはずですが、「山猫」と言えば、舞踏会のシーン。撮影されたのは、パレルモに現存する「パラッツォ・ガンジー」です。こちらは、現在もヴァンニ・マンテーニャ・ディ・サン・ヴィンチェンツォのカリーネ王女が管理している個人宅。セットさながらの豪華な内装がそのまま保存され、見学も可能です。
ちなみに、「山猫」の原作は、1896年パレルモ生まれの貴族の末裔、ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサが、曾祖父、スペイン王国のグランデ(最高爵位)ジュリオ・ファブリツィオ・トマージの伝記をベースに描かれたと言われています。小説ですが、ノン・フィクションなみのリアルさと評判の名作。長~いですが(映画も長い…)、機会があれば、ぜひ!
パレルモに今も息づく貴族文化を感じたい
知らないと見過ごしがちな、旧市街に残された貴族の館たち。特に芸術的に価値の高い内装を持つ館は、法律上改装できないことになっているため、「え?」という大きさの巨大な舞踏サロンが当時のままに残されているケースもあります。そんな館は、パーティや結婚式場としてレンタルされていたり、ピンポ~ンとチャイムを鳴らして中に入れたり?!はたまた一般公開の博物館になっていたりします。
ある意味、修復が完全に進まないおかげで、繁栄と、しかもその衰退までもを留める貴族の館。ヴィスコンティの「山猫」の世界観や、そこはかとなく漂うデカダンスな香り…がお好きな人は特に、そんな貴族の館を訪問してみるのがおススメです。ひと味違うパレルモを味わえますよ!
<訪問可能な貴族の館>
パレルモ旧市街の「プライベートな貴族の館」を訪問!
華麗なるパレルモ名門貴族の生活”パラッツォ・ミルト”