タバコの煙に含まれる4500種類以上もの化学物質
親の喫煙は子供の健康に及ぼす害は? 受動喫煙のリスクを正しく知って、ぜひ禁煙を始めましょう
タバコの煙には4500種類以上の化学物質が含まれています。主にタール、ニコチン、ピレンといった粒子と、アセトアルデヒド、窒素酸化物といった気体などです。
タバコの煙は、タバコを吸う喫煙者の身体の中に入っていく「主流煙」と、タバコの先から出ている煙である「副流煙」に分けられますが、副流煙の方がタール、ニコチン、窒素酸化物が多いと言われています。この副流煙によって喫煙している状態になってしまうのが「受動喫煙(じゅどうきつえん)」です。自分はタバコを吸っていないのに、タバコの煙が体に入ってくる状態をです。
特に心配されているのが、親の喫煙による子供への影響。実際に、タバコは喫煙者である親だけでなく、子どもの将来的な健康にも害を及ぼしうるという報告があります。
親が喫煙している子どもが将来負う健康リスク
2015年、Circulationという雑誌にWest HW先生が報告した、フィンランドとオーストラリアの研究グループによる受動喫煙の共同研究があります。1980年と1983年において、子どもの頃に親の喫煙による受動喫煙のあった2448人の子どもを対象に26年間追跡調査をして、2001年と2007年に、その子どもたちが大人になったときの頸動脈での動脈硬化との関係を検討しています。子どもの頃の受動喫煙の状態を見るために、血液中の「コチニン」の値を測定しています。コチニンは、タバコの煙に含まれているニコチンが体内に入って作られる物質です。コチニンが体内に検出されなかった割合は、喫煙していない両親の子どもで84%、片親が喫煙している場合の子どもで62%、両親とも喫煙している場合の子どもで43%でした。つまり、受動喫煙の危険性が高いほど、子どものコチニンが検出されることになります。
動脈硬化との関係については、片親または両親が喫煙している家庭で育った子どもは、両親ともに喫煙していない子どもと比べると、1.7倍の危険性があると報告しています。さらに親が喫煙をしていて、子どものコチニン値が検出されると、4倍の危険性があることが判りました。
(West HW 他:Circulation 2015, 131: 1239-1246)
つまり、親が喫煙している環境で育った子どもは、大人になると動脈硬化の危険性が平均よりも高くなるということです。
妊娠、出産……家族に子どもが加わったらぜひ禁煙を
子どもの健康を願うのは親心です。もともと、タバコを吸っていない人はそのまま吸わないようにしたいものです。ニコチン中毒・依存症には、心理的依存と物理的依存があります。ニコチン自体、非常に依存性の高い薬物なのです。ニコチンは肺から血液を通して脳内に運ばれ、脳内に作用するとドーパミンという快楽を与える物質を放出します。快楽のために、ニコチンをさらに吸収したくなり、悪循環に陥るのです。
ニコチンの血中濃度が低下すると、いわゆる禁断症状として
- タバコが吸いたくなる
- 落ち着かなく、イライラする
- 気分が落ち込む
- 食欲が増える
- 怒りやすくなる
- 寝つきが悪い
- 不安を感じる
- 眠っても途中で目が覚める
- 集中できない
医師としてすすめたい禁煙方法
タバコを止めるためには、まずは止めると言う意志が必要です。何でもいいので、タバコを減らす、辞めていこうと思うことから始まります。禁煙外来を受診するにも禁煙する意志がなければ、続けることはできません。■セルフコントロール
まだ依存度が低い状態であれば、意志ですっぱりと依存症状に打ち勝てることもあります。とはいえなかなか難しい方法でもあるので、徐々にタバコの本数を減らしていくことで、依存症状から離脱していくのも1つの方法です。減らしていく方法は個人差がありますが、無理しない程度で減らしていきましょう。
■周りの協力
禁煙宣言をして、家族や会社の人など、周りに協力してもらうのも1つの方法です。自分が吸っていることを指摘してもらうことで、本数を減らしていき、禁煙を目指しましょう宇。
■医療機関・禁煙外来の受診
禁煙外来では生活環境などの見直しを行い、禁煙補助薬を使用して禁煙率を上げます。禁煙補助薬には、ニコチンパッチやニコチンガムといったニコチンを含む製剤と、飲み薬であるバレニクリンのようにニコチンを含まない製剤があります。いずれの薬も禁煙による離脱症状を和らげて、最終的に禁煙に導きます。ニコチンを含まない製剤は、禁断症状を和らげる他、タバコを吸ってもおいしいと感じなくなる効果もあります。
これらの薬剤を使いながら、健康保険による禁煙治療は、12週間で5回の診察があります。先の研究結果から見ても、子どものいる喫煙者の方は、ぜひ禁煙を始めましょう。