支給停止の仕組みを理解して従業員からの相談に対応しよう!
支給停止の仕組みを理解して相談に対応しよう!
在職中に受ける老齢厚生年金(在職老齢年金)は、受給している老齢厚生年金の月額と総報酬月額相当額により年金額が調整(支給停止)されます。今般この年金額を調整する際の基準額が変更になりました。
60歳台の従業員にとって給与と年金は収入の源です。総務人事担当の皆様は、対象者から年金相談を受けることも多いことでしょう。更に60歳台前半は、条件により雇用保険から「高年齢雇用継続給付」を受給できる場合があります。その場合は「給与+年金+高年齢雇用継続給付」の3本立てになり少々複雑な調整(支給調整)となります。本記事で調整(支給停止)の仕組みを理解しておきましょう。
平成27年4月1日より変更!
在職老齢年金の支給停止基準額等(46万円→47万円)
在職中の年金額を調整する際の基準額等が下記のとおり変更されました。下記表の「28万円」と「47万円」は年金額調整のキー数値です。平成27年4月変更後の計算方法を下記で確認しておきましょう。【変更内容】
- 60歳から64歳までの支給停止調整変更額 46万円→47万円へ変更
(28万円の支給停止調整開始額については変更ありません) - 65歳以上の支給停止基準額 46万円→47万円へ変更
「60歳から64歳まで(60歳台前半)」の在職老齢年金のしくみ
65歳未満で在職し厚生年金の被保険者となっている場合、基本月額(※1)と総報酬月額相当額(※2)に応じて年金額が支給停止(全部または一部)となる場合があります。- (※1)基本月額=加給年金額を除いた老齢厚生年金年額を12で割った額。いわゆる毎月の年金額です。
- (※2)総報酬月額相当額=標準報酬月額(毎月の賃金)+標準賞与額(直近1年間の賞与額)を12で割った額。要は、毎月の賃金だけでなく1年間の賞与も1月当たりに均して算入することになっています。
1.調整の仕組み
- 在職中であっても総報酬月額相当額と老齢厚生年金の月額の合計が28万円に達するまでは年金の全額が支給されます。
- 総報酬月額相当額と老齢厚生年金の月額の合計が28万円を上回る場合は、総報酬月額相当額の増加2に対し年金額1が停止されます。
- 総報酬月額相当額が47万円を超える場合は、さらに総報酬月額相当額が増加した分だけ年金が支給停止されます。
2.調整のための計算式
調整の仕組みを計算式にすると次のようになります。企業実務では(1)と(2)のケースが大半だと思われます。
- (1)基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下の場合
全額支給 - (2)総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円以下の場合
基本月額-(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2 - (3)総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円超の場合
基本月額-総報酬月額相当額÷2 - (4)総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円以下の場合
基本月額-{(47万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)} - (5)総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円超の場合
基本月額-{47万円÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}
3.具体的計算例
【在職老齢年金の支給停止の仕組み 日本年金機構リーフレットの事例】
- 基本月額18万円(老齢厚生年金額216万円÷12)
- 総報酬月額相当額30万円(標準報酬月額22万円、標準賞与額96万円÷12=8万円)
18万円-(30万円+18万円-28万円)÷2=8万円
この対象者は、賃金・賞与(総報酬月額相当額)月額30万円+一部支給の年金月額8万円で、月38万円が合計収入となります。
次のページでは、65歳以上(60歳台後半以降~)の在職老齢年金の仕組みを解説しています。