加入条件・加入義務範囲は社会保険ごとに異なる

社会保険に加入義務がある従業員の範囲は?

社会保険の加入・非加入は労働条件で決まります

社会保険は以下の4つに区分けされます。
 
  1. 労災保険
  2. 雇用保険
  3. 健康保険
  4. 厚生年金

この他「介護保険」もありますが、健康保険の中で保険料の徴収がされるので、健康保険の中に含めて考えます。今回はこの4つについて、加入させるべき従業員の範囲、加入条件・要件を押さえましょう。

制度内容が異なることから、加入させる従業員の範囲も異なります。加入すべき従業員を非加入のままにしていると、従業員側に不利益が生じるので、採用時に適正な手続きをしましょう。
 

「労災保険」の加入条件

1. 全従業員が加入
労災保険と他の社会保険とは大きな違いは「被保険者」という概念がないことです。原則、従業員を雇用する企業は労災保険の適用を受けることになっており、全従業員を包括的に加入させます。被保険者証などは発行されないので、加入していること自体、あまり意識することがないでしょう。

2. 手続きは、毎年1回の労働保険料の更新
正社員・契約社員・パート・アルバイト等各種の雇用形態がありますが、全ての労働者が加入対象です。採用時に個別に加入手続きをするわけではなく、企業で年1回、年度内の従業員の賃金総額と平均人数を申告し、それに応じた保険料を納付することで手続きが完了します。
 

「雇用保険」の加入条件

1. 雇用保険の適用事業に雇用する従業員は原則加入
雇用保険の適用事業に雇用される場合は、原則加入させなければなりません。従来は、65歳に達した日以後に新たに雇用される場合などは加入できませんでしたが、平成29年1月から、65歳以上の従業員も「高年齢被保険者」として雇用保険の適用対象となっています。加入漏れに気をつけましょう。

2. パートタイム従業員でも条件によって加入義務あり
パートタイム従業員も一定の基準に該当すれば、雇用保険の加入手続が必要になります。この点を見落とすと、後々トラブルになることがあります。退職した場合、本来受けられるはずの失業給付を受けられなくなるため、従業員の不利益になるからです。 次の2つの条件に両方とも該当すれば、加入義務があります。

(1)「31日以上」引き続き雇用されることが見込まれる場合
具体的には、次の場合が該当します。
  • 期間の定めがなく雇用される場合
  • 雇用期間が「31日以上」である場合
  • 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
  • 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合
(注)当初の雇入時には「31日以上雇用されることが見込まれない」場合でも、その後に「31日以上雇用されることが見込まれることになった場合」は、その時点から雇用保険が適用されます。

(2) 1週間の所定労働時間が「20時間以上」の場合
週休2日制で1日8時間・週40時間制の企業が多いと思います。このケースでは半分以上(20時間以上)の就業条件であれば加入義務があります。自社の従業員で検証しましょう。

3. その他加入させるかどうかの具体例(行政手引による)

(1) 個人事業主
個人事業主は加入できません。

(2) 法人の代表者(代表取締役、代表社員等)
加入できません。

(3) 取締役、監査役
原則加入できません。ただし従業員としての身分がある場合で労働者的な性格がある場合、名目的に就任しているなどで明確に雇用関係があると認められる場合は加入する場合があります。

(4) 同居の親族
原則として加入しません。ただし、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること、他の従業員と就業実態が同様であること、取締役等でないことの条件があれば加入することがあります。

(5) 2つ以上の事業主の適用事業に雇用される従業員
原則として、生計を維持するための主な給与を受ける事業でのみ加入します。数事業を兼業している従業員は、どこで加入するか迷いますね。各事業から給与支給があっても、そのうちメインの給与を受けている事業のみで加入します。

出向している従業員は、出向元と出向先、両事業から給与支給を受けることがよくあります。上記によりメインの1事業のみの加入のため、実務の世界では給与の支払い関係をどちらか1つに集約して支給して対応することが多いようです。
 

「健康保険」・「厚生年金保険」の加入条件

1. 常時雇用する従業員を加入させます
健康保険・厚生年金保険の適用を受けている事業所に常時雇用されている従業員は、すべて加入対象となります。契約社員、パート、アルバイトなどの非正規型であっても条件次第で加入させる場合があります。以下で確認しましょう。

2.  パートタイマー従業員等の加入条件(その1)
パートタイム従業員などの短時間就業者でも、常用的な使用関係があれば加入しなければなりません。その判断基準が平成28年10月1日に明確化されました。確認して対応してください。

●1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の「4分の3以上」(但し、平成28年10月1日において、新たな4分の3基準を満たしていない場合であってもその前から被保険者だった場合は、引き続き同じ事業所に雇用されている間は引き続き加入できます)

(補足:従来は、1日または1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が、常時雇用者の「概ね」4分の3以上の場合、とされていました。今後は、「概ね」が取れ「4分の3以上」と明確になりました)
パート・アルバイトは正規従業員の4分の3以上の就業形態で加入します

正規従業員の4分の3以上の就業形態で加入します

3. パートタイマー従業員等の加入条件(その2)
但し、実務上注意すべきは、労働日数と労働時間が「4分の3未満」であっても、平成28年10月からは、(1)から(5)すべてに該当する従業員は被保険者となりました(なお、平成29年4月からは(6)の条件も加わり、さらに加入範囲が拡大しています)。自社の企業規模と対象者の労働条件によって加入・非加入が決まるのです。
 
  • (1)1週間の所定労働時間が20時間以上あること
  • (2)賃金月額が88,000円以上であること
  • (3)勤務期間が1年以上見込まれること
  • (4)学生でないこと
  • (5)被保険者数501人以上の企業の従業員
  • (6)被保険者数500人以下の企業の従業員で、加入について労使合意が取れた場合(平成29年4月から)
4.「臨時的」な雇用関係では加入しない場合もあり
従業員によっては、臨時に雇用されたり季節的に雇用されたりする場合がありますね。この場合は加入しない場合があります。以下のような臨時的な雇用形態であれば加入しません。

  (1) 日々雇い入れられる者
ただし、1ヶ月を超えて引き続き使用される場合には、そのときから加入。

  (2) 臨時に使用される者で、2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
ただし2ヶ月以内の所定の期間を超えて引き続き使用される場合には、そのときから加入。

  (3) 季節的業務に使用される者
季節的業務は、清酒の醸造、製茶等の業務をイメージしてください。その時々で季節ごとに完了する業務ですね。ただし、季節的業務でも当初から継続して4ヶ月を超えて使用される予定で雇用される場合は当初から加入します。

  (4) 臨時的事業の事業所に使用される者
臨時的事業は、博覧会などの事業をイメージしてください。常時開催ではなく臨時的なものが多いですね。ただし、臨時的事業でも当初から継続して6ヶ月を超えて雇用される場合は当初から加入します。

  (5) 所在地が一定しない事業所に雇用される場合
所在地が一定しない事業所は、各種の興行(例 サーカス、劇団、歌劇団)をイメージしてください興行が終われば、また別の場所に移動することになりますね。この場合は例外はありません。

自社の従業員で加入させるべき従業員の手続きが漏れていないか、確認しておきましょう。

5. その他加入させるかどうかの具体例

 
(1) 法人の役員
法人の役員(社長、取締役、理事、幹事等)も常態として勤務して報酬を受けていれば加入します。

  (2) 個人事業主
個人事業主は使用者なので加入することはできません。

  (3) 試用期間中の従業員
試用期間だから加入させていない、という処理をしていませんか?試用期間中でも報酬を受けていれば加入させなければなりません。

6.「70歳以上」と「75歳以上」の役員・従業員の留意点
健康保険と厚生年金保険の加入条件は同一です。どちらか片方だけ加入することはありません。ただし次の年齢以上になると脱退します。

  (1) 70歳以上(厚生年金を脱退)
原則として厚生年金を脱退します。健康保険のみ加入することになります。

  (2) 75歳以上(健康保険を脱退)
健康保険も脱退し、後期高齢者医療制度に移行することになります。

<関連記事>
実務手続きはこちらを参照ください
従業員採用時の社会保険手続き


<関連資料>
労災保険とは(労災保険情報センター)
雇用保険の手続きはきちんとなされていますか(厚生労働省)
被保険者とは?(全国健康保険協会)
適用事業所と被保険者(日本年金機構)
短時間労働者に対する厚生年金保険等の適用が拡大されています(厚生労働省)
本年4月から短時間労働者の適用対象が広がります(厚生労働省)

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