社会保険の年間定例手続き

労働保険と社会保険では、手続き方法が大きく異なります

労働保険と社会保険では、手続き方法が大きく異なります

従業員が入社してから退職するまでの間は、社会保険に加入している期間になります。社会保険事務は入社時に加入手続きをしてしまえば、後は保険料を給与天引きするだけだからさほど難しくない、と思われている方も多いのではないでしょうか。

実はこの保険料は、保険料額変更の時期、天引き保険料の納め方などが、年間の定例事務として定められています。所得税などの税額計算方式と違い、社会保険独特の計算方法があり、新任の事務担当者の方は戸惑うことが多いようです。

そもそも事務処理方法は、労働保険(労災保険・雇用保険)と社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)で大きく異なっていて厄介です。相違点を押さえて、漏れのないように適格に事務処理を行っていきたいものです。今回は、企業が行うべき年間ルーチンワークの概要を確認していきます。

毎月の事務処理(保険料控除)

事務処理は、毎月必ず行うものがあります。まず月次の定例業務を確認しましょう。

1.労働保険(労災保険・雇用保険)料の給与天引き
労災保険と雇用保険で事務処理が異なります。労災保険料は従業員からの給与天引きはありません。労災保険料は、全て企業側で負担することになっています。

一方雇用保険料は、毎月給与を支払うつど従業員(雇用保険の被保険者)負担分を天引きします(雇用保険の保険料は、従業員負担分と企業側負担分に所定割合で按分されています)。この労災保険料と雇用保険料は、下部に記載した労働保険の申告・納付方法で国に納めます。

2.社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)料の給与天引き及び保険料納付
健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は、毎月給与額(社会保険では、標準報酬月額といいます)から前月分の保険料を給与天引きします。その保険料は、従業員と企業側で折半となっています。天引きされた保険料は、企業側負担分と合わせてその翌月末日までに納めます。

年1回の労働保険の申告・納付について(7月)

労働保険(労災保険・雇用保険)料は、毎年一定時期に保険料の申告・納付を行います。事務の簡素化、合理化のため、申告・納付事務を毎月行うのではなく年1回という点がポイント。毎年行うので、「年度更新」と呼ばれます。

保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(これを保険年度といいます。)を単位として計算します。その額は、従業員の年間の賃金総額に、その企業の事業ごとに決まっている保険料率を掛けて算出します。

企業では、毎年4月1日から始まる新年度の保険料を概算額(概算保険料といいます)で申告・納付するのと同時に、前年度の保険料の確定額(確定保険料といいます)を申告・納付する手続きを行います。つまり、既に納付した概算額との差額精算を、年1回毎年行うわけです。

1.労働保険料の申告
労働保険料の申告書は、毎年7月10日までに、都道府県労働局、労働基準監督署に提出します。納付する保険料があれば、金融機関・郵便局でも提出できることになっています。

2.労働保険料の納付方法
労働保険料は一括納付が原則ですが、年間の概算保険料額が40万円以上(労災保険または雇用保険のいずれか一方のみが成立している場合は、20万円以上)であれば、3回に分割納付ができます。また、労働保険の事務処理を労働保険事務組合(労働保険の事務処理を代行する団体)に委託している場合には、概算保険料の額にかかわらず分割納付ができます。

<各期の納付期限>
  • 全期分または、第1期分 7月10日(保険期間4月1日~7月31日分)
  • 第2期分 10月31日(保険期間8月1日~11月30日分)
  • 第3期分 翌年1月31日(保険期間12月1日~翌年3月31日分)
全期分、第1期分は、金融機関等で納付します。第2期、第3期は、各納付期限の10日位前に厚生労働省から直接「納付書」が郵送されます。

以上が、労働保険の年度更新の概要です。なお事業が有期事業(事業の期間が予定され、事業が完了したら事業そのものが終了する事業。建設の事業等です。)の場合には、労災保険と雇用保険を別々に事務処理することになります。有期事業の手続きは、別記事でお伝えします。

年1回の社会保険の報酬月額算定基礎届について(7月)

社会保険料は、毎年一回改定時期が決まっています

社会保険料は、毎年一回改定時期が決まっています

従業員個人ごとの社会保険料は、給与額に応じて決定されます。その給与額のことを社会保険では、「報酬」と言います。報酬は、残業手当などがあると毎月変動しますから、毎月の保険料計算はとても煩雑です。

そのため社会保険では、報酬をいくつかの等級区分に当てはめ報酬(「標準報酬月額」といいます)を毎年1回決めることにしています。この決定を行うために提出する届を「報酬月額算定基礎届」といいます。実務では、この「標準報酬月額」を基に毎月の保険料を計算します。

1.報酬月額基礎届の算定方法
毎年7月1日に在籍している従業員の4月、5月、6月の3ヶ月に支払われた報酬の平均額を計算し届け出ます。この届出により決定された各従業員ごとの標準報酬月額が企業に通知されます。

2.提出期間
毎年7月1日から7月10日までの間に届け出ます。

3.提出先
提出先は、企業が加入している健康保険制度によって次の2通りとなります。
  • 年金事務所(全国健康保険協会管掌健康保険に加入している場合)
  • 年金事務所と健康保険組合(組合管掌健康保険組合に加入している場合)
4.保険料が改定される時期
その年の9月から、標準報酬月額が決定され保険料が改定されます。その標準報酬月額は、9月から翌年8月まで有効となります。