コリックは親の心身の疲労感を著しく高めます
特にコレといった理由もなさそうなのに、火のついたように泣き叫び、普段のあやし方ではなかなか泣き止まないとするならば、その赤ちゃんは、「コリック」かもしれません。
「コリック」とは、日本語で「黄昏泣き」といいます。世界中の様々な文化圏でみられ、日本語の名前に関わらず、黄昏時以外にも起こり得ると分かっています。
<目次>
コリック(黄昏泣き)はいつから始まりいつまで続くのか?
「コリック(黄昏泣き)」がみられない赤ちゃんも多い中、世界中の一定数の親が体験するこの「コリック」とは、生後1・2か月頃から始まり、生後5・6ヶ月頃には、ぴたりとおさまります。期間限定とはいえ、愛おしい赤ちゃんが激しく泣き続ける様子に、親の疲労感も著しく増大するものです。コリックの赤ちゃんを持つ母親は、より産後ウツになりやすいとも分かっています(*1)。では、コリックの赤ちゃんを持つ親として、何ができるでしょうか。まずは、コリックの原因を理解することで、その対策もみえてくるはずです。
コリック(黄昏泣き)の原因は諸説あり
コリックは赤ちゃんの心身が発達するとともにおさまります
1. 腹部の不快感
消化不良、ガスがたまっている、腸内の分泌量のアンバランスなどが理由とされています。
2. 特性
生まれつき、外からの刺激に対して敏感な赤ちゃんもいるようです。生後数時間後には、オムツを替えたり着替えたりといった際の赤ちゃんの泣き叫び方によって、その子がその後、コリックになるかどうかを判別できるという報告もあります 。(*2)
3.神経系の未発達
赤ちゃんによっては、一旦「気に入らない状態」に陥ると、その状態から抜け出すことが難しい場合があるといいます。それでも、年齢が上になるにつれ心身がより発達し、怖い夢を見たり、嫌なことを思い出したり、不快な感覚がしたとしても、よりスムーズに気持ちを切り替えられるようになるものです。
コリックの原因には、こうして様々な説がありますが、いずれにしても、赤ちゃんの心身の成長につれ、おさまっていきます。
何らかの「疾患」が引き起こすコリックというのは、5パーセント以下とされています(*3)。 それでも、もし心配でしたら、小児科で診てもらうのも方法です。「病気ではない」と安心することで、親も少し肩の力が抜け、泣き続ける赤ちゃんにより余裕を持って付き合うことができるでしょう。
コリック(黄昏泣き)への対策・対応
以上のコリック(黄昏泣き)の原因をみると、赤ちゃんが泣き叫んで止まらないのは、「成長過程にある身体の不快感」、もしくは、そうした「不快感から気持ちをうまく切り替えられない」ためといえるでしょう。ですから、赤ちゃんの不快感を紛らわせ、気持ちを切り替えられるよう助けるといったイメージで働きかけると、効果的です。そのためには、赤ちゃんの5感に適度な刺激を与えてみましょう。例えば、次のような13の対応ができます。
1. 音を立てる
赤ちゃんは胎内にいた時、お母さんの心音や血液の流れる音など、様々な音を聞いていました。そうした胎内の環境を再現することで、不快感から気がそれ、安心することもあります。掃除機をかけたり洗濯機の傍に寝かせるなど、少し迫力のある音もいいですし、赤ちゃんの耳元でシーシーという声を立てたり、風鈴などの金属音が長く響くような音も効果的です。また水の流れる音や波の音など、自然の音を集めたCDなどもいいでしょう。
2. 視覚を惹きつける
赤ちゃんは光るものや色彩のはっきりしたものが大好きです。サンキャッチャーなどを目の前できらきらと揺らしてみたり、はっきりとした輪郭の絵などを見せると、はっと凝視することで、気持ちが切り替わるきっかけとなることがあります。
3. 暖かいものをお腹に当てる
お湯を入れ少し暖かくしたボトルや、暖かい濡れタオルなどをお腹に当ててみます。不快感が紛れます。
4. 場を変える
外へ出てみましょう。気温や湿気の変化、風が肌に吹きつけ風、雨上がりの匂いなどを感じることで、気持ちが切り替わるものです。
5. 動く
じっとしているよりも、目に入る景色の変化や、振動を感じることにより、気が紛れます。抱っこして歩くのもいいですし、ベビースイングや、少し振動する椅子などに座らせるのもいいでしょう。
6. お風呂の温度や時間帯を調整する
少し熱めのお風呂に全身を浸すことで、気持ちが一気に切り替わることがあります。一方、コリックが常にお風呂の時間とかぶってしまい、お風呂に入れることでぐずぐずが増すということもあるかもしれません。そうした場合は、お風呂の時間を早めにし、夕方以降は、異なる刺激を与えるよう心がけるのも方法です。
7. ベビーマッサージ
赤ちゃんのガス抜きのためなど、お腹専門のベビーマッサージもあるようです。暖かい手でゆったりとマッサージされることで、リラックスできます。
8. ドライブする
車の振動やエンジン音などが不快感を紛らわせてくれます。
9. 抱き方を変える
膝の上や腕の中で赤ちゃんをうつぶせにする「コリック抱き」を試してみましょう。大きな口を開けて泣き叫ぶことでたまってしまう体内のガスも、外へと出易くなります。
10. 包む
下の写真のように包んでみます。窮屈そうに見えますが、スペースの限られた胎内の環境に似ているため、赤ちゃんも安心します。急に手を上げるなどの「モロー反射」による刺激も防げます。
きゅっと少しきつめに包んでみます
11. 親の身体にくっつける
常に赤ちゃんを抱っこしている文化圏では、コリックが見られないといわれます。(?4)スリングやおんぶ紐を用い、長時間抱っこやおんぶをしていても親が疲れ過ぎないよう、工夫してみましょう。
12. より頻繁に授乳する
頻繁に授乳する文化圏でも、黄昏泣きが見られないとされています。授乳間隔にそれほどこだわらないのも1つの方法です。抵抗がないようでしたら、おしゃぶりを使うのも効果的です。
13. 食事を変える
乳製品、ナッツ、卵、フルーツ、炭水化物、カフェイン、チョコレートなどへの不耐性が「消化不良」の原因になることもあります。母乳を与える母親がこれらの食材を控えることで、黄昏泣きが改善する例もあります。またミルクの銘柄を変えることで、効果がある場合もあります。
コリック(黄昏泣き)の赤ちゃんを放置してもいい?
「1人で泣かせっぱなしにしておけば、自分で泣き止むことを身に着けるものよ」といったアドバイスを聞くこともあるかもしれません。そして、何をしても激しく泣き叫ぶ赤ちゃんを前に、「もうお手上げ!」と放置したくなるのも、人として、とても自然な感情です。それでも、コリックがみられる5・6か月頃までの赤ちゃんを1人放置し、「自分で泣き止む」ことを学ばせるのは、まだ早過ぎるでしょう。また、少し放置するぐらいでは、ますます激しく泣き叫ぶものです。
スリングなどで親の身体に常にくっつけておくことが習慣となっている文化圏では、コリックがみられないという報告もあります(*4)。「お手上げ!」となったら、「今は、どうしても泣きたくてしょうがないのね」といった気持ちで、抱っこやおんぶをしたまま、泣かせっぱなしにするのも方法です。
コリック(黄昏泣き)を持つ赤ちゃんの親として覚えておきたいこと
こうしてコリック(黄昏泣き)への対応を様々試してみる際、親の心身の状態にも、気をつけてみましょう。必死の形相で肩に力を入れながら接するなら、赤ちゃんもますます強張ってしまいます。お母さんお父さんのせいで、赤ちゃんが泣き叫んでいるわけではありません。たまたまそうした性質の子を授かり、それも、期間限定と思い出しましょう。
また、できるだけ周りの助けを借り、休むよう心がけて下さい。赤ちゃんを短時間でもお世話できる方がいるといいのですが、それができない環境ならば、料理や家事もできるだけ簡単にすませ、後回しにできることはとにかく横におき、赤ちゃんが眠り始めたら、一緒に休むようにします。
そうして、なるべくゆったりとした気持ちで赤ちゃんに接することで、親のリラックスした様子が伝わり、赤ちゃんが、より落ち着いていくこともあるでしょう。
大変ですが、これもまた赤ちゃんの「成長過程」と割り切り、様々な工夫を試し、乗りこえていきましょう。
出典:
(*1)Murray L, Stanley C, Hooper R, King F, and Fiori-Cowley A. 1996. The role of infant factors in postnatal depression and mother-infant interactions. Dev Med Child Neurol. 38(2):109-19.
(*2)St James-Roberts I, Goodwin J, Peter B, Adams D, and Hunt S. 2003. Individual differences in responsivity to a neurobehavioural examination predict crying patterns of 1-week-old infants at home Developmental Medicine & Child Neurology 45(6):400-407.
(*3)Barr RG. 1998. Colic and crying syndromes in infants. Pediatrics 102: 1282-1286.
(*4) Fouts HN, Lamb ME, and Hewlett BS. 2004. Infant crying in hunter-gatherer cultures. Behavioral and Brain Sciences 27(4): 462-463.
おくるみ写真: by Produnis, Wikimedia Commonsより
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