箱で構成される外観を考えるときの3つの視点
次に、美しい外観をつくるために、基本となる「箱」の考え方について説明していきましょう。ヘーベルハウスでは、基本の「箱」を、以下の3つの視点で構成していくべきだと考えています。
- 複数の箱をどう組み合わせるか
- 水平・垂直をどのように取り入れるか
- えぐり取る、削り取ることでどう形づくるか
この3つの視点で基本の「箱」を完成させ、必要に応じて前述の「加飾」を施すことで、バランスのとれた美しい外観を生み出すことができます。
具体的にどのようなことなのか、例を挙げながら説明していきましょう。
1つめの視点「複数の箱をどう組み合わせるか」
住宅は基本的に「箱」であると説明してきましたが、ひとつの箱で形成されている場合もあれば、複数の箱を組み合わせて建物全体が構成されている場合もあります。複数の箱を組み合わせるときは、最大でも3つ以下に抑えるのが美しくまとめるポイントです。そのうえで、「どんな箱をどのように組み合わせるか」がとても重要になってきます。箱を3つ組み合わせたような構成で成り立っている外観。複数の箱を組み合わせる場合でも、積み重ねたり、並列させたりと、いろいろな方法が考えられます
「どんな箱を?」は、大きさや箱の形のことで、同じくらいの大きさの箱を複数組み合わせることもあるでしょうし、まったく大きさの異なる大小の箱を組みわせる場合もあるでしょう。「どのように組み合わせるか?」は、上下に積み重ねるのか、互い違いに横に並べるのか、2つの箱を組み合わせるのか、3つの箱にするのか、といったことです。
このように「どんな箱」を選び、「どのように組み合わせるか」は、無限に選択肢があります。
2つめの視点「水平・垂直をどのように取り入れるか」
水平や垂直とは、縦や横のラインのことです。建物の外観は縦や横のラインを上手に取り入れ、ほどよく強調すると、すっきりとした印象に仕上げることができます。縦横のラインをつくり出す主なものは、「柱と梁」、「袖壁と庇」です。
箱型の建物に柱と梁で格子のような縦横ラインをつくり出したり、袖壁と庇で縦横ラインを強調します。下の外観は、水平に伸びる庇の横ラインと、垂直に立ち上がる袖壁の縦ラインが直角に交わり、逆L字のラインを生み出しています。2つの縦横ラインを遮らないように、窓の配置にも工夫が施されていますね。
2つの箱を互い違いに組み合わせたような外観。大きな窓を囲むように袖壁と深い庇がつくり出し、ラインがすっきりとした印象にまとめています
庇は、強い日差しを遮るなど、室内に入る光をコントロールしたり、外観デザイン上で処理が難しい窓シャッターのシャッターボックスを隠す効果もあります。また、袖壁は外観の演出に効果的なだけでなく、外からの視線を遮り、火に強いというメリットもあります。
周囲からの視線を気にせずに、光や風を取り入れるようにするため、袖壁を採用した一例です。ヘーベル版による袖壁は、耐火性にも優れているため、類焼の不安を軽減します
防火地域や準防火地域では、隣地または道路から一定の距離を延焼の恐れがある範囲を「延焼ライン」と設定して、その範囲に入る建物の外壁や屋根、開口部に規制がかかります。窓の場合、延焼ライン内の窓は防火性の高い窓にしなければならないのですが、袖壁によってそれを避けることが可能になります。さらに、法規制をクリアするために取り付ける防火用の窓シャッターが不要になれば、開口部の上部のシャッターボックスも不要になり、外観をきれいに見せることができるでしょう。
3つめの視点「えぐり取る」「削り取る」
住宅の形の基本は「箱」であると説明しましたが、基本の箱の一部をえぐり取ったり、削り取ることで、単純な箱ではない個性的な形が生まれます。以下で紹介する外観は、箱の一部分をえぐり取ることによって形づくられています。窓やバルコニー、玄関付近など、いろいろな場所を異なる大きさにえぐり取っていますが、複雑でありながらもバランスのよい住宅になりました。
1階の玄関付近を大きく深く、2階や3階を薄くえぐり取って窓にしました。えぐり取る面積や深さに大小をつけることで変化が生まれます
以下は、複数の箱を組み合わせ、ひとつの箱の上部を大胆に削りとることで、箱に大きな三角形を組み合わせた構成になっています。思い切って斜めに削り取ることで、個性あふれる外観ができ上がりました。
大胆に削り取られた三角形の屋根によって個性的な形の外観になりました
斜めの袖壁で程よく視線がさえぎられたバルコニー
室内は、屋根の勾配をそのままいかし、天井高や床のレベルに変化のある空間になっています
実は、この三角屋根の部分は、天井が高く、室内も変化に富んだ構成になっています。室内のプランを考えるのと並行してこれらの3つの視点から外観を考えていくと、空間の居心地と同時に、外から見たときの美しさを兼ね備える「箱」になると思うのです。
素敵な家を求めて、もっと外観にこだわりを
ここまで、外観の基本の形や考え方ついて説明してきましたが、美しい外観をつくるのは、実は難しい作業なのかもしれません。なぜなら、「美しい」「素敵な」「格好いい」外観にしたいという希望を伝えたとしても、「どう美しい」のか、「どれが素敵」なのか、はっきりとした基準はなく、非常に曖昧な表現になってしまうからです。はっきりとしない内容を設計士に伝えるのは、なかなか難しいことだと思います。そして、美しい外観は、間取りなど室内のプランによっても大きく影響を受けます。採光や通風を快適にしようと考えると、自ずと窓の位置も決まってきます。つまり、間取りを煮詰めていくと同時に、外観など立面の一部が決まっていくのです。素敵な外観と快適な暮らしを両立するためには、平面のプランを考えるのと一緒に、立面にも目を向けていく必要があることを覚えておくとよいでしょう。
あまり難しく考える必要はありません。家を建てるというのは人生の中でも大きな出来事です。特に、ご近所や道行く人に絶えず見られる外観を美しくしたいと思うのも当然のことでしょう。
そこで提案したいのが、専門家の意見に耳を傾けるということです。ヘーベルハウスでは、外観に対してもいろいろな手法やアイデアを持っているだけでなく、どのようにしたら美しく、格好よく、住まいの機能を損なわない外観になるか、これまでの数多くの経験に基づくノウハウを持っています。
ここで紹介した手法や事例はその一端です。これらを参考に、ぜひ、誰からも「素敵」といわれるような家をつくっていただきたいと思います。
【関連サイト】
・敷地を有効に活用した3階・4階建て実例はこちら
・実例 外観から探す(3階建て)
・テラクラフト(terra craft)
・天空こども城
・FREX monado
・カットアンドゲーブル(CUT&GABLE)