実例を紹介しながら、説明していきましょう。
法律や敷地条件によって外観が決まることもある
外観を考えるときの法則を説明する前に、3階建て住宅の場合、どんな外観があるのか、いくつかの事例を見てみましょう。仮に、理想の外観があったとしても、建築基準法による斜線制限などによる制約を受け、建物の形が決まってしまうことがあります。代表的なのは、以下のように建物が斜めにカットされ、台形にならざるを得ない場合でしょう。こういった制約については避けることはできません。そこで、法規制を前提として、いかにうまくまとめるか?が、設計者の技量に関わってきます。
斜線制限の角度に合わせて勾配屋根をつくることができるため、目いっぱい居室空間を広くとることが可能です
ヘーベルハウスでは、こういった規制を踏まえた上で、住みやすさを保ちながら美しい外観に仕上げる方法をいくつも開発しています。
具体例のひとつは「斜めの構造体」の開発です。3階部分に斜めの構造体を活用し、斜線制限の角度に合わせて勾配屋根を用意しているため、上の写真の「FREX monado」のような外観を実現できます。3階部分の居住スペースを最大限広く取れるようにするなど、室内の快適性の向上も目指して開発しました。
また、別の例としては、「天空こども城」のようなモデルです。建築法規的には問題なく3階建て住宅が建築できるものの、2階建てと3階建てが混在しているような地域では、道路から見上げたときの高さが気になるものです。
以下の外観で、3階部分に傾斜がついているのがおわかりいただけるでしょう。このように、部分的に屋根をかけた外観にすることで、完全な箱型の3階建てに比べると高さが目立たず、周囲への圧迫感を抑えることができるのです。
実際は、3階建て住宅ですが、道路側から見ると、屋根が手前に傾斜しているため、2階建て住宅と並んでも、見上げた時の圧迫感が軽減されるように工夫されています
構造によって外観の自由度は変わる
法規制だけでなく、建物の構造体によっては、望むような外観を実現できない場合もあります。ヘーベルハウスは、柱と梁で支えるシステムラーメン構造を採用しているため、柱と柱の間隔を大きく取れるうえ、筋交いなどが入ることがないので、非常に設計の自由度が高いことが特長です。以下の「terra craft」の外観のように、前面いっぱいに窓を並べて設けることもできます。都市部では、周囲に住宅が密集しているなど、道路に接した面以外は大きな窓を設けられないケースが多いものです。しかし、重鉄制震システムラーメン構造では、筋交いなどの制約を受けず、柱部分以外であればどこにでも窓をとることができます。
道路に面した全面に開口部を設け、窓の下に花台を設けた例です。筋交いなどが不要で、どこにでも開口部を設けられるからこそ、実現可能な外観デザインです。室内からは豊かな緑を感じることができます
柱と柱の間隔は、最大で6.4mまであけることができるため、大きな空間をつくることができ、自由なプランニングが可能です。そのため、必要なところに窓を取り付けることができ、このように窓が並ぶような外観も実現できます。窓の位置は外観だけでなく、快適な生活に欠かせない採光や通風を大きく左右する要素です。そういった面でも、窓の位置を自由に決められるということは大きなメリットだといえるでしょう。
住宅の外観の基本は「箱+加飾」
窓の位置を自由に決められる構造をもつヘーベルハウスだからこそ、外からどう見えるかを気にしながらプランニングすることができます。では、美しい外観にするために、知っておきたいことや、考え方の法則について話を進めていきましょう。住宅の外観の形をひとことで表現すると「箱」です。
この箱をいかに美しくまとめるか、が外観の基本と言っても過言ではありません。家をシンプルな箱としてとらえ、その箱に何かしらの手を加えて完成させるのが外観だと考えるとわかりやすいと思います。
多くの住宅では、外壁にアール(角の丸み)をつけたり、花台やバルコニーなどがついているため、複雑な形をしているように見えますが、基本的には「箱に装飾を加えた形」で成り立っています。3階建て住宅は一定以上の高さがあるため、平屋や2階建てに比べて外壁の面積が大きく、全体をまとめるのは一見難しそうに思えるかもしれませんが、概ね考え方は同じです。
ヘーベルハウスでも、外観は箱に装飾を加えた形、つまり、「箱+加飾」が基本だと考えています。ここでいう「加飾」とは、具体例を挙げるとすれば、窓やルーバー、アクセントカラー、屋根のことです。
たとえば、以下で紹介する外観は、箱型の住宅に加飾としてルーバー(格子)を2階部分に配しています。外壁とは異なる色のルーバーを採用することで、全体を引き締める役目も果たしています。
都市部のように、光は取り入れたいけれども外部の視線が気になるという場合には、ルーバーという手法はとても有効です。しかし、配置にあたっては、外観デザインがどのようになるのか全体像をよく考えて、大きさや位置、ルーバーの色などを検討する必要があります。
ルーバーを2階部分に配置し、色を変えることで、箱型の外観に表情を加える演出。光の取りこみと、視線を遮断することも両立させています
このように、ほとんどの外観は「箱+加飾」で構成されていると考えると、全体像やバランスがどうなっているか、とらえやすくなると思います。
次ページでは、箱で構成される外観を考えるときの3つの視点について説明していきます>>