“頭”では作曲しない。“ハート”から溢れ出るものだけを書く

年末には、彼の名曲の数々を世界的なスターたちが歌う人気コンサートが日本初上陸。25日の記者会見では、婚約者でもある和央ようかさん、ドイツのミュージカル俳優トーマス・ボルヒャートさんが『ドラキュラ』等のナンバーを熱唱した。『フランク・ワイルドホーン&フレンズundefinedジャパンツアー』12月23日=大阪、26~27日=東京?Marino Matsushima

年末には、彼の名曲の数々を世界的なスターたちが歌う人気コンサートが日本初上陸。25日の記者会見では、婚約者でもある和央ようかさん、ドイツのミュージカル俳優トーマス・ボルヒャートさんが『ドラキュラ』等のナンバーを熱唱した。『フランク・ワイルドホーン&フレンズ ジャパンツアー』12月23日=大阪、26~27日=東京(C)Marino Matsushima

――あなたの楽曲の特徴の一つに、アグレッシブな曲でのアクの強さが挙げられると思います。『モンテ・クリスト伯』の「地獄におちろ」や『カルメン』のガルシアのナンバーなどですが、こうした曲がお好みなのでしょうか?

「僕のもともとのバックグラウンドから出てくるのではないかな。というのは、僕の夢はもともと劇場とは無縁で、アメリカン・フットボールの選手になろうと思い、8年間やっていたんだ(笑)。アスリートの血がなせるわざだろうね」
『モンテ・クリスト伯』写真提供:東宝演劇部

『モンテ・クリスト伯』写真提供:東宝演劇部

――もう一つ、『ドラキュラ』のミナのナンバーや『デスノートThe Musical』の「残酷な夢」のように、“情念”のこもった歌も印象的です。なぜか日本の「演歌」を思い出させるのですが。

「なぜだろうね(笑)。婚約者のタカコ(注・和央ようかさん)が一緒にテレビを観ていてよく“これが演歌よ”と教えてくれるから、演歌がどういうものかは知っているけど、影響を受けているわけではないかな。

――情熱的なメロディを書く方はたくさんいらっしゃるけれど、あなたのメロディには他の作曲家とは違う何かがあるんですよね。内に向かう情念というか…。

「僕の音楽が人と違うのは、たぶん僕が、“頭では書かない”からではないかな。ハートから溢れ出てくるものを書いているし、それをセクシーに保とうとしている。音楽って官能的なものだと思うんだ。曲を書いているとき、僕はとても官能的な気分になっている」

――作曲はどんな手順でなさっていますか? 一日8時間ピアノの前に座ってとか、頭の中にメロディを貯めていって一気に書くとか……。

「両方だね。大量のプロジェクトが同時進行しているから、何時間もピアノの前に座り続けることもあれば、近年は頭の中にメロディをストックしておいてということも増えてきた。頭の中で何回も歌ってみて、一晩寝てそれでもまだ自分の中に残っていれば書くと言う感じだ」

――新作リストの中に、スイスで上演の『アーサー王』という作品を見つけましたが。

「既にオープンしているよ。この作品は僕の子供たちのアーサー王物語好きがきっかけで書いたんだ。僕の多くの作品はこういうところから出発している。クラシックストーリーを、若い世代も受け入れられるような言語で書き直すということは、非常に楽しい作業だね」
『カルメン』(C)ホリプロ

『カルメン』(C)ホリプロ

――今の夢は?

「今、まさに夢の中を生きているようなものだけど(笑)、オペラを書いてみたいね。実は、とあるオペラハウスとそういう話はしているところだ。それとバレエ音楽も書きたいな。

昔の僕はゴールを設定するタイプで、30歳までにナンバーワン・ソングを書こうとか、40歳までにブロードウェイで自分の作品を上演しようとか設定して実現してきたけど、今は“学生の気持ちで取り組む”ことを大切にしている。どのショーをやるときも学びがある。今回の『デスノートThe Musical』でも多くを学んだよ。今回、僕は“偽のポップミュージック”は書くまいと思って臨んだんだ。僕は今回、“劇場でも通用する本当のポップミュージック”を書こうと思った。だからここで書いている作品のコード・チェンジなどは、今のアメリカのポップチャートに登場するようなものだよ」

――確かに、本作の楽曲を聴いていて(ラジオ番組の)「アメリカン・トップ40」を聴いているような気分になりました。

「よかった。それでなおかつ芝居にはまっていたとしたら最高だね」

――日本のみならず、ヨーロッパからもしばしば新作の依頼を受けていらっしゃいますが、ブロードウェイにはこだわらないのですね。

「演劇界はずいぶん変化してきていて、世界各地のプロデューサーたちはこれまで、多くの作品を輸入上演してきたけれど、近年“自分たちで作って輸出しよう”という気風が生まれてきている。ウィーン、プラハ、東京、ソウル、どこでもそういう機運が盛り上がってきて、それはとてもいいことだと思う。“ブロードウェイ・ミュージカル”というラベルが付くことは素晴らしいけれど、それがすべてではない。『ジキル&ハイド』はこれまで900のプロダクションが生まれているけれど、もはや“ブロードウェイ・ミュージカル”であるかどうかなんて、誰も気に留めなくなった。『モンテ・クリスト伯』はスイスで初演した作品だけど、来年ブロードウェイで開幕する予定だよ。逆輸入という形だね」
『シラノ』写真提供:東宝演劇部

『シラノ』写真提供:東宝演劇部

――日本の演劇人はブロードウェイとは異なりますか?

「ヨーロッパ的なテイストというか、メロディを愛する人々だね。ブロードウェイではエッジイなものが好まれる傾向がある。同じアジアのなかでも、国ごとで文化は異なっていて、日本のお客様はおとなしいけど、韓国では一曲終わるごとにお祭りのようになる。そういった違いは実に興味深いし、僕は理解しているつもりだ。『デスノートThe Musical』以降も日本絡みのプロジェクトはいろいろ進行中で、日本のプロデューサーたちと信頼関係が築けていることをとても幸せに思っている。すべてを楽しんでいるよ」

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彼の作品に出演したことのある俳優さんたちが「体力がないと歌えない」と口を揃える、ワイルドホーン音楽。その“タフさ”はご本人の“アスリート”というバックグラウンドに由来し、その“情念の濃さ”は彼が作曲を“官能的な行為”ととらえているが故……という説明は、新鮮かつ納得のゆくものでした。ご自身的には「ミュージカル界の異端児」を自認しているようですが、ミュージカル界を世界的な視点で観、仕事をしている彼は、実は最も“先端”に居る人なのかも。『デスノートThe Musical』の開幕後も、ますます目の離せないクリエイターであることは間違いありません。

*公演情報*デスノートThe Musical』4月6~29日=日生劇場

*次頁に観劇レポートを掲載しました!*