高齢化と共に増え続ける認知症
元気なシニアも多いですが、認知症は確実に増えています
高齢化と共に認知症は増加傾向にあり、65歳以上の高齢者のうち15%は認知症を発症しているといわれています。2012年時点では、認知症の数は約462万人に上ることが厚生労働省研究班の調査で明らかになっています。
認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく「変性疾患」と呼ばれる病気です。この代表的なものがアルツハイマー病で、認知症の約60%はアルツハイマー病といわれています。
アルツハイマー病に代表される認知症には十分な治療方法が確立されておらず、日々の生活を通じて予防する取り組みが注目を集めています。
カマンベールチーズがアルツハイマー病の予防に有効
カマンベールチーズのアルツハイマー病への予防効果が確認されました
チーズなどの発酵乳製品を摂取することにより老後の認知機能低下が予防されることは疫学の分野では報告されていましたが、認知症への予防効果のメカニズムや有効成分はよくわかっていませんでした。今回の研究により、カマンベールチーズがアルツハイマー病に効くメカニズムが明らかになってきました。
カマンベールチーズのアルツハイマー病への科学的効果
アルツハイマー病の原因物質と考えられているものに「アミロイドβ」というものがあります。アミロイドβとはタンパク質の一種で、アミノロイドβは脳内に過剰に生産され蓄積すると老人斑とよばれる凝集体が形成されます。アルツハイマー病の患者の脳には、多数の老人斑がみられることがわかっています。今回の研究では、アルツハイマー病モデルマウスにカマンベールチーズから調整した餌を摂取させると、脳内のアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの沈着が有意に抑制され、脳の炎症症状が緩和されることが確認されました。
さらに、有効成分としてカマンベールチーズに「オレイン酸アミド」と「デヒドロエルゴステロール」が含まれていることを発見しました。オレイン酸アミドは、脳内のアミロイドβなどの老廃物を除去する役割を担うミクログリアと呼ばれる細胞を活性化しながら抗炎症活性を示す成分です。デヒドロエルゴステロールにも抗炎症活性作用があることがわかっています。これらの成分は、チーズに含まれる白カビの発酵過程で生成されたものと考えられています。
今回の研究により、カマンベールチーズによるアルツハイマー病への予防効果が科学的に裏付けられたともいえるでしょう。今後の認知症解明への進展にも期待が高まっています。