試験合格後に司法書士事務所を開業しようと考えている方は、「開業してお客さんはくるの?」という不安があると思います。これは、誰にでもある漠然とした不安です。顧客の獲得方法は「既存のお客様からのご紹介」「仕事で関連する資格者(税理士、土地家屋調査士、行政書士など)からの紹介」「不動産業者や銀行への飛び込み営業」など、いくつもありますが、この記事では、司法書士業界のことを知らなくてもイメージの湧きやすい「ホームページ」について記載します。自分の事務所のホームページを作り、それをもとに集客するということです。
司法書士事務所のホームページを作っても見てもらえる?
ホームページは見てもらえる?
司法書士を探しているたいていの方は、自宅に近い事務所を探します。法律問題は専門家と依頼者が直接会って解決策を考えるのが通常ですし、お客様のほうも司法書士がどのような人間であるかを実際に会って確認したいと考えます。そのため、司法書士をネットで探すときは「司法書士 地域名」(地域名は自宅のある地域)で検索するのが通常です。そこで、ホームページを作ったら、「司法書士 地域名」(ex. 「司法書士 新宿区」「司法書士 横浜市」)などの検索ワードで上位3位以内を目標にしていただきたいです。
検索上位3位以内に入れる?
検索で上位に表示されるようにする対策をSEO(Search Engine Optimization)といいます。Googleなどは、会社内の人間が1つ1つサイトをチェックしているわけではありません。そこまでする人手はないでしょう。人がチェックしているのではなく、ロボットが自動的にサイトをチェックしています。SEOとは簡単にいうと、Googleなどのロボットが好むようにサイトを作ることです。どのようなSEO対策が効果的かは、多数の企業や個人が研究しており、SEOの知識がない企業が検索で上位に表示させるのは容易ではありません。そのため知識のない企業は、SEO対策をしてくれる専門の業者に有料で依頼をします。SEO対策業者によって金額は異なりますが、月に万単位の出費がかかるのが通常です。
この話はSEO対策をしている企業が多い業界には、そのまま当てはまります。たとえばダイエット業界。「ダイエット」の検索ワードで上位表示させるのは、相当大変でしょう。しかし司法書士業界には、この話はそのまま当てはまりません。
たしかに、SEO対策をしている司法書士事務所もあります。その多くは、SEO対策業者に依頼しています。なかには、コンサルティング会社にコンサルを依頼し、SEO対策も含め総合的にプロデュースを受けている事務所もあります。しかしこれらは、まだまだ司法書士事務所の少数であり、ほとんどの事務所が「ホームページを作成しただけ」「ホームページさえない」というのが現状です。Web関連では、遅れている業界なのです。よって、“地域によっては”、容易に上位表示ができます。
この「地域によっては」という点がポイントです。たとえば、事務所が多く、SEO対策をしている事務所も多いだろうと考えられる「司法書士 新宿区」「司法書士 横浜市」などで上位表示させるには、SEOの最新知識を有しているか、SEO対策業者に依頼する必要があると思います。
ところが競合地域を少し離れれば、事情がまったく変わってくるとよく聞きます。私は神奈川県に在住しており、神奈川の司法書士の知り合いが多いのですが、たとえば、神奈川県内で「司法書士 横浜市」で上位表示させるのは容易ではないと感じています。
しかし、同じ神奈川県の某市で開業した知り合いの司法書士の先生は、ホームページを作っただけで「司法書士 ◯◯市」で上位3位以内に表示されたそうです。地域によってかなり検索の上位表示の難易度が変わる印象です。
このように、司法書士業界の場合、ホームページは「どの地域の事務所か?」で大きく左右されると思われますので、ホームページによる集客を視野に入れるのであれば、競合地域を避けて開業することをお勧めします。
どうやってホームページを作るの?
ホームページ作成
私は、上記のホームページ・ビルダーではなく、SIRIUSというホームページ作成ソフトを使用して作成していますが、ブログを書くような感覚で作成できます(ただし、最初はそのソフト自体に慣れる必要がありますので、多少は苦労します)。
また、これらのソフトは、初めから最低限のSEO対策がされているので、ソフトに従って作成するだけで、最低限のSEO対策がされたホームページができ上がります。業界によってはこれだけでは心もとないですが、前述しましたとおり、司法書士業界はまだまだSEO対策をしている事務所が少ないので、かなり効果があります。
ホームページによる集客の注意点
最後に、ホームページからの集客の際に注意したほうがよい点を記載します。以下の2点にはご注意ください。1.報酬の価格競争になりやすい
ホームページから司法書士探すお客様は、2~3の事務所のホームページはご覧になります。そして、まずチェックするのが「報酬」です。報酬だけで依頼先を決定するわけではありませんが、報酬が安いかは最も重要な決定要素になります。そのため、報酬の価格競争になりやすいというデメリットがあります。
2.危険な依頼もある
司法書士に依頼する方の中には、残念ながら違法行為を要求される方もいます。たとえば、認められていない登記の申請などがこれに当たります。既存のお客様からのご紹介や仕事で関連する資格者(税理士など)からの紹介ですと、こういった危険な依頼であることはあまりないのですが、ホームページでの集客は紹介ではありませんので、どのような依頼かわかりません。その点は十分注意する必要があります。
また、残念ながら「報酬を踏み倒す」という方もいます。報酬を後払いにしてしまうと、「仕事は完了したが、報酬を払わないで逃げられる」こともあります。紹介ですと、紹介者との関係もあり、踏み倒しは起こりにくいのですが、ホームページでは踏み倒しの可能性が高まります。よって、「ホームページからの依頼の場合は、前払いにする」など、対処をしておく必要があるでしょう。
このように、ホームページのデメリットもあります。よって、個人的には、開業当初はホームページでの集客に頼る必要があっても、じきに「紹介中心」に切り替えていけるのが理想的な事務所経営だと思います。