治療に対するコンプライアンスは治療の成果を左右する重要なファクターです

もし治療薬を飲むのを止めてしまったら? 病状によっては、それは心の病気を再発させる可能性もある危険な行為になります

コンプライアンス。それはあらかじめ決められたことを順守すること。さまざまな局面で求められる言葉ですが、コンプライアンスは精神医療でも重要な役割を果たしています。

特に患者さん側のコンプライアンスとして、あらかじめ決められた服薬のスケジュールを患者さんがいかに順守されるかは、病気の予後に大きく影響します。

今回は服薬のコンプライアンスがいかに病状を深刻化させる原因になりやすいかを詳しく解説します。


これまで治療薬を飲み忘れた事はありませんでしたか?

心の病気に限らず、何らかの病気の治療薬を飲む事自体は、もう私たちの生活の一部だと思います。例えば花粉の時期なら抗アレルギー剤、血圧の高い方やコレステロールの高い方はそれぞれの治療薬をお飲みでしょう。しかし、これらの薬を飲み忘れる事はよくある事ではないでしょうか。朝、忙しくしてバタバタしていた、あるいは予期せぬ事が起きて気持ちが動揺していたら、薬を飲むことが頭から抜けてしまうかもしれません。

もっとも、人によっては薬を飲まないのは決して飲み忘れたのではなく、もう調子が良いからその必要はないと判断した……といった事もあるでしょう。もちろんそれが市販薬ならば、自己判断でそうする事になるでしょうが、何らかの病気に対して医師から処方された治療薬を自己判断で中止する事は、個々の病状によっては深刻な結果をまねき得る可能性があります。


心の病気では、自己判断での中止は症状の再発につながりやすい

うつ病、躁うつ病、統合失調症など心の病気の治療では治療薬による薬物療法が大きな柱になっています。心の病気は基本的には脳内の機能に何らかの変調が現われたために、その病気特有の精神症状が出現します。

薬物療法の原理は、治療薬によってこうした脳内の不調に対処していく事です。例えば、うつ病では抗うつ薬などにより、抑うつ症状を出現させている脳内の不調、具体的には脳内神経伝達物質などが関与する問題に対処します。

心の病気の薬物療法は通常、短期間ではなく、数週間、数カ月、場合によっては年単位と、長期間になりやすいです。その間、気持ちの落ち込みなどが消失し、症状自体は落ち着いている時期でも、それまでの治療によって改善した脳内の機能を維持していくために、治療薬によるメンテナンスがある程度の期間、必要になってきます。

その際、患者さんが服薬を自己判断で中止してしまう事は実はして少なくなく、それは脳内の不調を再び悪化させ、症状が深刻化してしまう大きな要因の一つになっています。


コンプライアンスが守られない種々の要因

まず心の病気では服薬の期間が長期間にわたりやすいことが、コンプライアンスに問題を起きやすくさせています。何かの折に服薬を忘れてしまう事もあるかもしれません。場合によっては、そのまま服薬が、それっきりになってしまうかもしれませんが、長期間、服薬を続けていくうちに現われてきた副作用は自己判断で服薬を中止してしまう大きな要因の一つです。

個々の副作用の現われ方は、治療薬のタイプや服薬の量、治療薬が開発された時期、そして個人個人の生理的な条件など、さまざまなファクターが関与しています。

個々の治療薬の副作用に関しては大まかな統計情報はありますが、具体的な現われ方には個人差がかなりあり、言わばその人と治療薬との相性と見なせるような面もあります。同じ治療薬を用いても、ある人には不快な副作用は特に現われず、ある人には性機能に何らかの問題が生じた……といった副作用が現われる可能性もあります。こうした際は治療薬の調整など、その状況に応じた最善の対処がなされる事になりますが、場合によっては医師に副作用の問題を相談することなく、自己判断で服薬を中止してしまう可能性もあります。

また、薬物療法のベースにある、患者さんと医師との信頼関係に何らかの問題が起きてしまった場合、例えば、普段は特に問題がなくても、ある診察日、医師のその日の態度に少しカチンとくるようなものがあって、あとで家に帰ると、それに対する一種の抗議の意味から、その日から服薬を守らなかった……といった事もあるかもしれません。

こうした様々な要因から服薬のコンプライアンスが守られない事が、症状が再び深刻化する大きな要因の一つになっています。これは心の病気に限らず、一般的な身体疾患にも当てはまる事だと思います。

もし何らかの治療薬を常用している方は、それを飲まないと、いったいどういう事態が起き得るかは熟知しておきたい事です。その際は薬の飲み忘れなどにはどうかお気をつけ下さい。


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