最新アメリカンマッスルのワイルドさをみた
が、しかし。ひとたびアクセルペダルを踏み込んでみれば、洗練されたキャラクターなど、どこかへ吹き飛んでしまったようだ。それまで猫なで声だった猛獣が、いきなり牙をむき出しにして襲いかかってきた。その加速、FRで敵無し。メーカー発表値の0-100km/h加速数値3秒弱は、ダテじゃない。人とクルマとがより密接な関係にある高性能ミドシップモデルの3秒とは、まるで違う3秒だ。なにせ、強大な力を発し続けるエンジンと、そのパワーを遠慮会釈なく路面へ叩き付ける後輪との間に、ドライバーはちょうど板挟みになって、必死にコントロールしようとしているのだ。もちろん、昔のマッスルカーのように、タイヤがバーンアウトして前に進まない、なんてことはない。そこは、優れた電子制御のおかげで、少しは滑りつつも、しっかりと路面を捉えて前へ前へと進んでいくわけだが、その進み方に、やはりえも言えぬスリルがある。力と力の間でドライバーがねじ切れそうな、そんなスリルだ。
FRのスポーツカーで3秒を切るとなると、空気を切り裂く感覚もハンパない。空力のいいミドシップカーとは、比較にならぬ抵抗感があって、さらなるスリルを呼び込む。空気の壁をムリヤリこじあけていく感覚に、最新アメリカンマッスルのワイルドさをみた気がした。
優れたシャシー制御と、ありあまるパワーを使ってのハンドリングもまた、新型Z06の楽しみのひとつ。これまたミドカーにはない、豪快なハンドリングを楽しむことができる。
忘れてはいけないのが、ブレーキ性能の高さだ。特に、ブレンボ製セラミックローターを持つブレーキシステム搭載車は、踏むたびに行く手を硬い壁で遮られ、地面に強力な磁石で張り付けられるような制動フィールである。これがあるから、またFRの700ps近くを踏んでやろうという気になる。
アメリカが、ついにその底力を見せつけはじめた。そう、半世紀前のように!