『CLUB SEVEN』観劇レポート
エンタテインメントの“原点”に思いを致させる
“限界を超えた”役者たちのショーマンシップ
『CLUB SEVEN 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部
もともと7回の開催を目指しつつ、好評によりその後も回を重ねてきている本作。10回目の今回は“原点回帰”がテーマということで、第8弾、9弾は男性のみでしたが今回は女性キャストも2名参加、常連もいれば“初参戦組”もという9名の布陣で、ほどよい緊張感のなか開幕しました。
『CLUB SEVEN 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部
シャープでマニッシュなオープニング・ナンバーに続くのは『CLUB SEVEN』恒例のスキット集。アイドルのオーディションやメディアの取材を受けるゾンビたちなど、実力のあるパフォーマーが真剣に演じるからこそ面白いコミカル・シーンが、次々登場します。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部
思いっきり弾けた芝居がスタンダードの『CLUB SEVEN』なので、ふだんは“イケメン”“二枚目”で通っているメンバーの女装や汚れ役はもはや“当たり前”。しかしその中でも“謎の金ぴかツタンカーメン”や“掃除のおばちゃん”役を、確信犯的(?)な強烈さで演じる東山義久さん、さすが若手のリーダー格です。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部
そうかと思えばドラマティック・ダンス『悪魔の赤い靴』では、ヒロインを翻弄する“悪魔”役できめ細やかな美意識が光り、ダンサーとしての魅力も発揮。このシーンではヒロイン役、蒼乃夕妃さんの伸びやかなダンスも見どころです。1幕最後は9人の、“仲間たち”への思いのこもった、あたたかくも爽やかなメッセージソングで締めくくり。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部
2幕は恒例の「ミニ・ミュージカル」から。今回は“人間のアンドロイド化が進められる2070年”を舞台に、知能を持ったアンドロイドと人間たちの葛藤がスリリングに描かれます。進化したアンドロイドは自我を持ち始めますが、中河内雅貴さん演じる一人は人類に反旗を翻し、それを阻止しようとする東山さん扮するアンドロイドは、自身の創造主である女性博士に恋をしてしまう。人間と“人間でないもの”の境界線はどこにあるのか、人間らしさとは何なのか……。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部
理性と感情の間で揺れる女性博士役の白羽ゆりさん、走る前後のちょっとした“溜め”のポーズや動きでアンドロイドらしさを巧みに表現する東山さんはじめ、メンバー全員がキャラクターを生き生きと演じ、密度の濃い短編に仕上がっています。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部
続いては玉野さんが幕前にあらわれ、第10回公演に寄せる思い、「これからもメッセージ性のあるオリジナルミュージカルを作って行きたい」という決意表明を語った後、出演者を一人ひとり舞台に呼び込み、その日の“お題”に沿って質問を投げかけます。(この日のテーマは“自分を動物に例えると?”で、一番“おお~”の声が高かったのが中河内さんの「興奮したチワワ」…。蒼乃さんの「踊るとクロヒョウ!」発言はその後、イジリのネタと化していました)。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部
各メンバーの持ち味もキャラクターも一通りわかったところで、これも『CLUB SEVEN』のお約束、お待ちかねの「50音メドレー」がスタート!“あ”から“ん”まで、該当する音で始まるミュージカルナンバー、ヒット曲、CMソング等々が、最近の流行語なども交えてノンストップ、怒涛の如く展開します。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部
女性も動物もなんでもござれ、瞬時の変身で役者としての抜群の柔軟性を見せる西村直人さん、時折生じる玉野さんからの“無茶振り”にも必死に応じる姿が頼もしい中河内さん、相葉裕樹さん、佐々木喜英さん、開幕間もないのにこのテンションで大丈夫?というほどの全力ぶりが清々しい、初出演の大山真志さん。出演者たちのあんな姿、こんな姿に大いに笑わされた後に、キャスト全員の“んー”というハミングでたどり着くのは、“あの名作ミュージカル”のナンバー。人間に与えられた時間の短さと愛をうたう歌詞が、エキサイティングなひと時の後にすっと聴く者の心に染み入ります。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部
メドレー内にはやはり本作の常連で、今回は出演していない吉野圭吾さんへのオマージュ・ソングも登場していた今回の舞台。構成・脚本・振付・演出のどの面にも、それらを手掛けた玉野和紀さんの人間愛が溢れ、口周りの筋肉がほぐれるばかりでなく、あたたかさに包まれて帰途につける作品でもあります。エンタテインメントの原点に思いを致させ、出演者がその後は“身内”であるかのように親しみを感じてしまう舞台。一度観ればやみつきになる……かもしれません。
(本作ご出演者への過去のインタビューはこちら。
大山真志さん)