今拓哉undefined1968年千葉県生まれ。東京理科大学在学中に劇団四季オーディションに合格し、研究所入所。『李香蘭』『キャッツ』『エクウス』など様々な作品に出演。97年に退団後はミュージカル『レ・ミゼラブル』『カンパニー』『エリザベート』、ストレートプレイ『雪やこんこん』、NHK大河ドラマ『篤姫』など幅広く活躍している。(C) Marino Matsushima

今拓哉 1968年千葉県生まれ。東京理科大学在学中に劇団四季オーディションに合格し、研究所入所。『李香蘭』『キャッツ』『エクウス』など様々な作品に出演。97年に退団後はミュージカル『レ・ミゼラブル』『カンパニー』『エリザベート』、ストレートプレイ『雪やこんこん』、NHK大河ドラマ『篤姫』など幅広く活躍している。(C) Marino Matsushima

*3ページ目に観劇レポートを追記掲載*

時は平安末期。福原遷都を夢見る平清盛は、宋との交易を実現するため、大輪田泊(今の神戸港)の建設を命じる。武士の世を夢見て集まった若者たちは懸命に取り組むが、「ちぬの海」(今の大阪湾)の波は高く、犠牲者が続出。泊の建設は叶わぬ夢なのか……。

歴史に埋もれた「名もない若者たち」が、志高く困難に立ち向かう姿を描いた新作ミュージカル『ちぬの誓い』で、今拓哉さんは若者たちに次々と非情な指令を下す陰陽師役を演じます。最近まで出演していた『KACHI BUS』では、主人公の気のいい幼馴染を爽やかに演じていた今さんですが、今回は真逆(?!)のお役。どんな心持で取り組んでいるのでしょうか。

名もなき若者たちの“志”に共感できる作品

――TSミュージカルファンデーション(以下TS)には『風を結んで』『AKURO』『Calli~炎の女カルメン~』『天翔ける風に』『Diana~月の女神ディアナ~』『客家~千古光芒の民~』に続くご出演ですね。

『AKURO』撮影:相澤裕史

『AKURO』撮影:相澤裕史

「TSの作品は、声をかけて貰えればスケジュールの許す限り必ずやると決めています。TS作品の魅力は、本気度が高い人たちが集まっている場だということ。誰しも自分のことを第一に考えてしまいがちですが、TSの現場は年齢もキャリアも関係なく、みんなが一ミリでも作品を良くすることに集中しようとしています。カッコ悪いところもさらけだして、作品創りのために一歩でも進もうよという空気に満ちている。定期的に出させてもらっていますが、自分が役者としてちゃんと演劇と向き合ってるか、再確認させてもらう場なのかなと思っています」

――その“場”を牽引しているのが演出家の謝珠栄さん。今さんから見て、どんな方ですか?

「熱い!燃え盛ってますよ、いつも(笑)。作品を作るうえで本気で立ち向かわないとヤケドするほどの、ものすごいエネルギー、バイタリティーを持つ演出家です。そして、出演者全員をきっちり見ていてくれる。きっと、謝さんの辞書には妥協という文字がないんですよ。ずっと舞台に関わってきた方なので、だれか一人でも手を抜けば作品が確実にそこから崩れて行く怖さをご存じなんだろうと思います。楽をしたり妥協したり、逃げたりする人を許さず、真剣勝負を挑んでいる感じです」
『天翔ける風に』撮影:相澤裕史

『天翔ける風に』撮影:相澤裕史

――稽古はまだ序盤ですが、台本を読まれての印象は?

「おお、また熱いメッセージだな~と。(一般的に)歴史物語が陰と陽の“陽”の部分を取り上げがちであるのに対して、TSでは、名を残していない“陰”の人々の物語が多いんですよ。今回も、大輪田泊の普請のために集まった、(名もない)若者たちが主役。彼らが悩みもがき、大きな犠牲を払いながら、歴史の礎となって行く姿に光を当てています。そういう作品の中で、僕は歴史に名を遺した側の人物、つまり主人公の“障壁”役を担当することが多いんです(笑)。今回も、障壁としてちゃんと立ちはだかる存在感は出したい。でもわかりやすい“悪”で済ませる気はありません。人として抱える弱さや苦悩といった心の闇にも迫り、理解して演じたいとは思っています」

大きさ、恐ろしさを醸し出す秘訣

――障壁という意味では、昨年の舞台『冒険者たち~The Gamba 9~』でネズミたちの敵、イタチのノロイを演じていらっしゃいましたが、お一人で立っているだけで、ネズミたちが束になって立ち向かっても絶対倒せないと絶望させるほどのオーラを発していて、改めて今さんの凄さを感じました。

「そんなオーラが出ていたら嬉しいなぁ(笑)。絶対勝てないと思われるくらいのエネルギーを出したかったから。“あ、この人には勝てちゃう”と思われてしまったらネズミ役の人たちもお客様たちもつらいと思うから、絶対的な大きさを表現したかった。でも、力で押し切るというよりは底知れない余裕がポイントでした。吸収剤みたいな奥行を持っている人は、何か計り知れなく、一番怖い気がしたので」

――今回は陰陽師と言うことで、呪術も駆使する役どころですが、いろいろ研究されているのでしょうか。

「最近は分身ぐらいはできるようになりました。金縛りも……シュッシュッ(と、やおら卍字を切る)。これで僕のこと忘れられなくなりますよ(大笑)。いやいや、僕は自称・活字中毒の読書好きですから、資料も集めてたくさん読んでます。今回の役には安倍泰親というモデルがいて、この人は占いで普通の陰陽師が10のうち7つ当てれば神と呼ばれるところを、8割以上当てていたほどの人だった、等々。発する台詞がうわべだけの薄っぺらいものにならないためにも、いろいろな情報を吸収し、想像力を働かせるのは助けになります。でも、知識や情報を説明するなんてことも避けたい。情報は一度心身を通してみて、最終的にはそぎ落とし手放す。そんなひと手間が不思議と、言葉に活き活きとしたチカラを与えてくれる気がします。

それから心がけているのは、レシーブ。会話は言葉のラリーですよね。自分のイメージや答えに執着し過ぎると、レシーブじゃなくサーブを打ちたくなる。その方が楽だし、破綻も少ないですから。でも、相手に集中してレシーブを打ち返していると、自己完結せず新鮮にいられるし、自分の想像力とは違う世界も生まれてきます。そんなやり取りや駆け引きが面白くてたまらないんです。

今回は出演者に女性が一人もいないので、稽古場で恥をかくには最高の環境です(笑)。大いに恥をかくのが稽古場の醍醐味。今回は女性キャストゼロですから、余計な色気も出さず(笑)安心して恥がかけます。それに男同士だからこそ、出来る話もいっぱいあるかと思うと、楽しみですね」

*次ページでは今さんの“役者修業の日々”から“夢”まで、たっぷりお話しいただきました!