鎌倉らしい景観「切通し」とは?

南を海、北と東西の三方を山に囲まれた"天然の要塞"ともいわれる鎌倉。源頼朝が鎌倉に幕府を開いたのは、鎌倉が「守るに易く、攻めるに難い」地形だったのが理由のひとつとされます。
 
海と山に囲まれた鎌倉の街。衣張山(きぬばりやま)山頂より撮影

海と山に囲まれた鎌倉の街。衣張山(きぬばりやま)山頂より撮影


しかし、その後、鎌倉が都市として発展するにつれて、人や物の往来が増えると、山を越えなければ鎌倉に入れないのが、とても不便になりました。そこで、鎌倉時代の中頃に、山の尾根の一部を切り開き、道路を整備しました。これが「切通し(きりどおし)」です。

鎌倉には代表的な切通しが7ヶ所あり、「鎌倉七口」または「鎌倉七切通し」と呼ばれています。
 
迫力ある朝比奈切通しの道

迫力ある朝比奈切通しの道


「鎌倉七口」のうち、昔の街道の面影が比較的よく残っているのが、鎌倉大仏の裏手にある「大仏坂切通し」、三浦半島に通じる「名越(なごえ)切通し」、朝比奈(朝夷奈)峠を越えて横浜の六浦(横浜市金沢区)の港に通じる「朝比奈(朝夷奈)切通し」の道です。

今回は、「朝比奈切通し」を中心に整備された「朝比奈ハイキングコース(旧金沢街道)」を歩きます。

朝比奈ハイキングコースのルートは、こちらの地図を参考にしてください。
 
朝比奈ハイキングコースのルート案内 出典:鎌倉紀行

朝比奈ハイキングコースのルート案内 出典:鎌倉紀行


朝比奈ハイキングコース・観光名所イラストマップ
 

「十二所神社」バス停からスタート!

「朝比奈ハイキングコース」のスタートは、鎌倉市の東のはずれに位置する十二所(じゅうにそ)エリア。

鎌倉駅東口のバス5番乗り場から「鎌倉霊園正門前太刀洗」行き、または「金沢八景駅」行きバスに乗り、「十二所神社」バス停で下車します。

バス停を下りると、目の前に『鎌倉 峰本』朝比奈店というお店があります。本格的な懐石料理や蕎麦(そば)のほか、エビを使った珍しい「鎌倉丼」なども食べられるので、ぜひ、ランチに立ち寄ってみてください。
 
「鎌倉丼」は、昔、鎌倉の海の名産だったエビを使った丼

「鎌倉丼」は、昔、鎌倉の海の名産だったエビを使った丼


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『鎌倉 峰本』の前の信号を渡ると、細い脇道がありますが、この道が朝比奈峠を越えて横浜の六浦(横浜市金沢区)の港に通じる「金沢街道」の旧道。ちなみに、バス通りは「金沢街道」の新道になります。
 
信号(横断歩道)を渡った先から続く脇道が、朝比奈ハイキングコース(金沢街道旧道)の入口

信号(横断歩道)を渡った先から続く脇道が、朝比奈ハイキングコース(金沢街道旧道)の入口


鎌倉幕府は、この金沢街道の整備にとても力を入れました。なぜならば、鎌倉の海は遠浅で、大きな船が入ることができなかったため、中国(宋)からの船も入港し、国内外の物資が集まる「六浦の港」に通じる「金沢街道」は経済的にとても重要だったからです。

ちなみに、「金沢街道」を行き交う物資の中で、生活に欠かせないものとして重要視されたのが、塩でした。
 
光触寺境内の「塩嘗地蔵」

光触寺境内の「塩嘗地蔵」


「十二所神社」バス停の一つ手前の「十二所」バス停付近にある光触寺(こうそくじ)というお寺の境内にまつられているお地蔵さんは、「塩嘗(しおなめ)地蔵」と呼ばれています。

塩の産地でもあった六浦の塩売りが、朝比奈峠を越えて鎌倉に来ると塩をお供えし、仕事を終えて帰るときに立ち寄ってみると、ぜんぶ嘗(な)めてしまわれ無くなっていたという伝説が名前の由来になっています。
 

いよいよ朝比奈ハイキングコースへ!

まずは、住宅地の中を歩いて行きます。

道の脇を流れる「大刀洗川(たちあらいかわ)」の上流に向かって歩いて行くと、舗装道路から、やがて未舗装の砂利道へ。いよいよハイキングコーススタートという感じがして、ワクワクします。
 
「鎌倉五名水」の一つ「太刀洗水」

「鎌倉五名水」の一つ「太刀洗水」


更にしばらく行くと、うっかりすると見逃してしましますが、左側の岩肌の竹筒から水が流れ出ています。これが、「鎌倉五名水」のひとつ「大刀洗(たちあらい)水」。

頼朝への謀反(むほん)を企てたとされた、現在の千葉県の大豪族、上総介(かずさのすけ)広常を暗殺した梶原景時が、その血塗られた太刀を洗ったとされる伝説の水。その後、広常の罪は濡れ衣(ぬれぎぬ)だったことが分かりますが、後の祭りです。広常暗殺は、鎌倉時代初期の後味の悪い事件のひとつです。
 
「三郎の滝」

「三郎の滝」


「大刀洗水」のすぐ先に、「三郎の滝」という滝が流れ落ちています。

伝説では、「朝比奈切通し」は、鎌倉幕府の御家人・和田一族の朝比奈三郎義秀という大変な力持ちの武士が、一夜にして切り開いたとされます。この朝比奈三郎にちなんで、「三郎の滝」と名付けられました。

しかし、実際には、「朝比奈切通し」の開削工事は、当時の鎌倉幕府の執権・北条泰時が、自ら工事監督をし、乗馬に土石をのせて運ばせたという記録が残っています。それほど、鎌倉幕府にとっては、重要で大がかりな工事だったのですね。
 

朝比奈峠を目指して

「三郎の滝」のところで、道は二手に分かれます。朝比奈峠へは、滝に向かって左の道に進みます。
沢伝いの登り道

沢伝いの登り道


ここからの登り道は沢伝いの道で、特に雨が降った後は滑りやすいので、滑りにくいゴム底の靴など、山歩きをする最低限の準備が必要になります。

上の写真のように、この辺りは、本当に豊かな自然が残っています。鎌倉は、神社やお寺、オシャレなお店や海辺が人気ですが、ハイキングコースも、とっても魅力的です。

しばらく歩くと、峠の頂上に到着。山の岩肌が人工的に削られた「切通し」の景観をよくご覧ください!
朝比奈峠の大切通し

朝比奈峠の大切通し


岩肌をよく見ると、仏像が彫られているのが分かりますね。
 
旅人を見守る磨崖仏

旅人を見守る磨崖仏


このような岩肌に彫られたレリーフのような仏様のことを磨崖仏(まがいぶつ)といいます。長い年月の間、峠を行き来する旅人たちを見守り続けてきたのでしょう。
 

幕府の鬼門を守る熊野神社

峠を越え、坂道を下ると、右手に分かれ道がのびています。右の道を進むと、その先にまつられているのが熊野神社です。
 
鎌倉幕府の鬼門を守る、熊野神社

鎌倉幕府の鬼門を守る、熊野神社


幕府の鬼門の方角(北東)に位置するこの場所に、頼朝が、熊野三社明神を勧請(かんじょう)したのが始まり。訪れる人も少なく、とても静かな雰囲気の神社です。

分かれ道を熊野神社のほうへ進まず、まっすぐ行くと、両側に岩壁がそそり立つ見事な切通しの道が現れます。
 
朝比奈切通しの道

朝比奈切通しの道


切通しの道を抜けると、この先を高架で横切る「横浜横須賀道路」を走る車の音が聞こえ始め、別天地から現実世界に引き戻されたような感覚がします。道端には、道祖神がまつられています。
 
「横浜横須賀道路」の高架下付近には道祖神がまつられ、道行く旅人たちを見守っている

「横浜横須賀道路」の高架下付近には道祖神がまつられ、道行く旅人たちを見守っている


もう少し歩くと、バス通りに合流。「朝比奈」バス停があるので、ここからバスで鎌倉駅に戻ることも可能です。

バス停付近の路肩には、梶原景時に暗殺された、上総介広常の墓ともいわれる石塔が建っています。
 

道路脇に巨大な仏様が!

なお、「朝比奈」バス停から一停留所分歩くと、「大道中学校前」バス停の付近に、高さ約4メートルの大きな磨崖仏が鎮座しています。
 
「鼻欠地蔵」と呼ばれる大きな磨崖仏

「鼻欠地蔵」と呼ばれる大きな磨崖仏


風化して鼻が欠けているため「鼻欠地蔵」と呼ばれるこのお地蔵様は、かつて、この場所が相模国と武蔵国の国境であったため、「界地蔵(さかいじぞう)」とも呼ばれたそうです。
 

もう少し、足をのばして称名寺へ

朝比奈ハイキングコースを歩いた仕上げに、ぜひとも立ち寄って欲しいのが、称名寺という浄土庭園が美しいお寺。バスで「金沢八景」駅へ移動し、京浜急行電鉄で一駅先の「金沢文庫」駅から徒歩15分ほどの場所にあります。
 
「称名寺」の浄土庭園

「称名寺」の浄土庭園


称名寺の浄土庭園は、昭和62年に復元されたものですが、池にかけられた朱色の反橋・平橋など、まさにこの世に現出した極楽浄土のようです。

ちなみに、京浜急行の駅名にもなっている「金沢八景」とは、中国の「瀟湘八景(しょうしょうはっけい)」になぞらえて選ばれた、このあたりの8つの景勝地のこと。

称名寺の鐘が夕暮れの空に鳴り響く様子「称名晩鐘(しょうみょうばんしょう)」は、金沢八景のひとつに数えられています。今風にいえば、”音風景”といったところでしょうか。

<DATA>
■称名寺
住所:横浜市金沢区金沢町212-1
TEL:045-701-9573
拝観時間:8:30~16:30
拝観料:無料
アクセス:京浜急行「金沢文庫」駅徒歩15分
地図 → Googleマップ
毎週土・日曜の10:00~15:00には、「横濱金澤シティガイド協会」による無料庭園ガイドを実施しています(予約不要、雨天中止)。平日は有料予約制。
 

鎌倉には他にも魅力的なハイキングコースが!

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