血液で感染拡大する病原体
血液で感染する病気があります
白血球に感染する代表的な病原体は、ヒトT細胞性白血病ウイルス(Human T Leukemia virus tyoe I:HTLV-I)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency virus:HIV HIV-1とHIV-2)、EBウイルス(Epstain-Barr virus)、サイトメガロウイルスがあります。これらは免疫細胞に感染するために、免疫不全や血液のがんの発生に関わる可能性のあるウイルスです。ただし、EBウイルスとサイトメガロウイルスによる感染症は免疫不全でなければ、自然治癒します。赤血球に感染するのはマラリア原虫です。
血液を介して感染する病原体としては、肝炎ウイルスがA型肝炎(Hepatitis A virus:HAV)、B型肝炎(Hepatitis B virus:HBV)、C型肝炎(Hepatitis C virus:HCV)、D型肝炎(Hepatitis D virus:HDV)、G型肝炎(Hepatitis G virus:HGV)。ヒトヘルペスウイルス8型(Human Herpes virus:HHV-8)、伝染性紅斑(りんご病)の原因であるパルボウイルスB19、梅毒、胃腸炎や血管炎のような症状を起こすエルシニア菌、主にイヌの寄生虫であるバベシア症を起こすバベシア属原虫、アフリカの眠り病とも言われるシャーガス病を起こすトリパノソーマ・クルージなどが挙げられます。
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血液を介して感染すると考えられている病原体
ライム病を起こすスピロヘータという細菌の一種であるボレリア、主に馬の進行性の髄膜脳脊髄炎であるボルナ病を起こすボルナ病ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱、ラッサ熱、エボラ出血熱を起こす、それぞれの出血熱ウイルスが血液を介して感染する可能性があります。エボラ出血熱は時々流行が見られ、現在ワクチン・治療薬が開発されていますが、致死率の高い病気です。
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さらに、進行性の脳炎を起こす新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を起こすプリオンというタンパク質があります。狂牛病として知られている病気です。感染から発症までが長く、数年から数十年たってから発症し、発症すると治療方法がなく、徐々に脳炎が進行していきます。
これらの病気は血液を介して感染しますので、輸血する時に注意すべき感染症と言えます。
輸血と献血
特に肝炎ウイルス、AIDSの原因であるHIVは輸血医療の歴史上、様々な問題が起こってきました。そのため、献血に際して検査するとともに、検査方法の無い場合は渡航歴などを聴取しています。昔の売血制度の時には、輸血された患者の約半数が肝炎になっていました。1964年から献血制度が6年かけて行われ、1969年では肝炎の発症率が16.2%に低下しました。1986年に成分輸血と400ml輸血によって、さらに8.2%に低下しました。1989年にHBc抗体とC型肝炎に対する抗体を検査し始めると、肝炎発症率は2.1%に低下し、1992年に感度の良いC型肝炎に対する抗体検査によって、肝炎発症率は0.48%以下になりました。
とはいえ抗体検査だけでは、感染から抗体が血液中に出てくるまでの期間(ウインドウ期)に献血された血液には、病原体があっても発見できないために、病原体そのものの遺伝子を増幅して検査する核酸増幅検査(NAT ;nucleic acid amplification testing)が行われています。そのことで、血液による感染の危険性を減らしていますが、ゼロにすることは難しいです。
献血は、ボランティアから血液を提供します。したがって、献血する人の血液に感染症の原因病原体が含まれていると、輸血された人に感染を起こしてしまいます。
そのため、自分の感染症の保有状況を知っておくことと、献血を自分の感染症のチェックに使わないことが大切になります。