マンション相場・トレンド/マンション相場・買い時

2015年のマンションキーワードは、再生

近年、高度成長期に建てられた共同住宅の建替えが活発化しています。また、都心エリアの等価交換方式による建替え再生マンションも人気になっています。再生の動きには、促進する要素とともにブレーキがかかる要因も。マンション再生の今を紹介します。

岡本 郁雄

執筆者:岡本 郁雄

マンショントレンド情報ガイド

高度成長期に建てられたマンションが建替え時期に
団地再生や都市部のマンション建替えが活発化

高度成長期に建てられた公団団地の再生や都市部での共同住宅などの建て替えプロジェクトなどが、ここ最近目立つようになってきました。当サイトで紹介した、桜上水ガーデンズ(野村不動産 三井不動産レジデンシャル)やシティテラス草加松原(住友不動産)、オーベルグランディオ吉祥寺II(大成有楽不動産)なども団地の再生プロジェクトです。

戦後の住宅不足から住宅都市公団(現UR都市再生機構)中心に多くの賃貸住宅が建設されました。また高度成長期に入り、昭和40年代後半から分譲マンションの供給も急速に増え、以後マンションの供給が活発化します。国土交通省発表の平成25年度マンション総合調査によれば、平成25年末の全国の分譲マンションストック戸数は、600万戸を超えます。
平成25年度マンション総合調査undefined国土交通省

全国分譲マンションストック数(出典:平成25年度マンション総合調査 国土交通省)

古い賃貸住宅を壊して、マンション用地として払下げ建替える場合は、複雑な権利調整も無く、比較的開発がスムーズですが、上記の桜上水ガーデンズのように分譲住宅の建替えには、地権者の考えも様々で建て替えの検討がスタートしても開発がなかなか進まないケースが多いのが実情です。そういう意味で、建替えプロジェクトによる街区の再生は、ある種の希少性があると言えるでしょう。

こうした建替えプロジェクトには、いくつものメリットがあります。一つは、立地が良い場所が多いことです。マンション創世記は、沿線の駅前立地など利便性の高い場所にマンションが建てられました。まとまったマンション用地は、都市部の好立地では、そうそうありません。また、既成市街地であるため学校や公園、病院、スーパーなど街のインフラが整っているのも魅力です。建替えプロジェクトが人気があるのもこうした背景があります。

マンションの建替えには、大きく分けて等価交換方式と、建替え円滑化法(正式には、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」)による建替組合方式による建替えがあります。等価交換方式では、地権者の全員合意が必要になります。一方、建替え円滑化法の場合には、建て替え決議で区分所有法で定められた一定の割合の賛成が必要となります。建替え円滑化法は、昨年8月に改正され耐震不足のマンションに対し、マンション敷地売却制度の創設や容積率の緩和特例などが設けられました。今後利用の拡大が見込まれています。
「プラウドシティ阿佐ヶ谷」の現地

建替えプロジェクト「プラウドシティ阿佐ヶ谷」の現地

プラウドシティ阿佐ヶ谷 (野村不動産)は、東京メトロ丸の内線「南阿佐ヶ谷」駅から徒歩5分の南側に善福寺川緑地の広がる「阿佐ヶ谷住宅」の建替えプロジェクトで誕生する総戸数575戸の大規模マンションです。昭和33年にテラスハウス棟と中層団地で構成された総戸数350戸の大規模団地でした。区分所有法制定前ということもあり、土地の権利形態が整理されず複雑に入り組んでいたため、権利者全員の合意による等価交換方式で建て替えが進められています。
善福寺川緑地

「プラウドシティ阿佐ヶ谷」の現地近くの善福寺川緑地

現地を訪ねると、空の広がる広大な開発地に出会います。これだけの広さの場所が「南阿佐ヶ谷」駅徒歩5分にあることに驚きます。すぐ近くには、善福寺川緑地の心地よい自然が。こうした稀少性の高いロケーションが建替えでは得られる場合があるのです。

当サイトでも昨年紹介した、同潤会上野アパートの建替えプロジェクト「ザ・パークハウス 上野」なども好立地を評価され早期に完売しました。円滑化法を活用した第1号物件、アトラス諏訪山レジデンスなどマンション建替え事業では、突出した実績を誇る旭化成不動産レジデンスの供給物件も好立地のマンションが多く人気です。こうしたマンションの再生に関しては、実は追い風と向かい風の両方が吹いています。

マンション価格の上昇が建替えの追い風に!
建築費の上昇が事業収支を悪化させ向かい風に!

同潤会上野アパートの従前の姿

同潤会上野アパートの従前の姿

建替えの追い風となっているのが、都心エリアを中心としたマンション価格の上昇です。建替え事業は、地権者が承継する専有部を除く部分を売却することで一定の事業費をまかないます。分譲価格が上がれば、その分地権者も有利な条件でプロジェクトに参加でき場合によっては、持ち出しがなく新しい住戸を得ることも可能です。港区、中央区といった都心3区のみならず、台東区、荒川区といったエリアも相場観が上昇しており、想定される住戸売り上げは上昇しています。

一方、向かい風になっているのが建築費の上昇です。昨年急上昇した建築費は現在も高止まりしています。建築費の上昇は、事業コストをアップさせるのでその分採算性は悪化します。特に戸数規模が小さいマンションは、工事費の上昇の影響が大きくなっています。建築費との綱引きで、事業化のインセンティブ(魅力)が決まってきます。

短期間に完売した「トミヒサクロス」をはじめ、大きい街区を一体で再生する第1種市街地再開発事業による再開発は、街の機能が一体で整備されるため評価も高く人気です。建築費が今後落ち着けば、大小様々な建替えプロジェクトも増えてくるかもしれません。

何れにせよ、今後マンションの老朽化で建て替えニーズが増えるのは確実です。所有者にとっては、建て替えが必要なのにできない状況は避けたいところでしょう。その中で重要になってくるのは、管理組合内でのコミュニケーション。合意形成が必要なマンションの建替えには、管理組合での意見調整が不可欠です。立地や建物価値だけでなく、管理運営が円滑かどうかも築年数が古いマンションでは特に大切なことだと思います。



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