「jazz it up!マンガまるごとジャズ100年史」南武成(ナム・ ムソン)
jazz it up!
「この本がわかりやすくて、ジャズが好きになりました」ある日そう言って一人の女性が教えてくれたのがこのマンガでした。
ジャズの生い立ちから現在に至るまで、ミュージシャン側からのエピソードを中心に、丁寧にそしておもしろく一気に読ませてくれるおススメのマンガです。なによりもマンガで見せてくれるので、わかりやすいのが特徴です。
ミュージシャンのエピソードは、ドラマチックなものが多く、面白い内容にあふれていますが、それは決して明るい話ばかりではありません。お酒や麻薬、アメリカが抱える人種問題やミュージシャン同士の人間関係などキレイごとだけではすまされないシリアスな面も多くあります。それを、マンガという形態で見せることで、読む側の衝撃度を和らげ、その上ジャズの歴史をすぐに理解することができるすぐれた本になっています。
味のある絵で多くのミュージシャンとともに、多くの名盤も紹介されていますが、その中で、1980年代以降のジャズの多様化のところで紹介されていたのがコチラ!
パット・メセニー「オフランプ」より「ついておいで」
今でこそ、ここでのギターシンセサイザーによる演奏は、普通に聴こえますが、この作品が発表された1981年当時は、その独創的なギターシンセサイザーの音色に注目が集まり、果たしてこれはジャズなのかという議論すら巻き起こったものです。
演奏されている音楽が、明らかにジャズのフォーマットに則って行われていることが分かっていても、シンセサイザーの音色が、聴く者の印象を違ったものにしてしまうという、音楽の構成上における音色の比重の大きさを考えさせる演奏でもあります。
以前の記事でヴィブラフォン奏者のミルト・ジャクソンを「少女のような声をしたグラマー美人」と例えましたが、ここでのパット・メセニーによるギターシンセはあたかも未来都市をイメージさせます。
静かな出だしから音楽は始まります。パットはギターシンセ特有のふわっとした音の立ち上がりを楽しむかのようです。そこから音楽はだんだんと盛り上がり、音色を変えながらパットは、一心不乱に彼の音楽に入っていきます。ボサノヴァ風のバックのアレンジが次第に熱を帯び、それに呼応するかのようにパットのソロがどんどんと熱くなりどこまでもどこまでも続く…
冷たい音色を熱いジャズに変える名手パットの本領と言えます。
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